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【前編】会社を「わくわくな自走の場」にするには? 多様性のジレンマを認識する



会社って、人生の「必要悪」だよなあ

こう感じている人、多いのでは。人間関係、仕事量、歪なルール・制度などでストレスいっぱい。耐えるために仮面をかぶって我慢しながら出勤。自分らしく働くなんて無理。時として、心身を病むことも。「次の会社はいいとこかな」なんて期待して転職を繰り返したり。

人生の多くの時間を過ごす場なのに、しょうがないのですかね?

いいえ、これらはリーダーの問題です。フォロワーに全く問題がないとは言えませんが、リーダーシップはフォロワーシップに常に先んじるものです。リーダーシップなくしては何も解決しません。

社内に、熱意と自主性がむくむくと現れて、目指す方向へ一丸となって自走する。会社という場は、時に困難もあるけど、総じて楽しく充実し、自分らしくいられて、個性を発揮でき、成長できる。

そんな状態に近づける試みを考えてみたいのです。


会社が抱える「多様性のジレンマ」

「会社に多様性は必要だよ。でも、多様性ってウザイ、バラつくし」とは、ある社長さんの弁。本音でしょうけど、口にしちゃダメですね。多様性はありがたい、と捉えないと。

ただ、この発言、会社が自ずと抱えてしまう「多様性のジレンマ」を表してもいます。

組織内の「多様性」の大切さが謳われて久しいですが、そもそも、会社は多様でないとうまくいきません。ピッチャーだけで野球はできないのと同じ。

現代では特に、です。生活の質は向上し、モノはあふれて飽和状態、でも人口は減る。つまり、つくれば売れる時代ではなく、技術革新や価値観の多様化もめまぐるしい。そんな社会では、会社は、個性が活き活き輝く多様性に頼るしかない。多様性は革新性や創造性の源泉だもの。

でも、ここで、先の社長さんもぶつかった2つのジレンマが現れます。

1.「多様」とは、たくさんの「違い」。違いはストレスを生む。
例えば、リラックスして楽しみたい週末に、趣味も生活環境も価値観も違うひとと遊びには行かない。違いは心地良くないから。つまり、多様な職場とは、違いだらけで心地良くない場、ともいえます。社員だけでなく、社長やオーナーにとっても同じです。

リーダーや上司は、多様がストレスを生むことを理解して、知性・人格を磨いておく必要があります。でないと、部下の多様な意見(反論、異論、批判)やアイデアにイライラしたり、つい高圧的に指示命令したり。ヘンリー・フォード氏のように「頭はいらん。言うことだけ聞け!」となったり。

2.「多様」だからこそ「バラつく」。バラつきは自走を阻む。
知識、スキル、経験、性格、好み、強み、弱み、価値観、人生観、思考のクセ、習慣、家族、育った環境・時代、言語・宗教・文化などなど、ひとそれぞれ。だから、個性が生まれます。と同時に、判断や目指す方向にも、自ずと違いが生まれます。

社員が主体的に熱意をもって個性豊かに思考行動したとしても、向かっている先がバラバラでは、組織として機能しません。船頭多くして船山に上る、状態。自走ではなく暴走ですね。


同じ人でも、無意識に思考・行動・判断はバラつく

株価があがった、デートの約束ができた。そんな時のボクは、その逆の時のボクではない。仲間とのコミュニケーションの質や、意思決定、行動力に無意識に差がでる。人間誰しもそんなものです。

ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン氏らによる「NOISE 組織はなぜ判断を誤るのか?」(村井章子訳、早川書房)では、「気分、疲れ、天気、並び順などじつにさまざまな外的要因が、同じ人による同じケースの判断に望ましくないばらつきを引き起こす」として、次のような事例を挙げています。

  •  多くの裁判官は昼食後には昼食前より寛大な判断を下す傾向にある

  •  600万件を分析したところ被告人は誕生日に寛大な判決を受けやすい

  • 同じケースで2回所見を求められた同じ医師が違う診断をする

  • 同じ指紋分析官が同じ指紋を数週間後に見せられて違う結論を下す

  • 楽しい動画を見た後は、他人に暴力を働くことの嫌悪感が弱まる

  • 裁判官やスポーツの審判、ローン審査官などは、同じ傾向の判断が2回続いたら、3回目は反対の判断を下す  などなど

プロがプロとしての仕事をしていても、そんなもの。

とにかく「脳というのはそういうふうに働くということである。~。脳の機能にばらつきがある~」のだそう。


多様性のジレンマを乗り越えるには、まず認識・理解から

会社は、人間は、バラつくのがあたりまえ。集団にストレスはつきもの。
そう言えそうです。

残念ですか? でも、そう認識・理解しておくだけで、無駄にイライラしたり、高圧的・暴力的に振る舞ったりするのを避けられると思うのです。

大切なのは、「多様性のジレンマ」を認識・理解したうえで、どう付き合うか。リーダーの大事な仕事の一つですね。

【後編】は、わくわくな自走の場をつくるためのステップを考えてみます。

お読み頂きありがとうございます。
(v10_6)

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