崎川忍

小説とイラストとたまに日記を載せます。

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マガジン

  • 崎川忍の短編小説とか

    今までに書いた短編小説・詩などです

最近の記事

noteって呟けるんだ しかも画像載せられるじゃん テストに若い頃のつぐみ

    • 猫の剥製は二度死ぬ(詩・超短編集)

      ビヨンド猫の剥製は二度死ぬ 忍び足でやってくる君の幻想と 自ら命を絶つ動機を失った嵐の夜 定義してみせる、正しい君の姿を 君に含まれる大勢の意識が 僕の苦しみの原風景 同じだけ痛めつけて お互い様になれば 許し合えると思っていた あの時 殺した猫の躰は まだ君の胎の中でうごめいてる 定義してください、正しい僕を この世界に言葉がなければ 僕が唯一のシンゾウになれたのに 記号の形は変わり 意味がどれだけ変遷しても 君のオリジナルは感じることができる 僕は君の白目に棲む幽

      • 夢肉ソーセージ

         まず、法膣を寸断する必要があります。横、さしたる文句がなければ静薬を越しなさい。現実人にも痛覚はある。メスを入れる前に殻引き揺さぶるは非良道的動作だよ。  貴方は一つ、祖し過ちたことがある。忠告はイメ像に消えたので、故の方から迎えに来た。故の衣が見えますかね? 執刀の倣模かな。貴方には故の目が猛禽に様ることでしょう。何せ二フィートもあるこの切れ長が。それに五指の巾着はゴム製で。在から貴方が何を術されるか、はたしてあつらえるでしょうか?  現実人は謂う。夢は記憶の集合体だ

        • 【隠蔽】すら認められなかったいじめの記憶と、事実の生まれ方について考えていたこと

          長い間、記憶をテーマにした小説を書き続けてきた。二年前に書いた『この恋もママゴトですか?』では、虐待された記憶に苦しみ続ける主人公が、一人の男を自分の父親と重ね、自らのアイデンティティにもなっていた虐待の記憶を再現すると共に、その男へ記憶を捧げて破滅した。 記憶は全ての人が持つものだが、社会・コミュニティが決めた「事実」と異なる記憶を持つ弱者は、その記憶を手放せない限り苦しみ続ける。その人に声をあげる力があれば、事実は隠蔽されたのだと認められるかもしれない。しかし、一度決め

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        • 崎川忍の短編小説とか
          12本

        記事

          十九歳病

           その女は眠剤が描く幻覚のように胡乱げだった。──ふた月前の私なら、そう表現したかもしれない。晩秋の夜だというのに薄着で、変なキャラクターのトートバッグを手に下げている。私を見るなりにっかり笑って大袈裟に手を振る。街灯の下に立った時、その姿が昔より随分重たげに見えたのは気のせいだろうか。 「誕生日おめでとう。そら、飲むぞ」  女、千蛾はふざけて私より先に私の部屋へ駆け込もうとした。横顔が陶器みたいに白かった。部屋の灯りをつけてもそれは変わらなかった。 「なんでツイッター

          子どもごっこと痴情のゆくえ

          「淫乱」  美術室の扉の向こうから、その言葉だけがすっと頭に入り込んできた。軽やかで、嬉しげで、嗜虐性を含んだ響き。男の声なのに、少女のような甘みのある言い方。扉に嵌った正方形の窓は髪を下ろした小谷と、彼に向き合う後輩の姿をテレビみたく映し出している。  後輩は眠たげに瞼を伏せ、厚みのある唇を少し歪めた。やがて小谷の方を見つめ返すと、その顔は憂鬱な女のものになる。  ──夏は少年少女を大人にする。大人はそんな戯れ言を言う。ところで関係のないことだが、小学生の頃、私の住む地

          子どもごっこと痴情のゆくえ

          青空よ、武器を捨てその場に手をついて(詩・超短編集)

          春火 青空よ、武器を捨てその場に手をついて  人質にされた海原があなたを忘れられるように  古びたカード、この街の行く末をうらなって  全員が一等賞 慈悲はボードの遥か上にあるの  おじいさん、天国へ昇る前にぜひ教えて  この瞬間に細かな数字が割り当てられる意味を  わたしに隠しごとがあるとすれば  嬉しい報せでいっぱいのはず  世界は善くなっていくばかりだから  同じ顔をした兄弟たちに話しかける  フランス語で、中国語で、羊の言葉で  自分がこれである幸せを探索する日々

          青空よ、武器を捨てその場に手をついて(詩・超短編集)

          20390918

           ようこそ!  私はタビィ。あなたの探索を手助けする仮想空間上のパートナーです。私には現在、三〇七八のネットワークからあなたにとって適切な領域を選択するためのプロセスが登録されており、あなたに最大の安楽を捧げることが出来ます。また、私の提案はあなたが別の決定をすることで退けることも可能で、その場合はあなたの選択が新たなプロセスとして登録されます。  さて、早速あなたにお似合いの楽しい世界を探索してみましょう!  権限をお持ちですか? 私に管理のための重要な番号を教えてくださ

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          母に電話しました。母は仕方なく目覚めたばかりのしゃがれた二十九の声で眠たげに私に聞きました。どうしたのかと。その瞬間騒がしかったテレビの音も窓の外の喧騒も私を哀れんで急に静まり返り、私が手元の機械に指を入れる瞬間を耳をすまして待っているようなのでした。私は今まで白肌に愛慕を寄せてきました。あの桃色がかった絹のような純朴ななめらかな豊かな甘やかなとろけた肌に触れるだけで、身体は震え死が差し迫るかのような興奮を覚えました。母の体躯に張り巡らされているのはビロードの貴い生地でした。

          学級下克上会議

          ※生々しい表現を含みます。  六年一組の教室へ入り、いつも通り自分の机に学習道具を入れようとした小谷南々緒(こたにななお)は、教科書が何か柔らかいものに阻まれて押し戻される現象に怪訝する。机の中を覗き込む。伽藍堂であるはずの暗がりに、白いハンカチのようなものが放り込まれている。  取り出して確認すると、それは薄い包装紙に包まれており、真ん中をビニールのテープで留めている。中身を見ずとも、彼はそれが何かを知ってはいた。当然、手に触れたことなどなかったが……  名前が出てくるよ

          学級下克上会議

          架空のキャラが現実世界で拉致された話

           たまたま愛した存在が〇〇だっただけ。  そんな訳あるか自己正当化野郎共。たまたまで何かを愛せるような奴がいるか。素直に「顔が性格が振る舞いがその他の解釈が、自分にとって都合の良いものだったので愛しました」と言え。男も女も動物も人形でさえも、理由もなしに愛される存在ではない。  俺のミコトが拉致された。犯人は、世間だった。高速道路に入ると無駄に成長したビル群が薄い塵の向こうで背比べしているのが見える。二千と百二十を数えた辺りから、人々は緩やかに死を待つだけの生き物になった

          架空のキャラが現実世界で拉致された話

          健全中毒

           教育に刃を突きつけられている。  少なくとも私の記憶では、子供向けの教育ビデオにおいてマルとバツは用いられても、サンカクの出番は無かった。  赤信号、止まれ。青信号、渡れ。  黄色は大人が判断するもの。  私たちはいつまで赤と青の世界で生きていることが許されるべきだったのだろう。おかあさんと手を繋いで、右見て、左見て、もう一度右を見て。手を挙げて渡りましょう。それさえ守っていれば、もれなく私たちはいい子だった。できる子、できない子の差は信号を守れるか否かの差ではなかったか。

          健全中毒

          作文は得意だが嫌いという話

           作文の二文字を目にすると、様々な感情が頭を巡り、最終的に虚無を覚えます。私は少なくとも子供の頃までは、作文が大得意でした。いつでも容易に言葉が連なり、苦労したことなど一度もありませんでした。    一番古い作文の記憶には、小学二年生のとき、一行目にカギ括弧を入れる、つまり台詞から作文を始めなさい、と指定された宿題があります。  私は一行目に「おいしかった。」と書きました。続いて、夜の九時半に家族とイオンのフードコートで食事をとり、祖父母の家へ寄って帰るという内容を綴ったので

          作文は得意だが嫌いという話

          2011年 精通

          ※震災に関連した描写を少々含みます。  その日は僕が住んでいる地域も結構揺れた。上下にガタガタ揺れるのではなく、教室全体が巨大な船になったような、不気味な揺れ方だった。メダカの水槽がたぷ、たぷと左右に水を零す。 「こういう時どうするの!」  担任の声でクラスメイトが一人、二人と机の下に隠れ始める。目眩にも似た揺れはしばらく続く。机のフックに下がる給食袋が静止したのを見て、揺れているのは自分の方だと気がついた。  スピーカーから教師の落ち着いた、というよりは落ち着かせた声

          2011年 精通

          女ニートが死ぬまでの話

           紅子は小学校に上がるまで、いや、いい歳になっても度々「ベビ子ちゃん」と呼ばれてきた。両親にとって、高齢出産を経てようやく迎えた一人の愛娘は天使のように尊く、永遠に続く幸せの象徴でもあった。  足を前に出せばあんよが上手、服を着れば花のよう、笑えば世界一可愛い子。駄々をこねても、母は笑って「まだまだベビ子ちゃんねえ」と小さい身体を抱き上げる。好きなものはいくらでも与え、嫌いなものは遠ざけた。両親が作った紅子の世界は完璧だ。  紅子はとても浮いた子供だった。ひとりだけいつまで

          女ニートが死ぬまでの話