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脚本家と俳優と流域リサーチ【前編】

7月21-24日で、秋の文化祭「水記祭」に参加予定の私道かぴさん(脚本家)と沢栁優大さん(俳優)と僕らのルネッサンスから太郎、シエイナの4人で、愛知用水の流域へ作品制作のためのリサーチに出かけました。

1日目

お昼過ぎに木曽福島で私道さん、沢柳さんと合流後、愛知県知多郡南知多町へ。木曽の深い山から岐阜中津川や愛知県の都市部を抜け、知多半島へと一気に南下しました。
途中、愛知用水の調節池である佐布里池に寄って、愛知用水神社をはじめ池周辺を散策しました。神社には牧尾ダム建設や一連の用水事業で亡くなった犠牲者を弔うための水利観音の一体が奉納されていたり、事業の立役者だった久野庄太郎が懺悔心から自らの遺体を医学解剖することを決め「不老会」を創設したことについての碑が立てられています。

太郎が何度もお世話になっている南知多町の「ゲストハウスほどほど」にて、店主とおかみ、豊浜モータース社長の川口さん、南知多町出身でアーティストの森さん、たまたま宿泊中のライダーさんと共に持ち寄り晩御飯を囲みます。
木曽のお土産として中善酒造で購入した日本酒やワカサギの唐揚げと、川口さん持参の地元居酒屋の手羽先、森さんの実家である豊半のえびせんべいなどが、テーブル上に一堂に会することになりました。

川口さんの全国津々浦々弾丸訪問の武勇伝や森さんとの不思議なご縁、ライダーさんとの意外な共通点など、さまざまな話題で盛り上がりました。
熱い(暑い!)流域旅の幕開けです。

2日目

「ほどほど」からほど近い41周年を迎えたカフェ「つみ木」でモーニング。
今回の日程が、運よく豊浜モータースの年に一度の土曜日休業と重なっていることが昨晩判明し、川口さんに町内を案内していただけることになりました。

カフェ・つみ木の天井に貼られた大漁旗や鯛神輿の写真

まず、南知多の高台に位置し、日々整備が続けられ進化中だという桜公園に行きました。
展望台からは伊勢湾が一望できるほか、愛知用水通水後に行われた農地を造成するパイロット事業の痕跡であるキャベツ畑を見ることができます。
冬には御嶽山まで見えるとのことで驚きです。

南知多町の農業施策:
昭和36年10月、愛知用水通水。昭和44年度から農業構造改善事業に着手。
昭和50年度から県営ほ場整備事業を推進し、昭和58年度に124haのほ場が完成した。
昭和51年度からは山林、原野の遊休地を農地化するために国営農地開発事業に着手。平成6年度には385.6ha(美浜町を含む全体では412.8ha)の農地造成が完了。

(参考)全国町村会「町村の取組 愛知県南知多町/持続可能な農業を目指して」https://www.zck.or.jp/site/forum/25304.html


桜公園から眺める
アサギマダラの飛来の為に公園を整備する南知多町の町議会議員さん

それからキャベツ畑を横目に、再び海へ向かって車を走らせます。

パイロット事業により農地は増えたものの、土壌は保水力の低い砂質で作物が育ちにくいため、頻繁に牛糞をすき込んでいるようです。たしかに薄茶色の土の上に、黒っぽい牛糞が積み上がっているのが見えました。
しかし、すき込んでもすき込んでも土はどんどん雨で流出してしまうし、牛糞が不法投棄のケースもあるという話を聞いては、暑いなか日陰ひとつない開けた農地で仕事をする人を見て、もともと水が少ない地域での農業の厳しさを感じました。

海からは見えない、パイロット事業で開かれた農地

次に訪れた大正10年創業と長い歴史をもつ「徳吉醸造」では、またも突然の訪問でしたが、土曜日は不在のはずの社長がいるという奇跡を引き当てバックヤードを見学することができました。
卸先の要望に応え続けた結果、醤油や味噌の種類が増えていったという話や、醤油樽や味噌樽を作ることのできる職人がほぼ絶滅しているという話が印象的でした。
「昭和10年製作」と書かれた樽の耐用年数は約100年。今年で88年目です。



その後、南知多町で一際目立つ白い高層ビル「チッタナポリ」へ。
「CITTA」と書かれた看板から先は、異国情緒漂う空間が広がっていました。
赤い道路と白い建物、緑のヤシの木。斜面に階段状に展開するアパートもまるで外国のリゾート地といった感じでした。
白い建物の1階部分に下駄履き商店が立ち並んでいた頃、中央広場ではイベントが催されるなどかなりの賑わいがあったようですが、今はすっかりもぬけの殻。
常夏の風景に一抹の寂寥感…
Cittaはイタリア語で「町」の意味ですが、南知多町がナポリ町ではないことを考えれば、「CITTA」は「知っ多」ということになりましょうか。

ナポリを後にし、師崎地区では、川口さん一押し穴場である魚定食の「ことぶ喜」でランチを食べました。店内の水槽に泳ぐ魚が料理となって出てくるので、鮮度がレベル違いによかったです。
しかし、これらの魚を釣る漁師は、変動しない魚価に対して高騰していく燃料代や備品費などが釣り合わず稼ぐことが困難になりつつあり、深刻ななり手不足の現状があるといいます。それだけでなく、海中の水質改善によってかえって海洋生物の多様性が損なわれていたことも議論のテーマになっているようです。
考えるべき新たな問題の存在を知り、いつまでおいしい魚を食べることができるのだろうかと疑問に思わずにはいられませんでした。



文責:シエイナ
〈長野県地域発元気づくり支援金補助事業〉




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