みをつくし
*
震える頬に手を添へて
あなたの悲嘆を拭はむや
たとひこの手の届かざるとも
たとひ私の至らざるとも
あなたのあひに添ひたき思ひは
紛ふことなき誠故には
もしもこの身の頬濡れるなら
袖の内に匿ひたまはむや
見しやそれともわかぬ間に
雲に隠るる夜半の月とも
もしもその身の頬濡れるなら
八重やまぶきに包みては
私が悲嘆を遮らむ
あひ見ての後の心と比ぶるならば
昔の如何に物思わざるや
私の知り得ぬ哀しみに
私の触れ得ぬ悲しみに
たとひ言葉の添えられざるとも
たとひ声の届かざるとも
たとひヒドリに奪われやうとも
誰にも何も残さぬようにと
こころに跡を残さぬようにと
隠したまへるそのあひに
せめてせめてと応え得る
私であれよと願いやまずは
ひとへにこの巡り逢ひ
ひとへに袖絞る夜の静けさ
ひとへに見上げる夜半の月
うきよながめのあなたの元へ
短き葦の節の間もあわでこの世をすぐしてよ、とや
みをつくしても逢わむとぞ、たとひ思ふのみとも
されども届けと願ひ唄ふ
重ねた両の手の冷たくとも
震える頬に手を添へて
あなたの悲嘆を拭はむや
たとひこの手の届かざるとも
たとひ私の至らざるとも
あなたのあひに添ひたき思ひは
紛ふことなき誠故には
*
あなたには、私が知り得ない悲嘆も別れも、よく見えてしまうのでしょう。よく見えているのでしょう。それでもそのあなたの傍に、心を添えられたらいいのにと思います。
本当は私、匿いたい方なのだけど、あなたには馴染まないかもしれないと思って、どちらも書きました(古文の方が書きやすいかなって思ったけれどそんなこともないですね)。どちらでも、あなた(の心)に触れられるのなら、添えられるのなら、それでいいのです。
(こういう古文単語を必死に記憶から引っ張り出してくるとき、あなたの土俵に丸腰で迷い込んでしまったような気になります(実際そうです)、ちょっと古文風にしようと思ったらどうしようもなくなった感じです、結構切実に教科書がほしい…ネットはこういうとき大して役に立たないのです、僕は教科書にマーカーで線を引きながら付箋貼りまくって覚えるタイプなのです。
動詞の活用とか副詞とか全く覚えてないですね…海外の方が英会話初心者の拙い英文を解読しているようなものでしょう、ああ何故捨ててしまったのか……あ、ちなみに知っているかもしれませんが「…」がいつもひとつなのはわざとです、横書きだとひとつの方が収まりが良いかと。あと「みをつくし」は掛け言葉の中でもかなり好きなもののひとつです。「ながめ」「うき(よ)」「あひ(逢ひ等), 今回は(愛/哀)も」はどれも好きです、好きではあるんだぁーー!わかんないだけで。なんか読み直すたびに恥ずかしい気がしてきて饒舌になっているだけです、今日眠れるかな…)
*
乱雑さの値が大きくなっても大丈夫です。こうして同じような温度に、平衡に、落ち着くでしょう。
あなたの方が、きっと何処かで袖を濡らしているのですね。それを知りたいと思うけれど、避けたいと思うけれど、あなたが望まないなら顔を覗き込んだりしないし、そっとここにいます。でも一番には、あなたの不幸に添っていたいです。僕の体温を、もう少し信じていてほしいです。
私のそばで不幸になってよ、とは思わないけれど、私といることの不幸を諦めないでいてほしいとは思います。いつかあなたが、遠くの幸福を願おうと、そう決めてしまうまでは。
けれど、(その方が)私のためになる、という(もっともらしい)理由だけはつけないでください。私は、誰かのためになど言葉を紡げない。私はいつだって、自分のために生きているのです(コメントが見られないのは悲しいので、公開に戻しました)。できればあなたも、そうでいてほしいです。あなたのために選択し決断し、言葉を紡いでください。誰かのため、は行き違います、両片思いは二次元(作品の中)で充分です。いつか振り返って悔いが残らないように、どうにかして、あなた自身の理由に繋げてほしいです。私のためではなく、(私が)悲しんでいるのを見るのが(あなたにとって)苦しいからとか、ほら、ちゃんとあなたの理由に戻してください。
*
あなたの誠実さを、僕も出来るだけ守ります。けれど、その誠実さを中心に抱えるあなたと、借り受けただけの僕では、重みが違ってしまうかもしれません。だから、あなたはあなたの誠実さを守ってください。私は私の、言葉に対する誠実さを守ります。
あなたのためになど、言葉を紡がない。例えひとり蹲っていようと、誰かのためになど。
私は(ほとんど無意識的に)、私自身のためだけに言葉を紡ぎます。だからあなたは(何かを決めたときに)、いつか、私を身勝手だと言って離れていってもいいのです。それを理由にしてもいいのです(あなたの誠実さに背くものでないのであれば)。
*
この歌は、恋の歌ではないと、久しぶりに会った友を詠った歌だと、そう言われていますね。けれどどうしても私には、世の中の友よりも随分と温かい愛を感じてしまいます。
巡り合い、共に過ごせる今日を大切にしていきましょう。いくら語り合ったところで、雲に隠れる夜半の月のように、お互いを捉えても捉えても、それでもやはり、物足りなさを感じてしまうのだろうから。
(そうであるならば、僕は好きな作品をたくさんおすすめします。見返しても良いと思うことがあったら、いつかあなたが書店で、レンタルショップや配信サイトで、探すことができるように。あるいはふと、思い出すことがあるように。)
***
*
2022/10/26 7:52時点 (左端の数字が再生回数)
聴いてくださった皆様、いつもありがとうございます(0からの始まりやasphyxiaもあなたでしょうか、僕もたくさん聴いてるけれど。ここには載ってないけど『はなればなれの君へ』は少なくとも僕ではないですね…)。
***
この曲も、いつか歌いたいです。音域おかしいんじゃないかしら…
*
2022/10/26 10:56
冒頭からサビの手前まで、1オクターブ上で歌いました(少し、音の甘いところがあります…)。