「真紅の揶揄い」

部室で、あなたは、クッキーと書かれた得体のしれない紅茶を飲んでいる。
僕が、小説を読んでる姿を見て「君って、小説とか漫画の趣味本当にわかりやすいよね。好きな女の子の趣味が全開に出てるというか。」なんて言う。僕の気持ちを知りながら、からかって楽しんでいる。それを僕は知ってる。
「そういうあなただって、あの俳優が好きとかBLが好きとか大概性欲丸出しだよ。」って僕は思うけれど、馬鹿の振りをして
「あはは〜、僕モテないから〜。」なんて、又嘘を重ねる。
僕は、僕のことを好きになるような馬鹿な女が嫌い。

とても僕になんて振り向いてくれないあなたが僕は、好きだよ。
あなたは、僕があげた口紅を唇に塗る。
僕は、いい人じゃないから。此れは、僕があなたにかける呪いの形。
でも、ずるいあなたはキスの一つもくれない癖に飲みさしの紅茶をもう要らないから飲んでいいよなんて口紅の跡がくっきりと残ったカップを僕に差し出す。

それを前に、顔を赤くする僕を見て、あなたは君って馬鹿だね〜と悪戯っぽく微笑む。
僕は、知ってる。あなたは、あの先生のことが好きだということを。
金曜日の今日は、先生と会うんだろ。
僕があげた口紅を塗って、彼奴にキスをするんだ。
知ってる。知ってるんだよ。全部ね。知ってるのに。
僕は、馬鹿だよなあ。本当に。
あなたじゃなくて、僕のことを好きだと言ってくれる娘のことを好きになれたらどれだけ楽だろう。僕は、意地悪なあなたが好きなんだ。どうしようもなくね。

あなたは、いつも僕をからかう。馬鹿な僕のことを。でも、それは、僕以上に馬鹿で愚かなあなた自身のことを惨めに思いたくないから。先生があなたのことを認めることなんて永遠にない。だってねえ。僕が言うまでもないでしょう。それなのに、あなたは浮足だった様子を隠せない。機嫌が良いあなたは、饒舌になる。それが、あなたの癖だ。そこに幸せなんてないのに。でも、僕は愚かなあなたが本当に好きだよ。このまま溺れてしまえよ。その真紅の唇を醜く歪めてさ。僕だけのオフィーリアにしてあげる。愛しているよ僕だけの可愛いあなたを。

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