Capter.1 (前アカ掲載作再投稿)
ラヂオから新商品紹介のアナウンスが流れる。宇宙からの新商品。第二の地球。何度も聞いた売り込み文句と商品内容とはいえ、今までにこれほど画期的な商品があっただろうか。詐欺紛いの某ジャ◯ネットのタカダ社長もきっとビックリだ。腰を抜かしたまま立てなくなってしまうに違いない。ラヂオは新商品紹介のアナウンスからどこがサビかまるでわからないほとんどノイズといってしまっても過言ではないDream POP を流す。僕は、U-senもおしまいだなと思いながら、シーチキン味のポテトチップスをバリバリと貪りながらデイリーヤマザキはクソだがこの限定ポテチは神だなと思っている。ポテチは床にパラパラと溢れるし、僕のtシャツの襟元はダルダルに伸びきっているし、ラヂオを聴く僕は、とてつもないアホヅラをしていたはずだ。母親が今の僕を見たら、終わってんのはテメエの人生だろうと憤怒するに違いない。
目の前では、君がラヂオをバンバンと叩いている。僕は、コイツ馬鹿か?と頭の中で思い浮かべるけれど、決して口にはしない。うっかり口にしてしまった日には、間違いなくマッハの速さで飛び蹴りかボディブローが飛んできて僕の肋骨は粉々になってしまうことだろう。
「Dream POPが流れてるだけだから別に壊れてないよ。元から、そういう音楽。」
僕はそう言うとズズッと音を立てて、ストローを経由してペットボトルコーラを啜る。すると君は、僕をキッと親の仇のように僕を見据える。原田ちあきかよ。僕が何をしたっていうんだよ。
君は
「あっ、そう。サブカルクソ男。チンチンみたいな髪型しやがって!」
言葉は辛辣だがこれが僕たちの愛しい距離感であって、決して喧嘩をしている訳ではないのだ。時たま、本気の喧嘩になることもあるけれどそういう時は、僕が半殺しにされるという非常にユーモア溢れる結末に落ち着く。そう言って、少しの間ラヂオをじっと見つめ、興味を失ったのかラヂオをポンと傍に放ってしまう。オイ、もう少し丁寧に扱えよと思うけれど、もうどうだっていいとも思う。どうせ近いうちにこの地球もろともオサラバするんだし。ラヂオは電波を拾えなくなる。君は、ゴローンと寝転がって頭をあぐらを組んだ僕の脚の上にコロンと置く。おい、猫か?猫なのか?気まぐれすぎるだろう。
「定位置なり。私にもコーラよこせ。」
そう言って僕からコーラをふんだくり、ストローを投げ捨て中身を飲み干しヴェェxと豪快なゲップを吐く。そして、細巻きのBLACK TEA を取り出しプカプカと蒸し始める。
「ぷふあぁ〜〜〜ん。極楽極楽。」
おい、さっきのトキメキを返せ。どこが猫だ。ただのヤニカス女じゃねーか。
「ねぇ、明日地球が滅んじゃったらどうする?」
君は、上目遣いで僕を見つめてそんなことを嘯く、
「う〜ん。別にどうもしないかな。どうせ、第二の地球に移住するんだしね。」
窓の外を見ると、瞬く星の他には何もない宇宙空間が広がっている。既に僕たちの住む木造アパートは、簡易な宇宙船へと姿を変え果てし無く孤独な旅を始めたらしい。
「まぁ、そうだよねー。」
君は、そう言って所在なさげに本棚の方に目をやる。漫画と文学で埋められた本棚には、僕のサブカル気質と純文学気質が滲み出し、所々、君が好きな歌集や幻想文学が並んでいる。本棚を眺めるだけで。僕たちがどれだけの時間をともに過ごしてきたのかがよくわかる。僕は、君の後頭部から徐々に視線を前にやる。すると君の黒いタンクトップの間から振る舞いとは裏腹に、可愛らしいピンク色の乳首がのぞいている。そうだ。君は、タバコも吸わずに黙っていればただの可愛い美少女なのだ。頭の中で英角ポップ体の勃起という二文字を頭に思い浮かべながら僕は、徐に君の胸を揉む。君は胸を揉まれながら
「スケベだなぁ〜。したいの?」
なんてヘラヘラ笑いながら言って、僕は
「別に〜」
と返す。すると君は
「嘘つけ!」と言って、僕を押し倒して服を脱ぎ出す。倒された僕の目に映る小さなラックには、DREAM POPとはかけ離れたアジカンのCDが並んでいる。中村佑介が描く真っ白な肌の少女たちは、どこか君に似ているなと思う。他にもはっぴいえんどやフジファブリックのCDが並んでいる。このCDたちをあのラヂオで再生するのだ。そんなCDから流れる歌手たちが詠った日常は、もうすぐで僕たちの生活からは無くなる。窓の外では、地球が寂しそうにこっちを見ている。そんな気がした。けれど、僕たちは、古い地球を仲間にしようなんて露とも思わなかった。新しい地球の方がずっと魅力的だったから。僕の上で騎乗位で淫らに揺れる君の乳房を揉みながらそんなことを考えた。僕の髪型をチンチンみたいだとばかにした君は、僕のチンチンに夢中だった。
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