It had to be you
大学の時仲の良かった同級生女子は二人。一人は私と同類。適当でずぼら。
一人はA型!って感じの人。面白いけど細かくてまじめ。特に礼儀に厳しい。
私はとにかく山にはまり、というか部活にはまり年がら年中部室にいた。
部活と山が好き過ぎたのだ。
昼休みになったら部室でご飯を食べる。実習が始まっても「ま、いっか」と思ってそのまま部室にいる。そうすると同級生の友達二人が「スギちゃーーん、実習行くよ~」と誘いに来てくれるのだ。
私が卒業できたのは彼女たちのお陰と言ってもいいだろう。
国家試験の勉強は「集団でやること」が鉄則。満点を目指すテストではないので王道の問題を解ければいいのだ。それを一人で勉強してしまうと、どんどんあらぬ方向の穴を掘って突き進み、周りにそれを止める人がいない場合全く見当違いの知識を身に着けることになり「王道」問題を解けずに落ちるというのだ。
私はとにかく山山山、で山の人たちと過ごすことがほとんど
所属していたゼミも違う大学の教室に派遣してもらい通っていたためゼミでも孤立。というわけで国家試験の勉強はほとんどがゼミの仲間と集団で行うのが常なのに私にはその仲間がいなかったのだ。
いざ勉強しよう、となった時にそれでなくても授業はサボり気味、仲間もいなくて「国試に落ちそうな人ベスト3」があったらだんとつ1位だったと思う。
そんな私をA型の友人が救ってくれた。自分のゼミの中で居場所を作ってくれて私を仲間に入れてくれたのだ。そして国試どうにか受かった。
卒業できて国試に受かったのは彼女のお陰だ。
更に、彼女とはコイバナでもしょっちゅう盛り上がり、というか
振られたと言っては泣き、彼氏ができたと言えば報告しあった。
時には麻雀仲間で彼女の家におしかけ3日徹夜で麻雀をした。
負けた人が抜けて授業の代返をしに行く、というシステムで
麻雀をし続け終わった後彼女の部屋を出て空を見上げたら黄色だった・・・。人間、寝ないと空が黄色く見えるらしい。
そういう青春時代を共に過ごした彼女は一つ上の先輩と結婚した。
その一つ上の先輩が私の夫の親友で、私と夫は彼女たちの結婚式で知り合って結婚した。
だからお互い結婚後もお付き合いは続いた。
彼女の旦那さんは獣医の中でもある道に特化した専門家になり、あちこちで
名前を挙げるようになり「有名人」になった。
ちょっと声をかけづらい時期もあったけれど、時々会ってはご飯を食べたり
旅行したりした。
そんな彼女は友達だけど用件だけを言うようなメールとかが嫌いみたいで
きちんと「こんにちは。お元気ですか。みなさんによろしく」という言葉を添えないとご機嫌斜めになってしまう。
一方私とずぼらな友達はもちろん挨拶もそこそこに「久しぶり。山行かない?」「行く!」と話が簡単にすすむ。
A型の彼女のメールがしまいに敬語ばかりになって
「え、一体なんなの?」と思ってしまったのが一昨年。
どうしてそんなに距離をおきたがるかね?と思って面倒になり連絡もとらなくなってしまった。
夫と彼女の夫の交流は続いていたから近況は聞いていた。
そして彼女たちが今の仕事を辞め、北海道から出ていくという話を聞いた。
敬語尽くしのメールでちょっと心が離れてしまったし、
北海道から関東に行くということが私の中でなんら苦ではなくなってしまった昨今、彼女たちが道外に引っ越したとしても明日会おうと思えば不可能ではないし、特になんの感情もわかなった。
でも「本当にこのままでいいの?」とどこかで思い「あなたが行く前に3人で会おうよ」と声をかけたら「ありがとう。うちにおいで」と言ってくれた。敬語は混ざっていたけれどいつもの彼女だった。
声をかけてほんとによかった。
彼氏に振られて夜中の湖に向かって二人で石を投げた。
私は人前ではめったに泣かないけれど彼女の前ではなんだか
泣くことができた。犬が死にそうと言って泣いて電話をかけた時も「すぐにおいで」と言ってくれた。
そんな友達をメールごときで失わなくてよかった。
ただ、本当に会いに行こうと思えばすぐ会えると思っているし
9月にハワイ行こう!と言えばフットワークがめちゃ軽い
ずぼらな友達がすぐに「いいよ」と言ってくれるはず。
子育てひと段落。彼女たちは仕事をいったんやめて新しい世界へ。
これからもっと軽い気持ちで会えるはず。
映画「恋人たちの予感」のラスト。ハリーとサリーがやっとお互いの気持ちに気づきダンスするシーンで流れていたのがフランク・シナトラの
「It had to be you」
ハリーがその歌を聞きながら「なんだ、この歌は。古き友を忘れろって言うのか!」と言うとサリーがこう言う。
「古き友を忘れたことを思い出せって歌よ。とにかく古い友達の歌よ」
私に捧げます。
https://youtu.be/uEDjC7ZyNxw?si=JVHJDQ9ZXMtlkN5c
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