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おじさん好きの根底にいるおじちゃん

昔からおじさんが好きだった。
小学校の頃好きだったのは「クリント・イーストウッド」で
ファンレターを書いたり部屋にでっかいポスターを貼ったりしていた。
みんなが「ザ・ベストテン」を見てアイドルでキャーキャー言っていた時代だ。あまりにみんなの話についていけないからベストテンをみたら
ルビーの指輪を歌っている寺尾聰に夢中になってしまった。
おじさんトラップがベストテンにも潜んでいたとは笑
その当時の誕生日プレゼントはアバ、バーバラ・ストライザンド、そして
寺尾聰のレコードだった・・・。

最近読んでいる本でも「タバコを吸っていて痩せていて病気と陰をもっているおじさん」にときめいているし、ジョーカーのアーサーも同じようなおじさんだ。
今の私が求めるおじさんを好きになったとしたら、それはもう
「おじいさん」になってしまうから「もうおじさん好き」って言えない年齢になってしまったな、とそれが悲しい。

全般的に「おじさんならいい」わけではなくて
どうやら「ある人」を想定してそうな偏り具合だ。
デイモスの花嫁というマンガの本の「デイモス=悪魔」が基盤かと思ったけれど、どうもそれより前にモデルがいたようだ。
と他人事のように私の好きなおじさんを掘り下げてみた。

それはたぶん母の兄だと思う。なんとなくそうは思っていたけれど
全てがマッチする。
痩せていてタバコを吸っていてちょい悪ででも優しい。
そして「幸せではなさそう」。これは「不幸」とイコールではない。
もしかしたら彼なりに幸せなのかもしれないけれど、私から見ると「幸せには見えない」。幸せってなにさ?という定義を掘り下げることになってしまうので深追いはしません。

母の兄は自分の父親と折り合いが悪くて
お正月などで顔を合わせてお酒を飲んではもめて大暴れしていた。
この母方の家族が気性が荒い人たちばかりで
しかも酒癖も悪くて、お葬式で会えばどんちゃん騒ぎになり
お坊さんの木魚を一日中たたきまくって壊して、翌朝お坊さんに怒られているおじさんとかじいちゃんの姿を見た記憶もある。
自分が大人だったら「困った人たちだな」と思ったのだろうけど
子供の目から見てると「困ったけど楽しそう」とうつっていた。
母の兄(おじちゃん)は、目を細めていっつもタバコを吸っていた。
車の運転は荒くて峠をすごいスピードで運転して、急ブレーキをかけて
私や従兄妹をびびらせては笑ったりするような人だった。
自分の父親と折り合いが悪い分母親には甘やかされて
それが後々彼の人生を狂わせたと私の母親は思っていた。

幼少の頃からおじちゃんは贔屓されて、それを面白く思っていなかった母。
そうは言っても困れば泣きついてくる兄を放置もできず
みんなでおじちゃんに手を焼いてたらしい。
おじちゃんが結婚した相手も母親(私の祖母)に気に入ってもらえず
そこの折り合いも悪く、結局離婚。
離婚してからは1人で暮らしたり、時々彼女と暮らしたりして
日雇いの仕事をして生活をしていた。その内仕事ができないほど
体が弱り、私の母親とその頃同居していた祖母にお金の無心をする電話がかかってきていたらしい。
そこら辺は全て2人(母と祖母)が内密にやっていたことで、
というのは祖父に見つかると発狂するから、らしいのだが
私も詳しくは知らない。後で聞けば、相当な額を仕送りし車が欲しいと言えば与え病院代がないと言えば送り・・・を繰り返していたそうな。

母にしてみれば「なんでいつまでも困った兄貴の面倒を見なければいけないのさ」だし、祖母にしてみれば「そうは言ってもいつまでもかわいい息子」だし、母にしてみれば「親と同居して面倒みてるのは私なのに、私は感謝されずいつまでも兄貴が甘やかされてなんなのさ」だし祖母にしてみれば
「そうは言ってもいつまでもかわいい息子」の無限ループだったらしい。

そんなことを知らない私は、あのちょい悪で優しいおじちゃんが好きだった。貧乏で人のお金(妹と母)で生活しているのにかわいそうな猫を拾ってきてはえさをやる、という、うちの病院にもそういうおじさん来るけど
典型的な困ったおじさんだった。
いつの間にか亡くなってしまったらしいが、とにかく母親が嫌悪していたし、祖母は「葬式ぐらい行きたい」と言っていたらしいが体が不自由でそれも叶わず、おじちゃんがどのように亡くなってどこに埋葬されたのか果たしてお葬式があったのかとか、全くわからない。
「今だから聞くけどさ」みたいな雰囲気にもならない。

だから私の中では従兄妹と楽しく遊んだ時間とおじちゃんの姿は常に一緒にあり、いつもふざけて、でも怒ったら本当に怖くて、痩せてて
タバコの吸い方がめっちゃかっこいいおじちゃんのまま残っている。
そして晩年の、たぶんみっともなかった姿は知らないので「あのおじちゃん」を本や映画の中に求めてときめいているんだと思う。

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