ピアノ友
娘のピアノ同級生のRちゃんは、娘より一年前に教室に入会したそうで
うちが入った時にはすでに「すごく上手な子がいる」という状態だった。
入った時は幼稚園だったそうだがすぐにコンクールで入賞。
Rちゃんは弾くことも好きだが音楽を聴くことが大好き。
特にラヴェルとドビュッシーが好き。
こだわりの人なので自分が好きな音楽以外は演奏したくない、というか
演奏したとしてもいまいち気持ちが入らない、どうやって弾いたらよいかわからない・・・となるらしい。
その分自分がこだわった音楽、音は素晴らしい。
だから彼女が発表会で演奏した曲は、ほぼラヴェルとドビュッシー。
「そろそろフランスから出ようよ」と私は声をかけるけれど
「へへ・・」と笑ってごまかす。今年もドビュッシーの曲を選んでいた(笑)
Rちゃんのお母さんはRちゃんと同じぐらい音楽が大好き。
オタクなので「この人が好き!」と思ったらとことん聞きまくる。
彼女とはたいして話してないうちに「スギさんはガラスの仮面が好きに違いない」と見破られ、急にガラスの仮面ネタをふられ
もちろん詳細まで暗記していた私はなんでも答えられたため
「やっぱりね」ということになり、それ以来ガラスの仮面友達と言っても
過言ではない。
娘の2歳下のSちゃんは、まずSちゃんのお母さんと私の二台ピアノを発表会で演奏したことから始まった。
Sちゃんのお母さんと私が上手くやりそうか?とか
このお母さんは小さい頃から先生の愛弟子だったので実力のほどは知っていたと思うが、私に限っていえば海の物とも山の物ともわからないのに
先生はよくこのお母さんを私を組ませて、しかもひじょーーーーーに難しい曲をいきなり与えられたことに驚いた。
未だに「よくあの時先生この曲弾け」って言ったよね、と言う。
いきなり振られた大曲を当時はまじめに練習してどうにかこうにか
弾いた(断然難しいパートは彼女が弾いた)。が、今年は
二人で連弾で出ようと自分達から言ったにも関わらず全く練習しない状態のため先日「やばい。ほんとにやばい。ミヨー(数年前に弾いた曲。
ミヨーのスカラムーシュ1.3楽章を弾いた)より100倍やばい」と
先生に言われてやっと私たちにも火が付いたところだ・・・
彼女の適当さ、読書量、フットワークの軽さ、毒を吐く頻度、タイミング
などが合い、ピアノだけに限らないお付き合いになるときもある。
Sちゃんはうちの娘と似た所がある。なんも考えないでピアノを弾くところだ。私たちや先生に与えられた曲を「はーい」と言って弾き
音楽もたいして聴くこともなくこだわりもなくここまできた。
うちの娘は去年あたりからやっと「音にこだわる」「音色を作る」ことを
覚えたのでそれをやるようになったが、Sちゃんは数年前のうちの
娘とまだそっくりである。でも彼女は鍵盤に指を置いただけで「モーツアルト」みたいな音を鳴らす素晴らしい子なのだ。
こだわりのRちゃん、こだわらないSちゃんとこだわりだしたうちの娘
それぞれが組んで1台4手や2台4手や1台6手の曲を演奏して
もう数年経つ。
彼女らが練習している間、コンクール会場、時には全国大会にも行くことができたので親同士も相当な時間を共に過ごすことになった。
彼女たちは仲間でありライバルである。時には全国大会に二人だけで行かれてうちの娘だけ行けなかったとか、今年度はうちの子だけ行けたとか
そういう「競争」もある。
お互い表面上は「おめでとう、頑張ってね」とは言うけれど家に帰ってきたら「悔しい」とか「何が悪かったかな」とか「部屋に閉じこもる」とか
それなりにもやもやはあるらしい。親だってもちろんある。
なんでうちの子だけ行けないの?って私は何度も泣き言を言ったし
もう辞めたい(葛藤が面倒だから)とも思った。
それでも子供らはそれは見事にお互いを称え合い、お互いがお互いを発奮材料にして前を向く。
親はそんな子供らを放置してオモシロ話で涙を流して笑い合う。
この集まりが心の底から楽しい。
私の深堀性格は、時には人を引かせることがある。
「そんなに食いついてくると思わなかった」という顔をされることも
多々あったけれど、このピアノ友の場合は全くそれがない。
というかお互いが相手以上のオタクなのでネタを披露しあう。
音楽や映画、マンガ、本、子供の悪口色々だ。
私が学校のママ友と距離をおいてしまったのは
会って話す内容が夫の愚痴と子供のプチ自慢しかなかったからだ。
毎日会ってる夫と子供の話を、なんでいない所でもせんとならんの?といつも思っていた。人の子供の自慢話ほどつまらないものもない。
そんなの自分のばあちゃんにしてくれよ、とも思っていた。
そんなわけで今のピアノ友との話は、あっちに飛びこっちに飛び
いかにうちの娘がクズかということも披露できる
貴重な人々だ。
子供がピアノをやめてしまったらたぶんこのお付き合いもなくなるんだろうなと薄々は感じている。
残り数年。楽しい時間をもう少し過ごせそうだ。