「楽天超トクプログラム」はめっちゃ損!
先日、2年ぶりにiPhoneを買い替えた。楽天モバイルが提供する「楽天超トクプログラム」でiPhone15 Plusを購入したのだが、これって本当にお得なのか?今になって気になってきたので、「楽天超トクプログラム」が本当にお得なのか考えてみた。
■超トク vs. メルカリ
「超トク」ではまず本体代金を4年・48分割払いで購入する。そして、2年後に本体代金の半分を払い終えたタイミングで「機種そのままで残り2年の残債支払いを継続するか」「今まで使っていた機種を返却して、その時の新機種を新たに使い始めるか」を選ぶことができる。前者を選んだ場合は単純な4年払いローンになるので特に難しいところはない。問題は後者だ(「超トク」がアピールしているのも当然こっち)。後者を選択した場合は、今まで使っていた機種の残りの残債は免除され、新機種の本体代金を元にした契約が新たに始まる。それをもって「超トク」は「実質半額!」などと言っているがちょっと待ってほしい。落ち着いて考えてみよう。
2年後に新機種に切り替える時の条件を整理すると、何のことはない、以下のようになっていることに気づく。
(1)今まで使っていた機種を購入時の半額で売却し(下取り)、
(2)最新機種を定価で購入
となれば、キモとなるのは(1)の買取価格の条件が有利であるかどうかだ。現在の最新機種はiPhone15、これが2年後にどのくらいの価値になるのかそれを正確に予測することは難しいので、2年前の機種(iPhone13)の現在価格をおよその予想価格として利用する。
中古市場でのiPhoneの価格は中古スマホ取り扱い大手の「BackMarket」の販売価格をベースとする。いくつかの機種で調べてみたが、メルカリの実勢価格と「BackMarket」の販売価格はほぼ同じだった。「BackMarket」では本体のキズの少なさに応じてA,B,Cの3グレードに分けているが、バッテリー容量(ヘタリ具合)はグレードによらず80%以上なので、最低ランクのCランクの価格を用いた。Cランクでも「外装に、50cm以上離れたところから見える程度のキズや凹みがあります。スクリーン上には、電源を入れた際には見えない程度の軽いキズがある場合があります。」という程度なので全く問題ない。価格は全て(税込・送料込)で考える。
「超トク」でiPhone15を購入した場合、2年後の買取価格は購入価格(131,800円)の半額、65,900円。一方、2年後にメルカリで売却する場合の予想価格は55,730円(「BackMarket」のiPhone13の販売価格62,500円から、メルカリ手数料10%と宅急便コンパクトの送料520円を引く)。この時点では「超トク」が10,170円有利だが、「超トク」のiPhone15販売価格はなぜかApple公式よりも7000円も高く、さらに「超トク」の機種変更手続きは3300円の事務手数料がかかるのでこれを考慮すると両者の差額は130円。これくらいは誤差と考えれば価格面の条件は妥当で、特に良くもなければ悪くもないということになる。
ただし何らかの理由で、2年後に「超トク」で機種変する選択肢を取らなかった場合、Apple公式よりも7000円も高い価格で購入した差額は損失として確定する。この契約を何年続けるかは分からないがいつかは必ず終了するわけで、そのときに必ず損失が発生する。7000円の損失は大きい。
さらに、「超トク」の方は考慮すべきリスクがまだある。それは「回収した製品が受付不可品と査定された場合、製品をご返送させていただき、残債の全額をご請求させていただきます」「当社が回収する製品が当社指定の状態を満たさない場合、故障費用22,000円(不課税)お支払いが必要となる」という条項。前者の場合は前述のApple公式との差額7000円の損失が確定する。後者は「当社指定の状態」がどの程度を指すのか分からないのがリスクだ。外装にキズが入ったくらいで22,000円も請求されるとしたらかなり損をする。
■結論:「超トク」はめっちゃ損!
結論、「超トク」は「Appleで新品端末を購入して、機種変するときにはメルカリで譲渡する」やり方に比べてほとんどデメリットしかないので絶対にやめた方がいい。
「超トク」でメリットが得られる唯一のパターンは、2年後に必ず次の新機種に買い替えるというサイクルを永く繰り返す場合だ。契約終了時にはAppleの本来の定価よりも高く設定された差額(7000円)のために損失が発生するので、少なくとも3サイクル(6年)は繰り返して損失を薄めたいところだ。これができれば、金額面では大きな損も得もないが、機種変のたびにメルカリで売却する手間がいらないことだけはメリットだ。ただし、使用中に端末が故障したりキズが付いたりすると強制的に損するルートに入ってしまう。
プランの制約によって自由が制限されるのも鬱陶しい。買い替えたいタイミングは2年ごととは限らず、1年かもしれないし3年かもしれないのに、プランの制約によって延々と2年ごとの買い替えを強いられる。この自由を制限されている感じが思った以上に非常に鬱陶しいのだ。私は「超トク」の2期目(3年目)なのだが、もううんざりしている。購入したiPhone15 Plus自体は気に入っていて長く使おうと思っているので、2年を待たずに残債を決済して脱獄する予定だ。
■携帯通信キャリア4社の買い替えプログラム比較
正直言って、ここまでの考察だけでも金融業の卑しさに吐き気を催しているのだが、せっかくなのでもうちょっと頑張ってみる。携帯通信キャリア4社が提供している「超トク」同様の買い替えプログラムの比較だ。
・ドコモ:いつでもカエドキプログラム
・au:スマホトクするプログラム
・ソフトバンク:新トクするサポート
・楽天モバイル:楽天超トクプログラム
4社の提供するプログラムの基本的な仕組みはほぼ同じだが、楽天の「超トク」が2年後に「機種変更」つまりプログラムの継続を前提にしているのに対して、ドコモ・au・ソフトバンクのプログラムでは2年後に「返却」つまりプログラムを2年限りで終了することができる。この違いはとても大きく、楽天の「超トク」は非常に悪質だといえる。
次に料金面を比較してみた。本体価格にも大きな差があるが、2年で返却する場合は「2年後残価」をセットで考えなければ意味がないところに注意する。機種変更時の事務手数料など細かい計算を省いて、これら4社の2年間の実質使用料を計算してみた。
・ドコモ:(本体価格)149,490円 - (2年後残価)86,592円 = (2年間実質費用)62,898円
・au:(本体価格)163,860円 - (2年後残価)91,215円 = (2年間実質費用)72,645円
・ソフトバンク:(本体価格)127,440円 = (1〜24ヶ月目支払い)1834円×24 + (25〜48ヶ月目支払い)3476円×24 → (2年間実質費用)44,016円
・楽天モバイル:(本体価格)131,800円 - (2年後残価)65,900円 = (2年間実質費用)65,900円
ソフトバンクだけ圧倒的に安くなっているのは、(1〜24ヶ月目支払い)1834円に対して、(25〜48ヶ月目支払い)3476円と傾斜をつけているから。普通、傾斜をつけるにしても逆じゃないかと思うがともかく気前がいい。細かい規約を読んだら何か罠が潜んでいるかもしれないが、最新機種が(2年間実質費用)44,016円ならばこれはさすがにアリかもしれない。
■所感
自動車をリースする「カーリース」は金融業がウハウハ儲かる商品として悪名高いが、スマホの買い替えプログラムはそのミニ版だ。コンパクトカーの価格が200万円弱で、ハイエンドスマホの価格が20万円弱、価格でいえば10倍違うが、クルマよりもスマホは商品として圧倒的に扱いが楽だし、老人から子供まで1人1台くらい普及しているパイの大きさを考えれば、これがすごく儲かる商売であることが想像できる。
消費者としては条件を十分に見極めた上で本当にお得に利用できるなら利用すればいいが、規約を読み込んでいけば「走行距離がXXキロを超える場合」とか「本体のキズが一定以上の場合」とか、胴元が絶対に損しないための条項が事細かに定められていることが多い。
大抵の場合、金融屋の姑息な契約を読み込んで時間を浪費するだけに終わるのが関の山なので、「リースで〜」という話には「お断りです」と脊髄反射で答えるというふうにあらかじめ決めておくのもアリだと思った。
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