「自分の機嫌は自分で」の学習法
にんげん34年目も終盤に差し掛かっている。
この人生で最も勉強に励んだ時期は、学生時代ではなく、28歳から29歳にかけての約2年間だった。
学習に興味を持ったきっかけ
学習に興味を持ったきっかけからお話したい。
話は8年前に遡る。
随分昔のことを引っ張り出すので、先に結論を述べる。
資格試験に落ちたこと。
これが、本当の意味で学習に興味を持ったきっかけだった。
はじまりに意味はない
当時、従事していた仕事に資格は必須ではなかった。
ただ、推奨される資格が2つあった。
その1つが「危険物取扱者免状」である。
危険物取扱者免状とは、法律で定められた危険物を安全に取り扱うための知識・技能をもつことを照明する資格で、総務省管轄の国家資格である。
取り扱える危険物に応じて「甲種」「乙種」「丙種」に分類され、乙種、丙種は比較的取得しやすい。
職場で推奨されたのは「乙種」。
インターネットで試験の概要を調べたところ、ちょうどその日が第4類乙種試験申込みの期日であった。
試験日は1か月半先。
準備期間はゼロではない。
「なんとなく」
当資格に思い入れがあるわけではなく、要否で言えばいらないだろう資格だが、条件が揃ったことを理由に申込んだ。
結果は、合格。
落ちたのは当該試験ではないため、もうしばらくお付き合いいただきたい。
呆然
乙種危険物取扱者試験に合格後、手持ち無沙汰になった。
いま思えば、初めての国家資格取得にいい気分になっていた。
何か、他の資格を受けようと考えた。
そうして選んだのが、行政書士試験。
年に1度の実施日まであと3か月、というときに選んだため、軽い気持ちで申込み、ろくに準備もせぬまま当日を迎えた。
結果は、惨敗。
それまで受けた試験が比にならぬほど難解で、何を問われ、何を答えればいいのか見当もつかない。間違いなく、そこにあるのは日本語なのに、わからない。
問題数も多く、必死に問題を追ううちに試験終了時間を迎えた。最後の問いに辿り着けなかった試験は、後にも先にもこの時だけだ。
筆者は、思い知った。
自分は無知で、無学だ。
何の才もなく、自分が認識する以上に頭が悪い。
会場から駅まで道中、他の受験生たちに紛れて途方に暮れた。
今日、この会場にいた全ての受験生の中において、自分が最も劣っているのではないかとさえ思えた。
電車に乗り、ショッピングアプリを開く。
検索するのはもちろん、行政書士試験に関する書籍である。
長くなったが、これが筆者の学習に興味を持ったきっかけである。
学習法へのこだわり
ここで、学習法へのこだわりについて考える。
それまでの人生において、学習で苦労した経験のなかった筆者は、学習法に何のこだわりもなかった。
英単語を覚えるために暗記カードを作成したとか、市販のテキストを赤シートで隠しながら読んだ記憶は一切ない。
ただ、「書いて覚えるタイプ」と自認していた。
極端にいえば、「学習とはノートに書くこと」とさえ考えていた。
「書いて覚える」の有効性
「書く」動作はアウトプットにあたる。
視覚と運動の情報が同時に働くため、より記憶に定着しやすいそうだ(これを「マルチモーダル学習」と呼ぶらしい)。
ただし、書き写すだけでは理解が深まるどころか「作業」にとどまり、記憶に残らないこと、文字を書ける環境が必要なこと、時間がかかる点には注意しなければならない。
実際、膨大な量を記憶せねばならぬ場合は効率を優先する必要があり、「書く」より「読む」が優先となる。
試験に関して言えば、1つでも多くをこなす必要があり、「覚える」より「思い出す」動作を優先すべきだろう。
2度目の行政書士試験に落ちたとき、漠然と信じていた「書いて覚える信仰」に初めて終止符を打った。
自分に合う学習法とは
自分に合う学習法とは何か。
その答えを探すため、試験学習に関する文献を片っ端から開いた。
積極的再生
フェインマンテクニック
図解・マインドマップ
間隔を開けた復習
サマリ学習法
音読
イメージング学習法
概念地図
ライトニングラーニング(スピード学習)
上記は一例だが、存在する学習法の9割超には何らかの名前がついているのだと思わせるほど、様々な名前で紹介されていた。
方法だけを知ったところで、どれが自分に合うかはわからない。
なるべく食わず嫌いのないよう選定し、1つずつ試すことにした。
最も効果的だった学習法と反省点
このうち、最も筆者に合ったのは下記の2つだった。
SQ3R法(サーベイ・クエスチョン・リード・リサイ・レビュー)
ライトニングラーニング(スピード学習)
SQ3R法とは
SQ3R法は、下記のステップで構成される。
サーベイ(全体を見渡す)
クエスチョン(質問を立てる)
リード(しっかり読む)
リサイ(要点を自分の言葉で説明)
レビュー(全体を復習)
メリットは、内容の理解度が高まり、学習に集中しやすいこと。
デメリットは、一定の時間を要することと、適切な質問ができなければ効果が薄いことだろう。
ライトニングラーニング(スピード学習)とは
ライトニングラーニングとは、短時間で集中して学び、休憩を挟みつつ進める方法を指す。ポモドーロ・テクニックのように、25分学習・5分休憩のサイクルを反復すると継続しやすい。
メリットは、集中力が持続しやすく、時間の管理がしやすいこと。
デメリットは、頻繁にタイマーをかけるのが手間なことと、外的要因による中断で集中の再開が難しくなること。
改訂版「書いて覚える」学習法
はじめに疑念を抱いた「書いて覚える学習法」であるが、健在だ。
ただし、それまでと異なる点がいくつかある。
1つめは、綺麗に書くことを辞めたこと。
学生時代ならノートを提出し、他者に見せることもあったが、独学で資格試験突破を目指す筆者に、第三者目線を意識する必要は皆無。こんなに初歩的なことにさえ気づかぬほど視野が狭まっていたことは猛省すべき点だが、気づいたのでOKだろう。
2つめは、1度自分の脳内で噛み砕いてからノートに書き出す。
それまで、要点をそのまま書き写していたが、資格試験が前提の場合、非日常的で不自然な言い回しも多い。音読すれば必ずつまずくような表現もあるため、書き誤ることもある。
こうした部分を自分の言葉に変換し、突然音読を披露せねばならない場でも安心な粒度でノートに書く。
3つめは、ノートの使用をやめた。
A罫または方眼ノートを使用していた筆者だが、ページにより書きやすさに差がある。経験上、1度書いたノートを見返すことはなく、全てのページが埋まった時点で破棄してしまうことから、「勿体ない」と我慢して使用してきた。
辞めたのはまさに「勿体ない」という思考で、いくつか空白のページが出ても構わず、書いていて気持ちがいいページのみ使用することにした。
そうして辿り着いたのがルーズリーフで、「もっとはやくからルーズリーフにしておけばよかった」と思うものの、固定概念とはまどろっこしいものなのだ。
わたしの勉強法
筆者の勉強法をまとめると、「自分の機嫌は自分でとる学習法」であり、具体的には下記の3つだ。
SQ3R法(サーベイ・クエスチョン・リード・リサイ・レビュー)
ライトニングラーニング(スピード学習)
書いて覚える学習法
死ぬまで学び続ける
当ページでは、わたしの勉強法をご紹介した。
知らないことを知っていく過程は面白く、また、知らないことがあることを知ること自体が面白い。
できる限り健康に、いつか死ぬときまで学び続けたい。