見出し画像

手紙:2021年11月6日

 この先に一歩出てゆくために振り返る。

 こちらは、展覧会が終わって、アパシー状態に入ってぼーっとしております。一度空になってまた実感が蘇ってくるのかもしれません。担当の方より、丁寧なメールをいただきました。私と話すことで少し気持ちが軽くなったとのことでした。展覧会企画もじっくり進めてくれそうです。「青蓮丸、西へ」は、芸術の仲間を呼び込む作品です。

 他にも、駆け込み寺的なお話をされる方がいらっしゃいました。コロナ禍の中で、様々な人生の模様が画廊の中で発露されていたことも、今回の展覧会で現れた意味の一つです。風景として眺めることもできるけれども、観る人の人生の光景が現れる。重い意味を与えない絵を使って、隙間を空けた空間には、そのような効果があるのかもしれません。長い前置きになりました。

 「関西の80年代」展については、先週の土曜日に初めての打ち合わせをしました。全体のメンバーや会場での設置場所などは、まだまだこれからで、決定していません。主に、今まで担当の方と話してきた80年代のことを、ファイルを見ながら、作品の変遷について話しました。どのようにすれば、灘にあったあの美術館の空間で繰り広げられた80年代の熱気を、現在の巨大な美術館の中で見せることができるかという部分が、難しいなあとお互いに頭をひねりました。

 私の作品については、どの作品を出品するということではなく、84年以降、87年直前まで残っている残骸や壁を覆っていた油彩のカンヴァスを一度取り出して、チェックし、それと今も手に入るもので、特定の作品ではなく再構成するという案が出ています。多分、12月に入ってからになると思いますが、美術館の空きスペースに一度運んで、使えるものとそうでないものの、選別をします。大掛かりでなくても、当時の質感を出せれば良いかなと私自身は思っています。

 松井拝

©chie matsui



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?