「インスタレーションと意識」

多分、それは結実を期待しているのではない

それとは、私の為すことを指す
私は結晶を期待しているのだ
そのことは確かだ

流れる体液や樹液、地下水
表面には姿を表すことなく常に自由を支える水の状態
線状のダンス
地下と地上を結ぶ水路
水は常に光を含んでいる
ひっそりと、絶え間ない騒々しさの中でさえ
水路は空間を秩序だてていく
高揚する感情も、沈みゆく叙情も
水路によって混濁をまぬがれるのだ

意識は水路によって流れを与えられる
結晶化するために
よりいっそう光を包容するために

結実を求めるのなら、森へ行かない方がいい
森は地上のうちで最も地上的でありながら
最も地上を見失ってしまう場所である
それは地下が地上を支えるためだけにあるのではないことをみるから
しかし私の見ようとしている場所は
一度は空間を見失うことを通過せずには得られない
記憶の忘却とともに

絶対温度の地点で意識は結晶化する
絶対温度の地点を求めるために、私は森へ行ったのだ

©松井智惠　　1989年第８回平行芸術展「樹下のセンセーション」
　　　　　　　リーフレットに掲載