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幕間

みにくさと うつくしさの 間には 境界線はないが

そこに幕間がある

幕は薄い陽炎のベールのようでもあり、暖かい獣の毛布のようであり、重厚な織物の絨毛のようでもあり、柔らかな毛並みの絹のドレスのようであり、光を反射する鏡が無数に縫い付けられているかのよう。

素直に水平に、この世界とあの世界の間を仕切る重い膜。

舞台袖に座って見上げれば、閉じた空からパラレルに張られた
厚い膜がおり来る。演者は膜の合間をぬって明るみへ向かうかと思えば、
薄暗い膜の後ろに戻ってくる。幕は膜の役割を持っている。

重なる幕の間に立ってみる景色は 
暗闇の中に一度隠れ 
光の場へと
再び足をすすめる前の
ほんの束の間の秘密に満ちている

秘密をおろそかにすることは
こころの風景を失うことになる

作家のこころのうちを表すのは
黒い画面ではない

闇もまた耳を傾けよと囁く

黒は闇ではない

闇はそれほど忌み嫌われ避けられているのか

病むものは闇にあってもなお
 
色をもち生気に溢れる
光の場を確かめるために私は幕間に入る

明日舞台に出る前に


©︎松井智惠         2024年1月11日改訂 2022年11月24日筆    


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