スケッチ19092021
バレエリーナのお姉さんを描いてよと
五つと八つの小さないとこたち
畳の上に広告の裏紙を置いて
白のチュチュに
足はパッセのバレエリーナ
キラキラ
キラキラ
見たこともないけれど
頭かざりは
白い羽
ねえねえ
山で遊んでいるところ
大きなケーキ
男の子
お花
そんな絵やあんな絵
姪っ子たちは注文しきり
バレエリーナは、誰も見たことがないのに
姪っ子も私も嬉しくなり、いつも描いた。
禁じられた西洋が溢れ始めたころ。
ある日を境に、人前で絵を描くことをやめた
人物を描くこともやめた。
「絵ばっかり描いてるでしょ、うちの子に変な癖がつくとかなん」
おばさまは、そういった
悲しかった。
小さな姪っ子たちはすっかり大きくなり
遊ぶこともなくなった。
絵は好きで描き始めたのではない。
療養中は寝床の中ですることがなく
本や漫画の上にちり紙をのせてなぞっていた。
密かな苦楽を共にするようになり
今に至ったというわけだ。
初老になって、バレエ教室へ通って10年。
子供たちの身体は
バレエリーナのお姉さんの絵ではなかった。
永遠に体を彫刻し続けるのがバレエダンサー。
芸術体験とはなんなのだろうと、時々振り返る。
あ!
絵の仲間がしらっとした目で
こちらを見ている
のろのろ描いてもいいからさ
ちゃんとこっちを
見てくれっていってるだろう。
2021年9月20日 筆