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長沢芦雪の絵

 寒くなったり、暑くなったりの10月も終わりに近づいてきた。

 テート美術館展の内覧会にと、久しぶりに中之島美術館へ足を運ぶ。
7万7千点近くのコレクションを持つテート美術館、そこから「光」をテーマに120数点近くの作品が世界中を巡回。その最終地点の展示となる。

 内覧会に出席しているのは、広報や協賛企業の方々がほとんどなのだろう、地味な感じである。スーツ姿の年配の男性が多い。テートの展覧会担当責任者やブリティッシュカウンシルの方はスマートな女性。平日のお昼間になかなかフラフラと美術館へ出歩く人もいないであろう。

 う〜ん。

 小さめの作品は全て無反射ガラスが入っているので、作品の前には柵がない。こういう時は、絵具の乗り方などを近視眼的にガン見してしまう。職業上、仕方なし。ウィリアム・ターナーの惹かれる作品数点と、ジェームズ・タレルの最初期のインスタレーション、モホリ・ナジの写真と貴重な映像だけで充分堪能する。

 知人にばったり会って話を聞けば、どうやら下の階で開催中の長沢芦雪展は作品の入れ替えがあり、和歌山無量寺で描かれたあの「虎図襖」と「龍図襖」は11月5日までの展示作品というではないか。
 テート展を見た後の目で長沢芦雪を見ることができるかどうか、最初は不安だったが、期間限定ならば見ておかねばと、実はこっそり鞄に忍ばせてあった入場券を握り締めて展示室に入った。

 上の内覧会とは違って、絵を見にきている人たちが殆どだ。
ああ、見にきてよかった。なんだろう、動物好きというだけではないのだが、絵に引き込まれる。2番目の部屋に入ると、家で留守番をしているはずの虎猫がそこにいた。思わず「たっくん!」と作品に近づく私。龍も虎も子犬も人も素晴らしい筆致。
 一番驚くのは、風景をこんなに可愛く描ける絵描きを見たことがない。ターナーも風景画家なのだが、そういえば仰々しくないところが似ているかもしれない。最近風景画の中の小さな人物や生き物が気になる。禅寺で描いたものが多いせいか、余白と諧謔もほんわりと魅力的で、思わずニヤッと笑ってしまう。

 ほとんどの作品が11月5日までの前半と、11月7日からの後半で入れ替えられる。古い作品は長期間展示できないので仕方がないとはいえ、2回見に行きたくなる展覧会。

©️松井智惠             2023年10月25日 筆

注)どの作品が前半か後半かは、HP等でよく調べてくださいますよう。

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