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オオカミ村其の二十二

「瑠璃の告白」

 ここまで話して、胡蝶はふうっと息をつきました。真夜中になり、氷の息が部屋の中に入ると、北の村のおばあさんやおじいさんたちは、オオカミたちの中に潜り込んでいつの間にか眠ってしまいました。「おやおや、旅のオオカミたちのお父さんはラガルの弟だってことを話したのに、なんてこと、ラガルとるりの子供が三匹揃っているじゃない。でも、ボジは白オオカミじゃなくなって、真っ赤になってるわ。」と、不思議そうにボジを見つめました。オオカミたちも、誰も胡蝶の話を聞いていません。でも一人だけ、耳をすましているものが、いました。「綺麗な胡蝶さん、私も瑠璃というのよ。ナルミのお母さんと同じなまえだったんだわ」と、小さな少女が近づいてきました。

 「あら、これはこれは小さなお嬢ちゃん、こんばんは」と、胡蝶は話しかけました。「瑠璃というんだね。ふうん、いい名前をつけてくれたのは誰なのかい」。「胡蝶さんなら知っているでしょう。北の王国のお話を。王国の最後の姫がオオカミと結ばれて、生まれた子が私。育てのおじいさんは、村人たちには誤魔化しているけれども、元は王国にただ一人残ったお付きの者、マニよ」と、瑠璃は言いました。名前どうりの青い目を胡蝶さんは、黙って覗き込みました。「お前も、空中で青龍さまに助けてもらって、この村に降り立ったんだよ、瑠璃。おや、これは複雑なことにこんがらがってるじゃないか。ここでは二つの時間が流れているな。滅んだはずの王国の時間がまだ残っておる」。「私は、とうさまやかあさまに会えるの?」と、瑠璃は目を見開いて言いました。「いや、それは無理だ。滅んだものを手放さぬ紫玉がまだそこにいる。あいつは、危ない奴なんだ。それにしても、なんだっていつもオオカミに絡んでくるのか、それも調べるとするか」と呟きながら、胡蝶さんは銀の粉を瑠璃に振りかけました。たちまち瑠璃は、オオカミ達に埋もれて深い寝息をたてました。。

 「さあ、こうなったからには、幻の王国へ通じる道を探さないと。瑠璃の父親のナルミは黙っているようだけれど」と胡蝶は、銀の鱗をたもとから出すと小屋を出て、北の村の奥へ向かっていきました。吹雪の夜でも、銀の鱗は胡蝶さんの周囲を明るく照らしています。風も雪も銀の光の中には入ってこれませんでした。胡蝶さんはきゃしゃな裸足に、銀の鱗でできた靴を履いてふわっと浮き上がりました。

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