見出し画像

現代の病

どうやら認めざるをえない瞞着が
海の一塊にはりついている
波打つほどに蔦は絡まるので
はばたくのを一度やめなくてはならない
黒い光がなにものもうつしだせずに
錆びの島をぐるぐる回っている

苔むした貝殻が都市をものがたる
そこかしこでぎょろぎょろしている瞼が
雲みたいにちりぢりになって 蒼白く
無関係を決め込んだ日の泡立ち

血みどろと養殖しかない海辺の
どの灯台を愛しうるだろう
枯れ木の歌は悲しみとは無縁のもの
係る死が掲げられた網の無情には
鏡の中に置かれた笑いが入り用なのだ

どうやら認めざるをえない緩衝が
立派な城壁を建設している
知らない街から撃ち出された銃弾が
我々の穴を埋めていく
幾千幾万の肉めいたものの断面を知って
ああーーネオンの汁が灰白質をみたしていく

死への情熱ーー吹きこぼれる潮ーー
そのひと匙分の情欲を
瓶から掬いとるときそれでもなお
二本の足で立つことができなければならない
時のふちはガラスでできている 故に
深刻さがであうのは自己ではない
なまの布地がわななく

鉱物のようなむきだしの心が
互いにぶつかってなくなるためには
かたさとやわらかさの背骨が
ゆっくりと伸びていく肋骨が
なくなりつつある尾ビレが足りない
かかれていない文字が浮かび上がったので
詩情がわからない

盲の複眼は星々が消えゆくところを映した
雨粒が独りごちる暗幕の奥で
溶ける 永遠の繋がりをもつ
否 切断せよ
否 接続せよ
否 切断せよ
否 接続せよ
トロトロの膿が砂漠に滴って蒸発する
黒い光が直撃した
太陽だった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?