捲く濾過
そちらに花は咲いていたか?
あたらしい犠牲が街に訪れたあと
殆どの民はよろこんで器官を失っていった
とけばとくほど固まってゆく
コンクリートの白熱
寝具に死の片鱗をみいだしたものから
番いの門をくぐった
夜の屑がふるみちばたの
光を帯びてしまった影に
聖域を見いだしてはならない
くるし紛れの血栓が
雄弁にきのうの峠をかたるならば
気圧の谷に精液を流しこみ
太陽を解体せよ
おれが果物を掴み取るとき
言葉に用はない
嘶きのあいだに意識を濁し
大地に春を売った
かつて誕生したものたちは層をなし
ひだまりの渦中
眉間に皺をつくって黙りこくっている
だが
安全な祈りにどんな価値があるのか
黒を冒涜する
恋人たちはかたい文体を嫌悪し
唇の奥をすっぱさで満たした
あたらしい犠牲が街に訪れたあと
森は遺骸をおとなしく抱きしめ
きみは真理を手際よく脱臼させる
熱りたつ具体
水源は感光する
子午線を踏まえた先の
さみしい献花
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