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31_「わたしニーファイは、人が学んだ方法で材木を細工することもなく、船も人の方法で造らなかった。わたしは、主がわたしに見せてくださった方法で船を造った。それで、それは人の方法とは違っていた。わたしニーファイは度々山の中へ行き、度々主に祈った。それで、主はわたしに大いなることを示してくださった。」(1ニーファ18:2-3)

リーハイの一行は、8年間の荒れ野の旅の後,果物と野蜜が豊にあるバウンティフルという海辺の地にたどり着きました。そこでニーファイは、「立って山に行きなさい」と主から指示を受けて、山で祈ります。その時に主から、家族が示された約束の地に行けるように「一隻の船を造りなさい」と命じられます。
この時、ニーファイはどのように感じたのだろうかといつも思います。
 
デビッド・A・ベドナー長老は次のように語っておられます。

「ニーファイは水夫ではありませんでした。育った土地は地中海沿岸ではなく、内陸の都市エルサレムでした。船を造るのに必要な道具や技能について、知識も経験もあまりなかったと思われます。以前に外洋を航海する船を見たこともなかったかもしれません。つまり、前に行ったこともない場所へ行くために、前に造ったことのないものを造るよう命じられ、指示されたのです。」

(David A. Bednar, “Learning to Love Learning,” Ensign, Feb. 2010, 28)

べドナー長老が言われるような状況に置かれた時、わたしだったら途方に暮れてしまって、「わたしにはできません」とか、「エッ、無理です!」と答えてしまうのではないかと思いました。でも、よく考えてみたら、わたしの周囲にも、この時のニーファイのように途方に暮れるのではなく、信仰を持って「船を造るための道具を造るには、どこへ行ってあらがねを見つけたらよろしいでしょうか。」と答えて、積極的に行動を起こしている人々がたくさんおられることに気がつきました。そうなんです、ニーファイのように、まったく知識や経験のないものに対して、神様の言われることに大きな信仰を示して行動を起こしている人々がおられることに気がつきました。教会歴史のさまざまな出来事について考える時に、ニーファイのような信仰を示した人たちばかりです。イギリスからアメリカに移住していった初期の教会員たち、苦難や災難に出会ってもニューヨーク州からユタ州に向かった開拓者、家族を後ろに置いて、宣教師の召しに応えた人たち、神殿を建てた人々はまさにそのような人々です。現代でいえば、若い宣教師の話すイエス様の福音を聞いて、これまでの生活を変え、ある意味この世的な楽しみを後にされている、毎年何十万人という改宗者の方々、数えればキリがありません。
 
なぜ、その人々は、みたことも聞いたこともないようなことに信仰を持って行動を起こすことができたのか・・・それは、それに至るまでにさまざまな小さな経験を通して信仰を育み、自らの証と呼ばれる確信を強めていった結果なのです。ニーファイも、エルサレムを出て荒れ野での8年間のさまざまな経験から、確かにこの旅は主が導かれている、預言者である父親の話すことは確かに主のみ言葉である、主の指示に従うときに、必ず祝福を得ることができるという証を強めていったのです。
 
わたしたちの人生を前向きに、ニーファイのような信仰を示し、豊かにしていくときのコツはここにあると思います。ただ単に、毎日の生活を過ごすのではなく、自分の生活の中に起こる小さな主の導きやみ手を感じ、個人で自らの証を強めていかない限り、ニーファイのような行動は取ることができないのです。
 
ディーター・F・ウークトドルフは次のように語っておられます。

「ニーファイはためらうことなく命令に従いましたが、兄たちは疑っていました。ニーファイはこう記しています。『兄たちは、わたしが船を造ろうとするのを見ると、わたしのことをつぶやいて言った。…弟は愚か者だ。弟は船が造れると思っているし、この大海を渡れると思っている。』(1ニーファイ17:17)けれども、ニーファイは落胆しませんでした。船を造ったことはありませんでしたが、『主が命じられることには、それを成し遂げられるように主によって道が備えられて』いるという強い証を持っていました(1ニーファイ3:7)。この力強い証と動機を胸に、ニーファイは船を完成させました。…努力と犠牲なしに良いものを手にすることはできません。証を得るために熱心に努力するならば、わたしたち自身と証を強めることができます。また、人々と分かち合うことで、証はさらに強まります。証はこの上なく貴重な財産です」

(ディーター・F・ウークトドルフ「個人の証が持つ力」『リアホナ』2006年11月号, p.31-32)

大きな信仰を育む、毎日の生活での主の導きや主の御手を感じる小さな経験を大切にしたいものです。


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