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「部分論」と「全体論」
トレーナー業界でよく耳にするこの言葉「部分論」と「全体論」
この2つの言葉について、いろいろな分野のトレーナーさん達が、様々な議論をなされていて、どの解釈も非常にうなずけるものがたくさんあります。
今回は、この「部分論」と「全体論」をどう解釈するか、そしてどうトレーナーとして現場に応用できるのか、という話をしたいと思います。
コンディショニングや治療において、体の問題に対して、課題と目的を明確にし細分化をして局所的にアプローチをしていく部分論、大きな枠組みや繋がりを理解し総合的にアプローチをする全体論は、どちらが良いという議論ではなく、プログラムを処方する対象や目的によってケースバイケースであることを大前提に話を進めていきます。
そもそも「部分論」、「全体論」ってどういう意味?
部分論、全体論という言葉だけでは、非常にわかりにくい表現かと思うので、例を挙げて説明します。
例えば、「SLRで股関節の屈曲可動域が90度にも満たないクライアントに対して可動域を90度以上にしたい。」という事例があるとします。
*SLRとは、仰向けに寝た状態から膝を伸ばしたまま片脚を上げるチェック
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部分論的アプローチ:
股関節の伸展、屈曲に直接的に関わる筋肉の一つであるハムストリングの硬さが屈曲の可動域制限を引き起こしていると判断し、ハムストリングスをストレッチしたり、マッサージで緩めたりといったアプローチの仕方は、部分論的アプローチの一例と言えます。
反対に
全体論的アプローチ:
「近位の安定性が遠位の可動性を生む」という人間の体の原理、原則を理解し、腹圧を高めたり、腹筋運動をする事により、
股関節そのものに直接アプローチせずとも屈曲の可動域の向上を図るといったアプローチは、全体論的アプローチの一例と言えます。
このように、部分論的アプローチと全体論的アプローチは、目的と対象によって使い分けることが非常に重要です。
しかーーーーーーし!
今回、お伝えしたい最大の要点は、こういった考え方には落とし穴が存在していて、上記のような例で部分論と全体論を捉えていると本当に大事なことを見失う可能性があるということです。
(それってどういうこと?)
というのも、、
人間の体は、そもそもトレーナー現場でよく語られる骨、関節、靭帯、腱、筋肉といった整形外科的な要素だけでは構成されていないということです。
人間の体は、大きく5つ要素で構成されています。
1. 整形外科的要素
2. 内科的要素
3. 循環器科的要素
4. 神経科的要素
5. 精神科的要素 (順不同)
これらの5つ要素を大きく理解した上で、部分論、全体論を捉えることができれば少しクライアントへのアプローチが変わるかもしれません。
突然ですが質問です!!
あなたはトレーナーとして、どれだけあなたの選手・クライアントのことを知っていますか?
選手・クライアントの生年月日、年齢、血液型、出身地、生い立ち、職業、家族構成、競技種目、ポジション、チームでの役割、その日の機嫌、調子・・・ あげていけばキリがありませんが、
クライアントのことを知っていれば知っているほど、目の前の問題に対して必要な情報を持つことができ、本質を捉えることができます。
例えば、先ほどの
SLRでの股関節の屈曲可動域が90度にも満たないクライアントに対して可動域を90度以上にしたい。という事例に戻ります。
このクライアントのことをどれだけ知っているか、どれだけの事前情報を持っているか、また知るためにどのような質問をするかということです。
もしこのクライアントがあなたに会う前に財布を落としていたとしたら、
精神的なショックから体に硬さが出るというケースは十分に考えられます。
心と体は密接につながっていて、心が体に及ばす影響は大きいですし、その逆も同じです。もし、このクライアントがあなたに会う前にネガティブな体験をしていて体に硬さが生じているのであればストレッチも腹筋もお門違いです。
他にも、もしこのクライアントが最近、風邪を引いていて、睡眠不足、食欲不足で栄養を十分に摂っていなかったとしたら、ストレッチも腹筋もこれまたお門違いです。
トレーナー活動の中では、こういった落とし穴は、日常的に存在します。
トレーナーとして日々、一生懸命に解剖学や運動学、トレーニング法の勉強をし、その知識や経験は十分で、自分では完璧と思うほどの準備をして現場に立っていたとしても、本質が見えていないと、結局は「井の中の蛙」ということになります。
ですので
トレーナーとして、「部分論」と「全体論」を正しく解釈するためには、
体が何によって構成されているのかを十分理解して、クライアントの事を十分知り、本質的な問題解決のためのアプローチをすることが大変重要だと思います。
Body Updation トレーナー 中田史弥
**P.S **
明日の指導から選手やクライアントと「スポーツ選手・クライアントとトレーナー」という立場同士の関係ではなく、人生レベルの「人と人」との付き合い方をすると、かける言葉も聞く質問も変わって、選手・クライアントもあなたの愛を感じてくれるかもしれません。
参考にしてみてください。
以上