手を振らずに走っても速い人の人の特徴
今では着物を着ている人でもめったに見かけなくなったのであるが、『映像の世紀』にある明治三十年代の京都の街頭で荷物を持っていなくてもほとんど手を振ることなく歩いていた人がいた。
現代の「歩く・走る」といえば、
足を高く上げて
前方に振り出す
地面を強く後ろへ蹴る
のであるが、実際にはこの「西洋歩き」をウォーキング以外でする人はいない。ひじから下をプラつかせているいる人は多いが。
ほとんどの人は車であろうが、買い物帰りの人が両手に荷物を下げていてもなぜか行きしなよりもスタスタ早く歩く。
■手を振らなくても理由【3つある】
その①:手が体側にある
その②:肩と腰で体幹をパックしている
その③:胸骨を引き上げている
その①:手が体側にある
手を体側に沿わせることで腕と荷物の重さで振り回されることがなくなる。
ところで、荷物で腕が振り回されると何が起きるのかというと、
脇がねじれる
ことである。
内臓のねじれにおける疲れのことはさておいて、脇が捻じれることで腰の負担になることはもちろん、なにより、
上半身と下半身の動きが分断されてしまう
のである。
なので、腕を動かないようにすることで体をねじらないようにする。
その②:肩と腰で体幹をパックしている
肩を下げて、体幹をねじらないことが可能になる。
多くの人は体をねじることで振った腕が推力になることで前に進んでいると思うので、一見動きづらいと思うのであるが、それは、自分をだましているだけであり、それは
腹をねじることで腕を前に出して後ろに倒れないようにしているだけ
である。
実際に足だけを前に出してかかとから地面につくと、腰を反らす。
後ろに倒れそうになった体を起こすために反対の腕を振り出す。
「歩く・走る」あいだこれを繰り返しているから疲れるのである。
さて、ではどうするのかというと、
股関節と鎖骨の動きを合わせる
のである。
簡単に紹介しておくと、
1.鎖骨を上げた脚と同時に落とす
2.反動で反対の鎖骨と脚が上がる
これを繰り返す。
その③:胸骨を引き上げている
胸の真ん中にある骨の一番下を1cm引き上げることで姿勢を直す方法である。
実は「その①」と「その②」は両方同時に「胸骨の引き上げ」でできる。
上記の方法で胸骨を引き上げると、
胸骨の引き上げ→前の筋肉のブレーキを外す
肩甲骨の引き下げ→背中に力が集まる
ので
→背中に力が集まった状態を維持できる
のである。
胸骨を引き上げ続けると、
腹や背中を丸めることなく体を前に倒すことができる
胸骨の一番下にあるみぞおちが膝より前に出つづけることで、腕を振ることも、脚を上げる必要がないだけではなく、
股関節を主体にして動くことが可能となる
のである。
■体幹のパックとの違い
胸骨を引き上げると、
肩を下げて体幹をはさむこととは違って、わき腹が動かなくなることが特徴である。
とはいえ、「肩を下げるのであればどちらも同じではないか」ともしや思うかもしれない。
しかし、胸骨を引き上げる方が手を振らなくても速く歩くことができる。
その理由は、
腹が曲がるなら猫背と同じだから
である。
腹を曲げるときはどんなときかというと、
ブレーキをかけて止まるとき
である。実際、腹を曲げると後ろによろける。
その状態で前に進もうとすると、脚を膝から下だけ出すことになるので、上記のとおり、体をねじりながら足で体を運ぶことになる。
さらに骨盤も同じく後ろに傾くので、踵に体重をかけたまま腰をつき出すと、「膝を閉じながらつま先を外に向ける」ことになる。
これはひざがぶれてバランスを崩すだけでなく、「ニーイントゥアウト(膝内から外へ)」という、スポーツでは膝を壊す一番危険な状態であり、そのねじれは着地するときに体重が膝にかかるとき以外でも、靭帯断裂などの大きなケガにもなる。
これは女子によくみられるつま先だけを内側に向けた状態でも同じである。腹を曲げることとは逆に腰を反ると、骨盤の動きと筋肉の作用にしたがってつま先が内に向く。つま先に体重がかかったまま腰を前に出すと、今度は「膝を開きながらつま先を閉じる」ことになる。ひざの間が大きく開き、逆に折ったように見えるのはそのためである。
どちらにも共通していることは
親趾のつけ根に体重がかかることで膝だけ内側に倒れる
ことである。これはひざの骨を割ったり、靭帯を切ったりする大ケガにつながる。
一方、胸骨を引き上げると、下記の理由から骨盤のかたむきがなくなることで、足は常に骨盤の真下にくるようになり、つま先の向きもひざとそろって正面に向く。
なので、「どのみち肩が下がるのであれば」胸骨を引き上げる方がいいのである。
立て膝になって自分で検証してみるとよろしい。
■手を振ることは四足動物の名残
「人は立つことを誓った動物である」
身体教育研究所の野口裕之氏はこう言う。
であるのだが、人間にはまだまだ四足動物であったときのことを懐かしんでいる。それは、
杖
スキーストック
ノルディックウォーキングのポール
などで現れる。理由は四足動物になれるからである。
とはいえ、チーターの俊足も、チンパンジーの腕力が無くても生きていけるようにしてきたのが今の人間であるのだが、どうしてノスタルジックがあるのだろうか。
その理由はものを持つことで背中がはたらくようになるからである。ざっくり解説すると、
→振り下げ:肩甲骨が上がる→腹のブレーキ→着地
→振り上げ:前に倒れ続ける→肩が下がる→蹴りだし
手をペダルを漕ぐときのように返して、繰り返す。
実際には、
脚と腰の動き
作用、反作用などの物理法則
が入るのでもう少し複雑になるが。
■糸巻で立つとこと杖の共通点【手の重さを使う】
「別にスキーはしない」という人でも同じ動作の仕組みを利用して日常生活を送っている。
それは、「立つ・座る」のときである。
糸巻き
普通、立ったり座ったりするときは膝を使う。
とはいえ、これは前ももの緊張を使うので、膝を痛める人も多い。
一方、そうでもない人もいて、その違いは
腕の重さを使うこと
である。
自分に向けて巻く:バック→座る
前に向けて巻く:アクセル→立つ
と膝に負担をかけずに足ったり座ったりできます。
これはスキーのストックの動きと同じである。
手を前に出す→下げる
の動きが前に向けて巻き出すことと同じなのである。
■ここからは
さて、ここで感じた矛盾点を解消するのであるが、例にもよって、
借りた画像の無断転載を防ぐ
ために有料にする。
ここから先は
¥ 2,000
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?