裁判官に会いたくなる!『裁判官失格』

傍聴に行けないと不平を言うよりも、すすんでお本を読みましょう。
てなわけで、昨日手に取った本はこちら。


プロローグの優しく知的な語りと、痒いところに手が届く目次ラインナップに引き込まれ、ドッグイヤーつけまくり、ライン引きまくり。気分は透明人間になって裁判官の日常を見守っているかのごとく。



とくに思い出されたのは、盛岡地裁刑事部の片岡理知裁判官こと片岡。

なぜかというと、この著者である高橋隆一さん(元裁判官、元公証人、現在弁護士)がパソコン、車の運転、登山、昆虫採集、スキー、陶芸など多趣味で、少なくとも鉄オタ・パソコンオタクであるはずの片岡と通じるものがあること。
検察や裁判官の慣習に流されず、自分なりの筋を通すという著者の仕事の仕方が、証人や被告人によっては、考えを深めてほしいと別期日を設けて再度話す機会を与え、審理を丁寧に進める片岡の姿に重なること。
合議体の右陪席の裏話が何箇所か出てくるのだが、片岡も盛岡地裁刑事部合議体では右陪席であること。

それら3点の共通項により、片岡の日常を垣間見、片岡から話を聞いているような、片ヲタよだれ本であったのだ(もちろん、片岡オタクでなくとも楽しめる!)。

片岡に会いたい!!!!!

かたおかぁ〜〜〜!!!



著者は2006年に退官されたので、現場の事情など変わっているかも知れず、本を書くことに大いにためらいがあったとあとがきに記している。
しかし、この本には、私が裁判官に聞いてみたかったことがたくさん。

民事の判決文は事前に準備しなきゃいけないけど、刑事の判決文にはそういう決まりがないので、メモ程度の紙を持って判決を言い渡すこともできる、だから言い渡し直前まで判決に悩むこともある、とか、合議体の「右陪席」「左陪席」は傍聴席じゃなく裁判長から見ての右左だとか、形式上細かいが気になるところから、著者のかつての同僚であった裁判官には、夫婦ともにパチンコ好きで月に10万円も注ぎ込む人や、酔ったまま出勤してくる人もいたとか、裁判官の人間らしさを感じられることまで幅広く網羅してある。
そして。裁判官だって法廷で死ぬほど笑いを堪えていることがあるという、かなり気になっていたことの答えも。
これからますます傍聴が楽しくなりそう。


裁判官は浮気と風俗通いはしないと断言しているのもすごい。
「そういうことが好きな人はそもそも裁判官にならないと思います。」
と言い切っている。


「そういうこと」とはどういうことなのだろう。パートナー以外とのゆきずりの性交渉なのか、それとも性交渉それ自体なのか。

これまで私は、裁判官はそれなりに床上手だろうと踏んでいた。
外で羽目を外すことは許されず、地元民の目につく街ブラなど絶対しないだろう。つまり裁判官は芸能人並みに世を忍び、赴任地の外、もしくは家の中でできることに喜びを見出している人が多いはずなのだ。
そして、生活の基本である人間の3大欲求、食欲性欲睡眠欲にまつわることは、「休暇もしっかり取れる」(『裁判官失格』「はじめに」より)インテリの頂点、裁判官はきっと極めているはず。
だから、私は「裁判官は浮気はしないけど、パートナーとのセックスはまあまあやり込んで楽しんでいる」と考える。


しかしこちらには、浮気をしたいと思わない男性は変態だという、我らがしみけん様のお言葉もある。


女性裁判官はともかくとして、男性裁判官は「浮気しない男」という変態プレイを楽しんでいるのだろうか。しみけんの意見から導かれるのは、著者の考えとは異なる「実行に移すかは別として、男性裁判官だって浮気したいという気持ちを持っている」という可能性。


もし本当にたったひとりのパートナーとの愛の関係に満足し、家庭円満なのであれば、裁判官の方々にはそうなる秘訣を教えてほしい。世界平和のために。
パートナーが身も心も満足しているという根拠があればなおいい。



話が少し逸れた。『裁判官失格』は昨年12月に出版されたので、ピエール瀧の裁判や岡口裁判官についてなど、新しい話題についての言及もある。
書いてないことで気になることといえば、夏休み明け、裁判官は真っ黒に日焼けしているが、芸能人と違い裁判官は夏休みにハワイに行くのかとか(正月休み明けは日焼けしてない)、異動ごとに住民票を移してその自治体の選挙に行くのかとか、職業を聞かれたら「裁判官」と言うのか「公務員」と言うのかとか、法服は自宅で洗濯しているのかとか、開廷前テレビ撮影が入って気合い入れた顔を作って2分間静止の間は何を考えているのかとか。
続編に期待するとしよう。


傍聴自粛の気は紛れるけれど、法廷に走っていって早く裁判官を見たい!!!とたまらなくなる本だった。
本書を著した高橋隆一さんに感謝。ありがとうございます。

やっぱり好きです裁判官。


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Karelina
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