私は、自分のことがずっと嫌いだった。
急に思い出したことがある。
看護学生の頃、保健所の地域看護実習。
実習指導者さんと実習以外の他愛もない話をしていた時、たぶん私の話をした時だった。
その実習指導者さんは男性だったか、女性だったかすら忘れてしまったけれど、私に向かってこう言われた。
「自分を大切にできない人は、他人の事なんか大切にできないよ。」
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看護師を目指しているのは、手に職をつけ自立して、一刻も早く親の元を離れたかったから。
看護師そのものに興味がなかった訳ではないけれど、私は親から逃げるために選んだ仕事。
「白衣の天使」と言うけれど、私自身はそうではないと思っていた。
私は「いつ消えてしまってもいい」というような感覚を小さいころから持っていた。
私は、私の事がずっと嫌いだった。
自分の事を大切に思えなかった。
とにかく10代の頃は、苦しくもがきながら毎日を過ごしていた。
そんな気持ちを他人に気づかれないよう虚勢を張り、まじめで熱心な看護学生を演じていた。
指導者の一言。
私の胸の内を見透かされてしまったようだった。
看護師失格。と言われたような気がした。
その日の実習の帰り道、1人で激しく泣いた。
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いつからか定かではないけれど、人と関わることも、看護師の仕事も好きになった。
私の人生の半分は看護師として過ごしてきた。
これからも。
今は「いつ消えてしまってもいい」とは思わない。
私は、私の事が少し好きになれた。
私は自分の事を大切にできるようになった分だけ、人の事も大切にできるようになっただろうか。
休日の午後。
隣のリビングのソファーでうたた寝する息子の姿を見ながら思った。
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