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他人の畑【駅前人工温泉 とぽす 仙台駅西口@宮城】

 僕は毎日最低2時間はTwitterを開いている。それが習慣になってしまっているのだ。目的に応じてアカウントを使い分けており、プライベートの友人との交流用もあれば、くだらないことを延々とつぶやくbotのようなアカウントも、そして趣味で繋がるアカウントもある。「@bocci_naoto」は、趣味の一つであるサウナ関係の情報交換のために、かなり遅くに始めたものだ。ただ、今ではこれが本アカウントになりつつあるのだが。
 アカウントを使い分けている人であればわかるかもしれないけれど、界隈やコミュニティによってタイムラインに流れてくるツイートの内容や雰囲気は大きく異なる。では「サウナ」というテーマを通じて繋がった人たちはどうなのかというと、統一感がほとんど無く、実にさまざまな趣味嗜好・価値観・世代の方々で溢れているのだ。僕と似た価値観の人もいれば、僕と真逆の思想を持っているような人も少なくない。職業だってばらばらだ。これが僕にとっては非常におもしろいのである。

 先日、あるサウナ施設がオープンする際に、その施設が9時間拘束(休憩1時間)のスタッフの募集を始めたのだが、交通費は支給されるとはいえ、その報酬は金銭ではなく「店舗のサウナを利用する権利」と「店舗オリジナルグッズ」だった。つまり、ボランティアスタッフだ。
 これに対して、一部のサウナ愛好家からは「やりがい搾取ではないか」「給料はもらえないのか」などといった批判的な反応があったが、僕は心の中で「なにが悪いのか」「直接関係ない人がなにを言っているのだろうか」と思っていた。
 実際、Twitterを見ていると、自主的にボランティアスタッフに応募をしている人は何人もおり、後日ボランティアスタッフとして運営に関わった方のツイートを見ると、とても満足げだった。

 しょせん、「自分は自分、他人は他人」だ。法に触れない限りは、需要と供給が合っていて、かつ当事者同士が満足しているのであればそれでいいはずなのに、どうして勝手に他人の畑を荒らそうとするのか、僕にはわからない。その畑はその持ち主のものであって、他の誰かのものではないのだ。
 たとえば、ある農家さんが独自の方法で大切に育てているニンジンがあって、それを喜んで1本300円で買ってくれる人がいるにも関わらず、どこの誰かもわからないベテラン農家が「これ使ったほうがええよ」と頼んでもいないのに畑に肥料をまいてきたり、ニンジンの購入者に対して「これ300円の価値もないから考え直したほうがいいで」などと話しかけたりしたらどうだろうか。そういう人のほうが、僕からすると迷惑な人間のように思えてくる。
 300円の価値がないと判断するのは購入者側で、そして価値がないと判断されたニンジンは結果的に売れなくなる。また、1本300円でニンジンを売りたい農家は、その値段で売れるように品質の改良やサービスの改善に努めるものだ。そうやって需要と供給が徐々に重なり合うのが自然の摂理であり、そのバランスが乱れたビジネスは誰かが口を出さなくとも淘汰されていくだけである。
 先のボランティアスタッフも、金銭的な報酬がないことが原因で誰からも応募が来なければ、施設側は待遇を良くせざるを得なくなるし、もしもボランティアスタッフの待遇や労働条件が悪いのであれば、そもそも誰も応募をしなかったはずである。ただ、実際には複数人から応募があり、そしてスタッフとして稼働した当事者たちも喜んでいるわけで、これこそが真実なのだ。

 ビジネスは難しい。商品やサービスを提供する側と提供される側とのマッチングによって成立するものだからだ。そう考えると、多額のコストがかかるサウナ施設の運営は、僕からすると非常にハードルが高く、自分で参入しようなどとは考えたこともない。全てのサウナ施設にリスペクトである。それは、2022年9月14日(水)に、出張の帰りに伺った「駅前人工温泉 とぽす 仙台駅西口」も例外ではなかった。

「ここか」

 以前、こっそり更新しているYouTubeのリスナーさんから教えてもらった場所にようやく来ることができた。仙台駅から歩いて5分ほどの場所に構える男性専用の宿泊施設で、日帰り入浴も受け付けているため、ちょうど仙台駅を通過する予定があった僕は立ち寄る以外の選択肢がなかったのだ。
 料金は2時間で1200円と良心的で、受付を済ませた僕は、3階に移動して脱衣所のロッカーに荷物を預け、浴場の中へと進んだ。

「コンパクトだけど、いい動線設計だなぁ」

(公式サイト: http://topos-hotel.jp/spa.html

 向かって正面にサウナ室。左側には水風呂と露天スペース、そして右側に洗い場と風呂、さらに寝湯が確認できた。さっそく身を清めた僕は、サウナマット用のビート板を1枚手に取り、サウナ室へと足を踏み入れた。

ーーマジか。

(タウンワーク: https://townwork.net/detail/clc_1756906023/

 まず僕の目に飛び込んできたのは「iki」だ。知る人ぞ知る、大手サウナメーカーのMETOS製のストーブで、サウナに力を入れている人気施設にも多く導入されている。まさかここで出会えるとは。2段設計のベンチには、物理的には10人ほどが座れるだろうか。湿度は比較的低く、温度は100℃となかなか高い。
 僕は空いている上段に腰をかけ、テレビを眺めながら静かに蒸され始めた。その数分後、全身から大量の汗が流れ出し、呼吸は荒れ、心臓の鼓動が激しくなったところで立ち上がった僕は、サウナ室を出て掛け湯をしてから、水風呂に肩まで浸かった。

ーーほぉ、これはいいぞ。

 水温は約16℃と僕が耐えられる下限の設定で、バイブラが無いためじっくりと羽衣を纏いながら身体を鎮めることができる。そこで30秒ほど過ごしてから、露天スペースに移動し、椅子に身を委ねて大きく深呼吸をした。

ーー最高だな。

 ビルに囲まれた日常の中の非日常感。周りを見ると、この施設の魅力を知る者たちが集い、平日の15時台にもかかわらず、そこそこ繁盛しているようだった。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/c/boccitokyo

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#連続サウナ小説 『ボッチトーキョー』byナオト
①僕たちは自費でサウナに伺います ②それでお店の売上が増えます ③noteを通して心を込めてお店を紹介します ④noteを読んだ方がお店に足を運ぶようになります ⑤お店はもっと経済的に潤うようになります ⑥お店のサービスが充実します ⑦お客さんがもっと快適にサウナに通えます