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先を読んで生きる【石巻天然温泉 元気の湯@宮城県石巻市】(1/2)

 以前、たまたま見たテレビ番組で、精神科医の和田秀樹さんが「1日に1回は意識的に新しいことをするようにしている」と言っていた。たとえば、職場との往復時に普段とは違う道を通ってみたり、一度も利用したことがない飲食店で食事をしてみたり、そういった小さな新体験を日常に取り入れるようにしているらしい。結論、これが脳の老化防止に効果的らしく、実際に和田さんは年齢を感じさせないほど若々しくエネルギーに溢れていた。

 脳は刺激を受けなければ徐々に老化していくそうだ。たしかに、年齢を重ねれば重ねるほど経験値が上がり、さらに身体機能が低下することで行動範囲も狭まるため、必然的に新しい体験をしにくくなる。そのまま放っておけば脳は老化するに決まっているのだ。会社の創業者や大企業の社長がいつまでも精力的に活動を続けられているのは、もともとそのような気質だったことと併せて、仕事を通じて新たなチャレンジに取り組み、多くの経験を日々積んでいるからかもしれない。実は、先日お会いした60代の経営者も、まさにそのような方だった。

 9月13日(火)。この日、僕は宮城県石巻市にいた。あの大震災から11年半が経過していて、当時都内の大学に通っていた僕はメディアやSNSを通じて悲惨な状況をただ遠くから見ることしかできなかったのだが、その時の記憶を思い返すと、「諦めなければなんとかなるものだ」と人々の意志の強さを感じてしまうほど日常が取り戻されているような気がした。
 約束を取り付けていた経営者と無事に合流できた僕は、そこで約3時間にわたってさまざまな話を伺ったのだけれど、その中で最も印象に残ったのが「先が読める人生はつまらない」という発言だった。その方のビジネスは案件あたりの金額が数千万円から数億円の規模で、リターンが大きい分リスクも非常に大きくなる。実際、これまでに数々の経営危機に陥りかけたそうだ。
 安定志向の僕からすれば、それでもくじけずに会社を続けていることが疑問だったのだが、その方にとっては先が読める安定した人生よりも「なにが起きるかわからない人生」のほうがおもしろいそうだ。これが会社経営のモチベーションにもなっていて、結果的に若々しさを保つことができる秘訣にもなっているのだろう。

 考えてみれば、僕は長生きしたいと思ったことはあまり無いけれど、死ぬまで健康でいたいとは思っていた。そうでなければ、普段から食べ物に気を遣ったり、定期的な運動習慣を取り入れたりしないだろう。だとすれば、僕も安定ばかりを追い求めようとせずに、自らリスクを取りに行って、多くの経験を積んだほうが結果的に理想の状態に近づけるのではないだろうか。

ーーとりあえず、行きますか。

 そんなことを考えながら、僕は新たなサウナ体験を求めて、次の目的地へと移動した。

ーー後編に続く

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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