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支えてくれる人がいる【湯乃泉 草加健康センター@草加駅】

 複数の選択肢の中から何かを選ばなければならない時、もしもその判断材料としてランキング情報が存在していたとしても、僕はそれを鵜呑みにせず、あくまで定量的な参考情報程度に留めるタイプの人間だ。そこで一次的なフィルターをかけたあとの最終決定は、口コミの内容から定性的に判断している。
 このことについて、詳しくは前回のnoteにまとめているのだけれども、僕は奇しくも「第1回 週刊SPA! サウナ大賞」にてランキング1位を獲得した草加健康センターに行くことになったのであった。

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 もともと「第1回 週刊SPA! サウナ大賞」が発表される数日前に、友人に「草加健康センターに行きたい」と連絡していたところなので、まさかそれから1週間も経たないうちにこのような形でメディアに取り上げられることになるとは想像すらしていなかった。
 しかし、一度固めた意思を変えることなど僕にはできない。予定通り、僕は本日12月19日(土)に草加駅へと向かったのであった。

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 天気は晴れ。東武伊勢崎線「草加駅」には午前10時過ぎに到着した。ここから草加健康センターまでは無料のシャトルバスが出ているらしく、それに合わせて少し余裕を持って自宅を出ることにしたのだった。

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(草加健康センター公式サイト: http://www.yunoizumi.com/souka/%E5%9C%B0%E5%9B%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9/ )

 Twitterを見ている限りとても人気な施設であることは一目瞭然だったが、さらに「第1回 週刊SPA! サウナ大賞」での堂々1位獲得となれば、きっと混雑は避けられないだろうと思って早めに移動を開始したのである。
 ここまで自宅から片道1時間以上かかるのだけれど、「今年のサウナは今年のうちに」を12月のスローガンに掲げていた僕にはそんなことは関係ない。行ける時に行きたいところに行く、それで良いのだ。

 しかし、シャトルバスが停車する予定の場所まで到着したのは良いものの、目印が見当たらないのでどこで待機をすれば良いのかわからず、時間になるまで近くのデイリーヤマザキの中で様子を見ることにした。すると、10時10分頃に道路沿いに5人ほどの列ができ始めたので僕もその後ろに並んでみたところ、予定時刻の5分ほど前になっていよいよ憧れのシャトルバスがやってきた。

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 バスは約20人乗りだったが、予想とは裏腹に乗車率は60%程度と意外に混んでおらず、しかも年齢層はかなり高めだった。むしろ同世代以下の若いお客さんは見当たらない。予定通りの時刻にバスは出発して、草加健康センターには10分程度で到着した。

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 中に入ると「サウナイキタイ」に口コミを投稿した人たちへのお礼メッセージが掲載されていた。お客さんを大切にしている店舗であることが伝わってきて、とても好感を抱いた。

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 入り口で靴を抜いで靴箱にしまい、タオルは持ってきていたので受付で「入浴のみ(税込900円 ※タオル無し)」を申告すると、料金は後払いであることを告げられたので、ロッカーキーを受け取ってそのまま脱衣所へと向かった。

 ちなみに2階以上には「館内着・リクライナー利用料込」の入館料を支払わなければ上がることができないそうだが、1階にはレストランを兼ねている休憩スペースの大広間があるので、入浴と食事のみでの利用を希望する場合はプランをアップグレードする必要は無い。

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(草加健康センター公式サイト: 
http://www.yunoizumi.com/souka/%e6%96%bd%e8%a8%ad%e6%a1%88%e5%86%85/ )

 小腹が空いていたものの、11時以降でなければ大広間で食事を注文することができないそうなので、まずはお風呂に入ることにした。服と荷物をロッカーにしまい、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。

「ついに来たぞ〜〜〜!!」

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%81%8a%e9%a2%a8%e5%91%82%e3%83%bb%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a/ )

 中は想像していたよりも広く、お風呂の種類が豊富であることがすぐに見て取れた。そしてなにより、扉を開けた瞬間から薬草のような独特な香りが漂ってきたのだった。客層もバスに乗った時と同じく、ご高齢の方の比率が高いようだ。

 まずは身を清めて、さっそく調査に繰り出すと、内湯には超音波風呂やバイブラ風呂などマッサージ効果が期待できるお風呂が豊富に用意されていることがわかった。さすが「健康センター」と名乗っているだけのことはある。

 だが、それよりも目を引いたのは「効泉薬湯(こうせんやくとう)」だ。明らかに先ほど感じた薬草のような香りはここから発せられていた。

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%81%8a%e9%a2%a8%e5%91%82%e3%83%bb%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a/ )

 独自にブレンドされた生薬が41℃のやや温かめなお湯に溶け込んで茶色く濁り、見ただけで体に良さそうであることがわかったが、実際に入浴してみるとその効果は絶大だった。

「うおおおぉぉぉ〜〜〜アソコがピリピリするっ!!」

 なるほど、これが噂の”チンピリ”か。たしかに生薬の成分によって刺激を受けた股間のあたりがピリピリしてきた。真面目な僕は、全身の皮膚の中でデリケートゾーンは特に経皮吸収率が高いことを、こんな時に思い出したのだった。

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(たかくら新産業: https://takakura.co.jp/company/profile/ )

 そこで1分ほど体を温めてから、すぐ隣にある高濃度炭酸泉に入浴。こちらは37℃の不感温であるために空気とお湯との境目が曖昧なので、宙に浮いたような不思議な感覚を味わうことができるのだ。自然と全身の力が抜けていき、永遠に入っていられるくらい心地がよかった。

 だが、ここで満足しきってはもったいない。僕は立ち上がり、すぐ脇のドアを開けて露天スペースに出ると、左側にはさらにサウナ室への扉があり、右側には露天風呂があった。そして正面の突き当りには水風呂も確認できたが、デジタル表示の温度計を見ると12.7℃とのこと。これは以前に伺ったコスモプラザ赤羽に匹敵する冷たさだ。ここにこのあと入るのかと思うと、いっきに緊張感が高まった。

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a%e3%83%bb%e3%83%ad%e3%82%a6%e3%83%aa%e3%83%a5/ )

 ここでは、まずは露天風呂に入ることにした。草加健康センターの露天風呂は群馬県の草津温泉から源泉有効成分を直送してお湯に溶け込ませているそうで、白濁した乳白色が特徴的だ。

草津温泉は神経痛・リウマチ・冷え性や痔や汗疹など、様々な効能があるとされており、泉質が強酸性硫黄泉で“美肌の湯”としても有名です。当センターの露天草津の湯は群馬県草津温泉湯畑より直送の源泉有効成分を濃厚にした液状の浴剤を使用。本場の草津温泉を身近にお楽しみいただける貴重なお風呂です。近くで気軽に楽しめる露天草津の湯は、当館でも大変人気でご好評をいただいております。

ーー草加健康センター(露天草津の湯)
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%81%8a%e9%a2%a8%e5%91%82%e3%83%bb%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a/%e9%9c%b2%e5%a4%a9%e8%8d%89%e6%b4%a5%e6%b8%a9%e6%b3%89/

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%81%8a%e9%a2%a8%e5%91%82%e3%83%bb%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a/ )

 これはこれで良い意味でクサい。とにかく草津温泉の現地で感じる硫化水素ガスのニオイが鼻を突くのだ。さらに浴槽には温泉スケール(温泉成分の結晶)がみっちりこびりついていて、入浴しなくても泉質の良さが伝わってきた。僕は興奮を抑えながら、ゆっくりとお湯の中に沈んだ。

「すげええぇぇぇ〜!! めちゃめちゃ濃い!」

 どうしよう、これは紛れもなく温泉だ。ここで湧き出てるのかと思うほど濃い。流石に驚きを隠せなかった。

 草津の湯も味わったところで、僕はサウナに入る前にいったん腹ごしらえをすることにした。軽くシャワーで体を流してから脱衣所で服を着て、大広間へと向かった。

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 どのメニューも興味をそそられたが、以前からTwitterで見かけていた「肉玉ライス(780円)」と「カレー唐揚げ(630円)」がどうしても気になったので食べてみることにした。

 注文して5分ほど経つと、まずは肉玉ライスが運ばれてきた。見るからに美味しそうだ。さっそく一口。

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「んめええええぇぇぇぇ!!!www」

 醤油ベースの甘辛い味付けにガツンとガーリックのパンチが効いた挽き肉、そしてそこに絡む半熟の卵黄が全体にコクを与える。これが白米に合わないわけがなかった。絶対にサウナ施設のご飯のクオリティじゃない。もしも自宅の近所で肉玉ライスを提供する定食屋さんがあれば毎日通うかもしれない。そのくらい美味しかった。

 それからさらに5分ほど経過したタイミングでカレー唐揚げも運ばれてきた。大ぶりな鶏肉が6個に、スパイスとマヨネーズが付属している。さっそく1つ頬張ってみた。

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「……うますぎる!!www」

 薄付きのカレー風味の衣はサクサクしていて、鶏肉自体はふっくらジューシーな仕上がり。これだけでも美味しいのだが、付属のスパイスや甘みのあるマヨネーズで味変を行うことでさらなる高みへ。もう毎日これを食わせておくれよ。肉玉ライスとの相性も最高だよ……。

 さらに、ここに「バードアイ」という激辛スパイスも追加をしてみたのだけれど、口に入れた数秒後から滝汗が出てきた。でもただ辛いだけではなく、食欲をそそる中毒性のあるスパイスなのだ。

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 あまりの美味しさに、あっという間に完食してしまった。ほかにも気になるメニューはたくさんあったのだけれど、これだけですでに満腹になってしまい、胃のキャパシティがそこまで大きくないことが悔やまれた。

「さて、では向かいますか」

 お腹が満たされたところで、僕は再び浴場へと移動した。先ほど入浴した時よりも若干お客さんは増えていたようで、客層も少し若くなっていた。とはいえ、全体的にマナーの良いお客さんばかりだ。これだけ人気な店舗であれば多少は治安が荒れそうなものだが、そんなことは無い。草加健康センターは、店舗とお客さんが支え合っている素晴らしい店舗なのかもしれない。

 僕はシャワーで全身を流して、再び効泉薬湯や炭酸泉で体を温めた後、いよいよサウナ室への扉を開けると、奥から大きな機械音が聞こえてきた。

「ブオオオオオオオ!!!」

ーーなんだこの音は? まさか……これが噂の!?

 そのまさかだった。小型送風機のブロワーを持ったスタッフがサウナ室内で熱風を巻き起こしていたのである。草加健康センターではブロワーでロウリュが行われるという話を小耳に挟んだことがあったのだが、どうやら僕はロウリュの終盤でたまたま入室したようだった。(ロウリュが行われる時間帯を把握できていなかった。)

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/2018/10/02/%E7%8D%A8%E5%8D%94%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E9%A7%85%E5%89%8D%E3%81%AE%E3%81%8A%E9%A2%A8%E5%91%82%E3%80%8C%E3%83%AD%E3%82%A6%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%82%A6%E3%81%A7%E3%81%A8%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%81%86%E3%80%8D/ )

 その姿を見ただけで僕の興奮は最高潮に達していたのだが、本番はここからである。目の前に積まれているサウナマットを1枚手に取って奥へと進んだ。

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(草加健康センター公式サイト:
http://www.yunoizumi.com/souka/%e3%82%b5%e3%82%a6%e3%83%8a%e3%83%bb%e3%83%ad%e3%82%a6%e3%83%aa%e3%83%a5/ )

 サウナ室の中はとても広々としている3段構成。その段数ごとに温度計も別々に設置されていた。諸事情により隣同士の間を開けて座ることになったのだが、それでも20人程度は入ることができるくらい広い。
 さっそく最上段の空いているところに腰を掛けてみる。この段は92℃らしい。たしかに温度もそこそこ熱いが、ちょうど大量の熱蒸気が生み出された直後だったからか、湿度も高い。これによって体感温度もかなり上がって、すぐに全身から汗が流れ始めた。正面にテレビが設置されていたのだが、この時は電源がオフになっていた。

 ただ、ここで僕はあることに気付いた。僕が10年前からリラックスタイムに何度も繰り返し聞いてきたAyurの「I Miss You」がBGMに流れていたのである。日常でこの曲に出会うことなんて滅多に無い。草加健康センター、なんとマニアックな……。好感度が爆上がりじゃないか。

 お気に入りの曲を聞き終え、まずはここで1セット目のサウナを終えて水風呂に向かった。先ほど気になった約13℃の水風呂だ。汗を流して、いざ。

「うおおおおぉぉぉおおおぉおおおお!!! キンキンに冷たい!」

 冬空の下、全裸で味わう冷水が火照った身体に沁みる。めちゃめちゃ気持ち良い。深呼吸をしていると徐々に脈拍が落ち着いてきたのだが、さすがにここまで冷たい水風呂の中には30秒程度しか沈むことができなかった。

 僕は立ち上がり、すぐ近くの草津の湯に身を委ねた。冷やされきった皮膚を、今度は温かいお湯が包み込む。全身に血が巡り、僕は幸福感に包まれ、気持ちよさのあまり思わず笑みが溢れた。

 それから一呼吸を置いて2セット目のサウナと水風呂をいただいた後は、草津の湯ではなく効泉薬湯へ。熱蒸気と冷水によってダメージを受けた皮膚に生薬が効いたことは、僕の股間が一番よく感じていたようだ。

 それから浴場でいくつかのお風呂を出入りしていると、草津の湯に入っている時に男性スタッフが「ロウリュを始めます」と声をかけ始めた。これは受けなければ。僕は再びサウナ室の中に入り、席を確保した。

 そこで体験したロウリュは衝撃のあまり記憶が曖昧になっているのだが、その中でも鮮明に覚えているのは、バケットからラドルを使用せずダイレクトに大量の水をサウナストーンに投下していたことだ。そしてそのサウナストーンや天井に向けてブロワーで大量の風が送り込まれ、それによってサウナ室中に熱蒸気が充満し、あまりの熱さに僕の皮膚は火傷寸前だった。
 僕の体からは大量の汗が流れ落ち、心拍数は急激に上がり、呼吸は荒れに荒れた。すぐに限界を迎えた僕はサウナ室を飛び出し、意識が朦朧としながらも本能に従うままに水風呂に沈み込んだのだった。

「くううぅぅああああああーーー!!!」

 なんだこれは。体中の細胞が喜んでいる。すごいぞ、すごいぞ草加健康センター。こんな感覚は味わったことがない。僕は空を見上げ、それから目を閉じてゆっくりと深呼吸した。そして心拍と呼吸が落ち着いてきたタイミングで立ち上がり、”ととのい椅子” に腰を掛けると、僕は完全に宇宙と一体になっていた。

 それから1分ほど経過した頃だろうか。少しずつ意識が戻ってきて、多幸感で満たされた僕は浴場を後にした。

「それにしても、ものすごい”あまみ”だな……」

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(※写真ではわかりにくいが過去最高の仕上がりだった)

 今回、1,000人の投票によって1位を獲得したサウナでようやく蒸されることができたわけだが、僕はこのランキングに対して肯定も否定もするつもりは無い。ただ、「僕も今日から草加健康センターのファンになった」ということだけは胸を張って言わせてもらいたい。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

YouTube「ボッチトーキョー」
https://www.youtube.com/channel/UCOXI5aYTX7BiSlTt3Z9Y0aQ


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#連続サウナ小説 『ボッチトーキョー』byナオト
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