営業のモットー【ホテルグローバルビュー八戸@青森県】
「仕事とは、お客様から紹介をいただいて初めて完結するものだ」
先日、ある経営者から話を聞いた。その方は不動産関係の会社を経営しているのだが、独立したのは40歳を過ぎてからだった。それまでは大手住宅メーカーに勤務していて、一般顧客を相手に戸建て住宅の販売をしていたそうだ。その方が会社員時代に経験でたどり着いたのが「次のお客さんを紹介してもらうまでは、仕事が終わったことにはならない」というモットーである。
家は、多くの人にとって一生で一番高い買い物になるだろう。すなわち、家を買うということは、自分の人生を捧げるようなものなのだ。そのような高価なものを信用できない相手から買う人はいないだろう。戸建て住宅の営業担当者に求められるのは「どれだけ相手から信用を得られるか」であり、家を買う側の人間は「どれだけ信用できる相手を見つけられるか」が取引成立のための重要なポイントの一つになってくるということだ。逆にいえば、お互いに信頼関係さえ築くことができれば、その取引はほとんど成立したようなものなのである。
僕は現在はライター関係の仕事を中心にフリーランスとして生活をしているのだけれど、実は会社に勤めていた頃は営業職だった。だからこそ、僕はその経営者の話にとても納得してしまった。仕事ができる人のところには、自然と仕事が集まるようになっていたのである。
手前味噌ながら、かくいう僕も独立してからの約4年間、営業という営業をせずに生計を立てることができている。然るべきタイミングで然るべき人から、なんらかの仕事の相談を持ちかけられ、それに全力で応えてきたからだ。それが信用へと繋がり、場合によっては僕のことを他の人に紹介してくれるお客さんまで現れるようになった。
そのように僕に関する口コミが広まるのは、おそらく普段から僕が余裕を持って人と接するようにしていたことも理由の一つかもしれない。僕はやる気が無い時や自分が価値を発揮できない分野の仕事を持ちかけられた時は、相手との信頼関係構築を優先して、自分が直接仕事を受けるのではなく身の回りの優秀な友人を紹介するようにしている。自分自身の目先の売り上げよりも、「どうすれば相手の役に立てるのか」を第一に考えるためだ。不思議なことに、短期的なチャンスを意図的に手放すことによって、中長期的に大きなチャンスに恵まれることも少なくないのだが。
いずれにしても、僕は「仕事が無いなら無いで貯金を取り崩して生き延びればいいだけだ」くらいに緩く考えていて、時間に余裕ができた時は仕事を増やすのではなく遊びに出かけてしまっている。
2022年10月23日(日)、この日も僕はプライベートで遠出をすることにした。向かった先は青森県である。
本八戸駅に到着してからは歩いてホテルに向かうことにした。人生初の青森に気分は高揚しっぱなしである。今回の旅によって、僕は47都道府県のうち、沖縄県を除く46の地域に訪れたことになったのだ。
ーー「なかなか立派だな」
そして今回利用させていただくことにしたのは「ホテルグローバルビュー八戸」である。どうせ泊まるならサウナ付きのホテルをと思い検索したところ、こちらがヒットしたのだ。
中に入ると、全体的に高級感と清潔感が漂う雰囲気に安堵した。広々としたロビーやカフェ&バーラウンジなど、部屋の外でもくつろいで過ごすことができるようになっている。
僕は指定された部屋に荷物をおいて、観光がてら八戸の街を散策しながら、空腹を満たすことにした。そこでたどり着いたのが、「八戸屋台村 みろく横丁」にある「ととや烏賊煎」だ。
生け簀に泳ぐ新鮮な烏賊を堪能できる居酒屋で、他にも「姫にんにく」の天ぷらなど、ご当地グルメを味わえる素敵なお店だった。
腹ごしらえが済んだ僕は、部屋に戻って準備をすると、しばしの休憩を挟んでから大浴場へと向かった。
ーーシックで、なかなか良いじゃないですか。
大きな浴槽が1つ、そして水風呂とサウナ室というシンプルな構造。手入れが行き届いており、以前に伺った「Smart Stay SHIZUKU 品川大井町」を彷彿とさせる安心感を抱いた。
僕は身を清めてからさっとお湯に浸かり、さっそくサウナ室へと向かった。
ーー落ち着くなあ。
3人ほどが十分なスペースを確保できる2段構造で、コンパクトではあるが、そこには薄暗く無音の別世界が広がっていた。82℃とやや優しいが、ストーブとの距離がとても近いため体感温度はやや高い。一方で湿度は比較的低いため、じっくりと時間をかけて熱を感じる入り方が適していそうだ。
そこで無言で蒸され始めると、数分後には全身から大量の汗が流れ出し、呼吸は荒れ、心臓の鼓動は激しくなっていった。
ーーそろそろ出ようか。
静かに立ち上がり、サウナ室を出て頭からシャワーを浴びた僕は、水風呂にゆっくりと肩まで浸かった。
ーーほぉ、意外と冷たいじゃないか!
体感で16℃といったところだろうか。僕が耐えられるぎりぎりの水温で、火照った身体が瞬時に鎮められていく。そこで大きく深呼吸を数回。30秒ほど経過したところで立ち上がった僕は、他のお客さんの邪魔にならないように浴槽の縁に座り、全身を脱力させた。
ーー最高なんですけど。
あまりの心地よさに、いつしか眠ってしまっていた。目覚めた時には15分ほどが経過しており、僕は多幸感に包まれていた。
「また胸を張って人に紹介できるホテルに出会ってしまったな」
そんなことを考えながら、僕は今回も『連続サウナ小説』の筆をおいたのだった。
(written by ナオト:@bocci_naoto)