【小説】君が僕を好きになってくれないなら
雪が降る音を幻聴しそうなほどに静まり返った冬の朝。倉庫の中は寒くて、僕は水っぽいゲロを何度も吐いた。胃酸で食道がひどく痛む。顔を上げると、心配そうに妹が僕を見下ろしていた。大丈夫だから、と僕は平静を装って笑みを作る。”作業”に戻ろうとする僕の足取りは重い。ゴム手袋をはめた。手袋の中は僕の手汗でじっとりと湿っていて気持ちが悪い。僕は足元の斧を掴もうとするが、手袋が斧の重さに負けて僕の手から抜けそうになる。手にめいいっぱいの力を込めて僕は斧を持ち上げた。斧の切っ先が弧の頂点に達