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Music of Delusion 第2話 ~火の流れを射る者~


〜朝〜



「この世界は草や木がたくさんあるだろう?」
「この草木は日々成長していて、いつかこの空間を覆い尽くし
 私たちが生きていくスペースがなくなってしまう」
「だが、私が矢を射ると火がつき、この草木を燃やして減らすことができるんだ」
「ちょっと見ていてくれ」

ヒブサメは馬の速度を上げると
等間隔に生えている木に実っている赤い果実に向かって
走りながら弓を3回射った。

「すごい!全て命中した!」

「私は毎日弓を扱っていたら、こんなに精度が上がってしまったんだ」
ヒブサメは軽く微笑んだ。
「ただうちの奥さんには敵わないがなぁ」

「奥さんがいらっしゃるんですか!?」
「あぁ。ただなかなか近くにはいられないんだけど」
「何か事情が..?」
「いや、物理的な距離があるというか… ほら上を見上げてごらん」

空を見上げると同じく馬に乗った人影が遠くにうっすら見えた
「彼女が奥さんのソラカケ。私と同じく馬に乗って弓を射る者なんだが、
 地上に降りることが出来ないんだ」
「どうやってコミュニケーションを取ってるんですか」
「矢文といって矢に手紙をつけ、それをお互いに交換することで
 会話をしてるんだ」

「なんかロマンチックですけど、寂しいですねぇ」
「あぁ」

ヒブサメは寂しげな表情で空を見つめていた。

〜昼〜



また周りの草木が急激に成長を始め
タビロドは蔓に足が絡まり馬から落ちてしまった

「やばいっ!」
そう思った瞬間には成長した蔓や草木に全身が覆われ
身動きが取れなくなってしまった
「苦しい…」

意識が朦朧としかけたところ
目の前に赤くゆらゆらとしたものを感じた。

ヒブサメは目に止まらぬ速さで馬を操り
草木の根を目掛けて弓を連続で射続けた。
しかし、草木の成長は止まらず遂に馬の足も蔓で絡めとると
馬は急停止し、ヒブサメは空中に放り出された。

その瞬間ヒブサメが渾身の力で矢を射ると
矢が大きな豪炎となり草木を焼き尽くした。

「これが火だったんだ」
タビロドが目を覚ますとあたり一面が焼け野原となっていた

「とにかくここを離れよう」

〜夜〜

「先ほどはありがとうございました」
「いやいや、これが僕のすべきことだから」

焚き火の前でゆっくりとした時間が流れる中
タビロドが思いついた
「そうだ!ヒブサメさんの火を空へ届けるのはどうですか?」
「君は飛ぶことができるのか!?」
「はい。できると思います。」
「僕に火の矢を射ってください。その勢いでソラカケさんの元へ行ってきます!」
「半ば信じがたいが… 私の矢は草木以外には直接の害は与えないので
 試してみる価値はあるか…」
「わかった!」

ヒブサメがタビロドに向かって矢を射ると
タビロドの姿は火の粉となり空へと進んでいった

「必ず届けます!」
「よろしく頼む!」

火の粉は明るく空を照らしながら夜空へ突き進んでいった…

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