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人生に迷ったら

看護師だからか、オバサンになったからか、一人ひとりの生きざまがとても気になる。色んな人がいることを知ると、「何事も上には上がいる。辛くて耐えられないと思っても、反対に、自分が天才じゃないかと自画自賛したいときも、自分なんかまだまだ平凡だ」と自分の立ち位置が見えてくる。

将来の夢が分からない、したい仕事がない、夢では食べて行けそうにない、失業した、そんな人には看護学校をお勧めしている。お金がない、頭が悪い、血が苦手、下の世話は嫌い。大丈夫、やる気さえあれば何とでもなる。

看護協会は医師や薬剤師に負けないアカデミックなナースを増やしたいようで大学を推している。初任給は大卒の方が少し良い。しかし、看護学校(専門学校)の方が入学しやすいし3年制なのでお得でお手軽だ。私も看護学校卒で、会社勤めをしながらこっそり受験勉強し学校に合格できたくらいだから、入試は大変ではなかった。

社会人枠や給付型の奨学金もある。血をあまり見ない職場もあるし、オムツは慣れると意外と楽しい。働いてみると、血やオムツよりも怖い先輩や、勉強不足で天手古舞な自分の方が大変だと気付く。マイナスイメージはそれくらいにしておこう。

学校の先生が親身に指導してくださるので、看護師の国家試験合格率は90%前後で毎年ほぼ安定。普通に学校に行っていれば、落ちこぼれでも何とかなる。何の取り柄もコネもない人にとって、資格があると主体的に強気で生きられる。それに、健康のことをもっと知りたくないだろうか。そんな資格が3年でとれるなんて。

血やオムツが気になるなら、とりあえず入学してみて、学校生活の中で向き不向きを考えても良い。実際、途中で退学する人もいる。
こんな病気が世の中にはあって、それで苦しんでいる人がいると知るだけで、見知らぬ人にも優しくしようと思える。また、自分もいつ患者側になり得るかと思うと、一日一日を大切に、予防的に生きようと行動できるし、病気になっても経過と対処法がわかる。何とかなるのか、何ともならないのか、ある程度予測できるようになる。山本周五郎の赤ひげが「無知と貧困」の根絶を説いていたが、医師より手軽にそれに携われるのが看護師だと思う。それが3年で。

難しいだろうが義務教育に看護の科目を入れて貰えれば、医療費抑制にもつながるに違いないと、首相官邸に先日メールで提案申し上げた。今回の新型コロナウイルスで、手洗いの方法やマスクの扱い方を学んだように、もう少し、自身の身体に関心を向けてみてはどうだろう。3年で一通り勉強できるし、翌年からはそこそこの給料が貰える。

看護師の仕事は診療の補助と、患者さんの療養上の世話。また、安全・安心なだけでなく、その人の自立を促すようなケアをすることが求められる。と学校で教わった。何でもしてあげるのが看護ではない。その人が、できるだけ自分でできるように、必要な部分だけを手伝うことが大事だ。

私はこれまで、診療の補助よりも療養上の世話をする業務が多かった。しかし、時間に追われていると、患者さんの動きを待てずつい全部やってしまったりするし、「全部やってくれ」という甘えん坊もいる。その時々で患者さんに合わせて私も役を使い分け、優しくしたり淡々としたりする。

ときに、こっぴどく怒られたり意地悪なことも言われるが、「ありがとう」と目の前の人に言って貰えるのは至福だ。そんな至福のときが、一日何回も、毎日味わえるのだから、自己肯定感は相当なもののはずだ…。

そして、看護師の仕事はやり甲斐があるのに、自分の代わりがいっぱいいる、そんな気楽さがまたちょうど良い。きっと、他のナースもそう感じていると思う。ちょっと看護学校に入って考えてみようかな、とあなたの選択肢の一つになれば嬉しい。今のところ、実績は姉だけなので。