『mimorama』版「Floria」が早すぎたトリップホップですごい
結論を先に書くと、遊佐未森デビュー25周年記念ブック『mimorama』付録CDに収録されている’96年ライブ版「Floria」がその後のトリップ・ホップ/アブストラクト・ヒップホップを先取りしていてすごい、というお話です。
『mimorama』はまだ新品在庫があるようで定価で入手できます。ちょっと高いのですが、それに見合った内容と装丁になってます。
付録CDに収録されているのは’96年5月14日、日清パワーステーションで開催された「東京プリン」というタイトルのコンサートの音源。東京プリンといっても後のコミック歌手コンビとは全く関係ないらしい。
当日のセットリストはこちらで確認できます。
収録された楽曲は「Floria」と「砂山」の2曲のみ。
この「Floria」がスタジオ版と大きく異なるライブ用アレンジになっている。
これが翌’97年ごろから流行始めるトリップホップ/アブストラクトヒップホップを先取りした音なのがビックリである。
これは編曲を担当したのは寺田創一の特色が大きく出ていてるんじゃなかろうか。
寺田創一は後に『サルゲッチュ』のサントラなどで名を馳せることになる。
ブレイクビーツとアブストラクトな電子音に透明感のある女性ボーカルが乗った楽曲で、すぐに思い浮かぶのがBjörk「Hyperballad」。
これが'95年なので前の年になる。
あるいは笠置シヅ子の楽曲をAutechreがアレンジした濱田マリの「アイレ可愛や」。こちらは'97年。
そして、Massive Attack「Teardrop」。こちらは'98年。
いずれにせよ、遊佐未森が時代の先端の音楽と呼応しようとしていたことがうかがえる。
この後、遊佐未森は『ロカ』でアイリッシュ/ニューエイジ方向へ揺り戻る。
再び電子音楽方面へチャレンジするのは2003年の『ブーゲンビリア』を待たねばならない。
もし音源が残っているのなら「東京プリン」のライブ音源を一通り聴いてみたい。
これはレア音源に甘んじるのではなく、もっと広く聴かれるべき音楽だと思う。