見出し画像

[PRキャッシュ]コンテンツは目的たり得るか?

まあ結論から言えばもちろんNOです。
ただ、PRの現場においてしばしばコンテンツを目的とした活動が行われてしまうことにお気づきの方は多いでしょう。

一昔前のPRといえば「メディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディアメディア」でしたが、いまは「コンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツコンテンツ」になりがちです。

ここであるPRアクティビティの体制図をご覧いただきましょう。
このアクティビティでは、潜在顧客を売り場であるECページに誘導するためにソーシャルメディアアカウントを活用するというところまでは決まっていました。

コンテンツのための体制・・・

体制図がこちらです。

「コンテンツのための体制」は失敗する

つっこみどころを挙げるときりがないのですが、このプロジェクトがどうなったかからお伝えします。

このプロジェクトはメンバー9名が毎週集まり、2時間程度のブレインストーミングでコンテンツ案を考え、その後大急ぎで分担して制作をするという活動だけを繰り返しました。
当然このような活動が長続きするはずもなく、ソーシャルメディアアカウントは数か月で更新が滞ってしまいます。

つっこみどころ

まず責任者が「コンテンツ総責任者」となっているのが最大のつっこみどころです。
責任者がコンテンツにしか責任を持たないように見えてしまいます。
おそらく責任者含め、このプロジェクトに関わった関係者の頭の中には「コンテンツをつくって発信する」ことを最上位概念とする誤った合意があったのでしょう。

また「コンテンツ更新班」と「コミュニケーション設計班」がそれぞれ何をするのかが不明です。
普通に考えればプロジェクト管理上「コミュニケーション設計」は「コンテンツ更新」よりも上流工程にあたるので横並びになっていることに違和感があります。

ところが、その点を解消し、「コミュニケーション設計」を「コンテンツ更新」の上位に置いたとしても、総責任者が「コンテンツ総責任者」であるため、この矛盾は解消されません。

実際のところ「コミュニケーション設計」は機能せず、全員でコンテンツというボールを追い回す幼稚園児のサッカーのようなプロジェクト進行になってしまったわけで、この体制図ひいてはこのような体制を良しとしてしまう発想に問題があったことがわかります。

PRキャッシュは「コンテンツ」をどこに置くか

PRキャッシュのメソッドでは、PRアクティビティの設計は下の図のような発想で行われます。

PRキャッシュのアクティビティ企画メソッド

核の部分にストラテジーがあり、それに隣接するタクティクス、さらにその外側のオペレーションによってアウトプットを創出し、アウトカムを得る、という考え方です。
それぞれのタームが何を指すかは別の稿に譲りたいのですが、おおむね言葉通りの意味です。

いま、「コンテンツ」は「アウトプット」にあたりますが、この図に照らすと「アウトプット」は「オペレーション」を通して生み出され、「オペレーション」は「タクティクス」、「タクティクス」は「ストラテジー」によって定義されていきますので、この逆順にストラテジー⇒タクティクス⇒オペレーションという具合に定義されないと生み出されません。

「ストラテジー」にはある程度の自由がある

この図では内側で決定されたことが外側を支配していくということを想定しており、内側で定義されたことを逸脱したアウトプットはありえないということになります。
逆に一番内側にある「ストラテジー」に関しては、それ自体を支配するものはなく、ある程度の自由度を持って決定していくことができます。

では「ある程度」というのはどの程度なのか?
ざっくり言うなら「課題解決に資することを逸脱しない限りは」ということになります。

(その意味では課題解決こそがさらに中心にあるはずなのですが、ストラテジーの中には環境把握と課題の抽出も含みますのでこういった図になっています)

「失敗体制」はなぜ失敗したか

冒頭の「失敗体制」が失敗したのはコンテンツを生み出し、発信することを目的にしてしまったことが大きな原因なのですが、これと関連して、自由、言い換えればあてずっぽうに生み出されたコンテンツによって、課題解決を行おうという逆順での課題解決発想も原因として挙げられるでしょう。
その証拠に「コミュニケーション設計」が「コンテンツ」の下に置かれています。

コンテンツを考えた後で課題解決を考える、これはもうお尻から食べて口から出してるみたいなものです。
これではPR=パブリックリレーションズとは言えないでしょう。

にもかかわらずこのような体制でのコミュニケーションづくりはそこかしこに見られます。
みなさまにおかれましても今一度チェックをされてみてはいかがでしょうか?

いいなと思ったら応援しよう!