感覚的思考機能による高速執筆
長年携わっている次世代リーダー育成のプログラムで、数年前からメンタリングセッションを取り入れた。事業のビジネスモデルの改善提案について、幹部へのプレゼンテーションを1ヶ月後に控え、提案の修正を行うのだ。今回は、ひとり50分の持ち時間で取り組んだ。
パワーポイントをもらって、サッと一覧したあとに、直感的に違和感のある部分について質問していく。このとき、直感のスピードには、本当に助けられる。細かな話を聞く前に、だいたいのウィークポイントが見えてくるからだ。もちろん直感が間違っていることもあるので、質問を積み重ねながら問題の本質にアプローチしていくのだけど、すべてを理解してから論理的に問題を見つけていくようなプロセスではありえない速度で提案がブラッシュアップされていく。
話は急に飛んで、小学4年生の頃、プリントごっこという、版画の原理で印刷する年賀状作成キットで子ども銀行札をつくり、休み時間にクラスの友達に配って、自作の株式ボードゲームを楽しんだ。ちょうどバブルの頃で、NTT株などで世の中も浮かれているときだった。その大人の真似をして、株式ボードゲームを作ってみたのだった。
小学5年生になると、MSXというホームコンピューターを買ってもらって、株式ゲームや会社経営ゲーム、選挙ゲームなどのシミュレーションゲームを作って遊んだ。友達に100円で販売したりもした。
こうしたプログラミングでは、ひとつでも文字が間違っていると、うまく動かない。今みたいにAIで間違いを探すこともできず、かなりの量のプログラムを見直して、間違いを探すことになる。まずやるのが、プログラムを自分の頭で走らせることだ。小学校では、授業中に方眼紙を用意して鉛筆でプログラムを書き、家で入力して走らせたりした。授業中、頭の中ではちゃんと動いていたプログラムが、コンピューターではうまく動かない。このときの問題発見もまた、今から思うと、かなり直感によるところがあった。
つまり、直感というのは、私の個人的な経験から言うと、シミュレーション能力と表裏一体なのだ。この提案を経営幹部の前で行ったときに、どこに質問が来るのか、どこに批判が飛ぶのか、瞬時にシミュレートする。そのシミュレートは、中沢新一的に言えば、流動的知性、松岡正剛的に言えば、高速編集ということになるだろう。ロジックでシミュレートするのではなく、別の論理が動いている。スーパープログラマーの登大遊は、「論理的思考の放棄」が重要だと指摘する。
登は、通常のプログラマーが一ヶ月数百行、多い人でも一ヶ月で3,000行程度の作業能力であるのに対して、一日最低3,000行、月に10万行ほど書くという。この圧倒的なスピードは、論理的思考ではなく、感覚的思考に負っているのだという。
毎日書いているこの文章も、30分以内で書いているというと、驚かれることが多い。個人的には、途中コーヒーを入れたり、のんびりしながらでこのスピードなので、特に急いでいるわけではないし、むしろ急いでいるとこのスピードが出ない。登のいう「感覚的思考機能」を使うと、そうした高速作業が可能になるというだけのことである。
そして話は少し飛ぶが、能楽というのは、この感覚的思考機能を格段に高めるメソッドであることは、学び始めたかなりの初期段階から気づいていた。説明がなかなか難しいので、人にはあえて説明していなかったのだが、これについても文章化していけたらとは思っている。
ということで、話を戻すと、今日のセッションも小学校時代のプログラミングからつながる作業で、よくも悪くも同じことをずっとやってきているんだという感慨を抱いたという話でした。
小山龍介
BMIA総合研究所 所長
日本ビジネスモデル学会 BMAジャーナル編集長
名古屋商科大学ビジネススクール 教授
京都芸術大学 非常勤講師
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