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ごくふつうの自分が、保守的な組織を巻き込むにはどうすればよいですか?(1/29開催レポート:AI時代の共創未来図Webinar)
BMIA常務理事:山本 伸
以下に、1月29日に実施された「新規事業が次々に生まれる組織へ―FORTHメソッドが導く AI時代の共創未来図【ランチタイムwebinar】」のZoomのAI文字起こし原文から、ダイジェスト版として整えました。
新規事業が次々に生まれる組織へ―FORTHメソッドが導く AI時代の共創未来図【ランチタイムウェビナー】
イントロダクション by 山本伸(BMIA常務理事・FORTHマスターファシリテーター
皆さん、こんにちは。12時になりましたので、BMIAおよびシミックグループ共催のランチタイムセミナーを開始いたします。現在、続々と参加者の皆様が入室されています。25名、26名、30名・・・今日のお申込は90名超、かなり多くいただいています。
本日、ここBMIAのオフィスにお招きしているのは、FORTHイノベーションメソッドの開発者であり、グローバルにおけるデザインシンキングの権威および、トップイノベーション・コンサルタント である Gijs Van Wulfen(ハイス・ヴァン・ウルフェン)氏 です。今日は、直接お話しいただける機会です。
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この後、ウルフェン氏にはたっぷりとFORTHイノベーションメソッドについて語っていただきますが、その前に私から簡単に、イントロダクションをさせていただきます。
1.FORTHイノベーションメソッドとは
現在、多くの組織がイノベーションを起こしたいと考えているものの、なかなか成果が出ずに苦労している現状があります。その理由の多くは、以下のような課題によるものです。
イノベーションの進め方が手探りになってしまう
関係者やステークホルダーを巻き込むのが難しい
最終的にコンセプトをまとめるプロセスが不透明
例えば、「どうやってイノベーションを起こせばいいのか?」「新規事業をどのように立ち上げればいいのか?」と悩む人が非常に多く、これは 大企業に限らず、多くの組織で共通する問題 です。
また、新規事業を生み出すプロセスにおいて、上司や役員層、ステークホルダーをどのように巻き込むのか?関係者が納得しやすい形で進められるのか? という点も、大きな課題であるという声は、本当によく聞きます。
特に 組織の中でイノベーションを推進しようとする際、周囲の理解や協力を得るのが難しく、結果として「もやもやした状態」のままプロジェクトが停滞してしまう という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
2.この問題が解決された未来とは?
もし、こうした課題が解決されたら、組織のイノベーションはどのように変わるでしょうか?
1.明確なステップに沿って進められる安心感
何をすべきかが明確で、手探りではなくなる。
あらかじめ用意されたプロセスがあることで、プロジェクトがスムーズに進行する。
2.短期間で成果を確認しながら動ける
イノベーションの進行が遅くならず、仮説検証のサイクルが早まる。
想定外の変化にも対応しやすくなる。
3.組織を横断して協力しやすくなる
「サイロ化」や「部分最適」の問題を解消し、組織全体での協力がしやすくなる。
共通のメソッドやプロセスを持つことで、異なる部門間でもスムーズにアイデアを形にできる。
これらの理想的な未来に近づくために、世界中で注目されているのが「FORTHイノベーションメソッド」 です。
3.FORTHイノベーションメソッドの概要
FORTHメソッドは、イノベーションを体系的に推進するための5つのステップ で構成された方法論です。「FORTH」という名称は、各ステップの頭文字をとったものです。
FORTHの5つのステップ
1.Full Steam Ahead(全速前進で開始)プロジェクトの方針を明確にする
2.Observe and Learn(観察と学び)外部からのインプットを得る
3.Raise Ideas(アイデア創出)クリエイティブな発想を引き出す
4.Test Ideas(アイデアをテストする)仮説検証を行い、具体化する
5.Homecoming(帰還)方針に適合する新コンセプトをまとめる
4.FORTHメソッドの実績と活用事例
このメソッドは、世界各国で幅広く活用されており、大企業からアカデミア、さらには非営利団体まで、多くの組織で導入されています。
グローバル企業での導入事例
3M、フィリップ・モリス、ミラノ空港、オックスフォード大学(サマープログラム)、国連(UNHCR)の難民キャンプ、他、多数
日本企業での主な導入・実践事例
NTTグループ、NECグループ、村田製作所、シミックグループ、さらには日立、旭化成、富士通、カインズ、IBM等々にも、ファシリテーターが在籍
これらの企業では、FORTHメソッドを活用することで 「新規事業開発」「社内のイノベーション文化醸成」「異業種連携の推進」 などに成功しています。
5.FORTHメソッドの最大の特徴
FORTHメソッドは「ただのアイデア創出法」ではなく、「実行可能なプロジェクトへと導くプロセス」 である点が最大の特徴です。
「観察と学び」から始めることで、実際の市場ニーズに即したアイデアが生まれる
明確な5つのステップを踏むため、イノベーションの進め方が体系化される
プロセスの中で関係者を巻き込みながら進めるため、組織の抵抗を最小化できる
この後、FORTHメソッドの開発者であるハイス・ヴァン・ウルフェン氏が、直接このメソッドの詳細と具体的な活用方法についてお話しします。
ぜひワクワクしながらお聞きください!
Gijs Van Wulfen(ハイス・ヴァン・ウルフェン)氏の講演:イノベーションの障壁
ハイス・ヴァン・ウルフェン氏は、イノベーションが成功しない主な要因として 「15のイノベーションの壁」 を挙げました。この障壁があるために、多くの企業が新規事業開発やイノベーションに苦戦しているのです。
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イノベーションが阻害される15の主要な障壁
ハイス氏は LinkedInで800人以上のイノベーターやビジネスリーダーに「イノベーションが潰される理由」について調査 を行いました。その結果、特に 管理職の支援不足が最大の要因 であることが明らかになりました。
具体的には、イノベーションが阻害される主な理由として、以下の15の障壁があるといいます。これらの障壁のほとんどは、技術的な問題ではなく、組織文化や人の心理に根ざしたものです
経営層の支援不足
ビジネスケースの不在
意思決定の遅さ
技術的な制約(実は少ない)
組織のサイロ化
過去の成功体験にとらわれる
多様性の欠如
失敗を恐れる文化
官僚的なプロセス
現状維持へのこだわり
短期的視点の優先
顧客の視点を欠く
イノベーションへの優先順位の低さ
明確な戦略の欠如
イノベーションの進め方がわからない
ハイス氏が挙げた「15のイノベーションの壁」は、多くの企業が直面している普遍的な課題です。特に、技術的な制約よりも「組織文化」や「意思決定のプロセス」など、ソフトに起因するものが大きな問題となっています。
しかし、これらの壁を乗り越えるための戦略も存在します。次のセクションでは、イノベーションを成功させるための具体的な戦略について、詳しく解説されました。
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15の壁を攻略し、イノベーションを成功させるための戦略
詳細は書籍"Breaking Innovation Barriers"にて
上司のアジェンダを理解する
イノベーションのアンバサダーを育成する
組織のサイロを超えてイノベーションを起こす
優れたチームを編成する
実験を行い、リアルなデータを使ってビジネスケースをサポートする
自らが素晴らしいイノベーターの模範となる
イノベーションの「スウィートスポット」を見つける
イノベーションを組織の戦略と適合させる
イノベーションの成功を示し、良い結果が得られることを証明する
一人で全てをやろうとせず、オープンイノベーションを活用する
顧客中心であること
リスクを減らすために、実証済みの方法論を適用する
導入するコンセプトへの顧客のコミットメントを証明する
ビジネスケースを構築し、会社にとっての価値を明確にする
自分のストーリーを語るスキルを持つ
本日のフォーカス:12番目の「リスクを減らすために実証済みの方法論を適用する」
ハイス氏は、本日の講演の中で 「リスクを減らすために実証済みの方法論を適用する」 という戦略の重要性を特に強調しました。これは、企業がイノベーションを推進する際に直面する最大の障壁の一つである 「不確実性」 を克服し、経営層の支持を得るために不可欠な要素です。
なぜ実証済みの方法論が重要なのか?
多くの企業において、イノベーションの試みは 「前例がない」「成功する保証がない」 という理由で拒否されがちです。経営層や意思決定者は、成功の確率が不明確なプロジェクトに投資することをためらう傾向があります。
そこで、すでに実績があり、再現性が確認されている方法論を活用することで、リスクを最小化し、イノベーションの成功確率を高めることができる のです。
実証済みの方法論としてのFORTHイノベーションメソッド
ハイス氏が開発した FORTHイノベーションメソッド は、世界中の企業や組織で数多くの成功事例を生み出してきた 「実証済みの方法論」 の一つです。このメソッドを採用することで、以下のような効果が期待できます。
組織のサイロ化を打破し、関係者を巻き込みながらイノベーションを推進することが可能
15週間という短期間で、新規事業の明確なコンセプトを生み出し、経営層に提案できる
各ステップが明確に定義されているため、場当たり的な進め方ではなく、計画的に実行できる
FORTHメソッドの成功事例
ハイス氏によると、FORTHメソッドをフルに活用した場合、新規事業やイノベーションプロジェクトの承認率が大幅に向上する ことが、研究や実績を通じて明らかになっています。
例えば、従来のイノベーションプロセスでは、市場に投入される新規事業の成功率は 約37.5% に留まるのに対し、FORTHメソッドを適用した場合、約77% まで向上するというデータが報告されています。
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つまり、FORTHメソッドを活用することで、イノベーションの成功確率をほぼ2倍にすることができる ということです。
AI時代における実証済みの方法論の役割
AI技術の進化により、今や企業は 数万のアイデアを自動生成することも可能 です。しかし、そのアイデアを実行可能な形に落とし込み、成功確率を高めるためには、依然として「実証済みの方法論」が不可欠 です。
ハイス氏は次のように述べました。
「AIはイノベーションの副操縦士にはなれるが、操縦士は常に人間である」
つまり、AIが提供する無数のデータやアイデアを、実行可能な戦略へと導く役割を担うのは、人間であり、そのための実証済みのプロセスが必要不可欠 だということです。
結論
FORTHメソッドのような 実証済みの方法論を適用することによって、イノベーションの不確実性を減らし、組織のリスク許容度を高めることができる。これにより、経営層の支持を得やすくなり、新規事業の成功確率が向上する というのが、本日の講演の大きなポイントでした。
質疑応答
Q: 「保守的な組織を巻き込むにはどうすればよいですか?」
A: まず、身近な味方を増やすことから始めるとよいでしょう。自分と同じレベル、もしくは少し上のレベルの人から巻き込み、その後、少しずつ影響力を広げていくことが重要です。
最初は非公式に、自然な形で話し合い、徐々に仲間を増やしていきましょう。
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クロージング
FORTHイノベーションメソッドは、イノベーションを単なる思いつきではなく、「実行可能なプロセス」に変える方法論 です。本日のウェビナーで、その一端をご理解いただけたのではないでしょうか?
次々と降りかかる「NO」を、1つずつ「YES」に変えていくイノベーターを目指すならば、FORTHメソッドの公認ファシリテーターになることが最短の近道です。
Gijs氏はそれを「イノベーション・ダルマ」と例えて、紹介しました。
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本年5月には、その養成講座を開催予定ですので、お見逃しなきよう、ご参加ください(次がいつになるか、未定ですので・・・)。
最後に、本日ご参加の皆様には 「イノベーションを阻む15の壁」 に関する無料レポートを配布いたします。明日以降、録画配信も予定していますので、今回は都合がよくなかった上司や先輩、同僚にもオススメしてくださいね。
本日はご参加いただき、誠にありがとうございました!
(BMIA常務理事 山本伸)
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