ピンチはチャンス?!
インプロに「ピンチチャンスゲーム」というゲームがあります。(私たちは、わかりやすく「社長ゲーム」と呼んだりしています。)
数人でチームをつくり、そのなかのひとりが「社長役」になります。他のメンバーはその会社の社員役です。
社員は代わる代わる社長に問題を報告します。
「社長大変です!○○○」
○○○は、社員が考えた「問題」です。この問題は、どんなことでもOK。現実にはありえないことでも大丈夫。「幽霊出ました!」とか「天井に大きな穴が空いた」とか「仕入れた食材が全部ねずみに変わっちゃった」などなど…。
問題の報告を受けた社長はすぐさま答えます。
「それはちょうどいい!」
そして、その問題を解決する! のではなく、(そうなんです。ここが重要なポイント!)決して、解決するのではなく、その問題を活かしたアイデアを出します。
「それはちょうどいい! 幽霊にも働いてもらおう」
「それはちょうどいい! 空を見上げて一息つこう」
「それはちょうどいい! ねずみ料理を開発しよう」
すると、社員一同大きな拍手をして言います。
「さすが、社長!!!」
というのが一連の流れです。
ここで重要なポイントは、問題を報告された社長は、即座に「それはちょうどいい!」と口から出してしまうこと。
なんのアイデアもないのに、「それはちょうどいい!」なんて言えない。
「それはちょうどいい」なんてまったく思ってないのに、そんなこと言えない。
そうです。そのとおりです。でも、言うのです。「それはちょうどいい!」提示された問題に、Yes! と答えるのです。
不思議なことに、「それはちょうどいい!」と言ってしまうと、何か次に言わなきゃいけない、という強迫観念からか、何かが口をついて出てきます。そうです。これがAnd(相手の出したアイデアを否定せず、自分のアイデアを加える)です。
それがどんなアイデアであっても、全く問題なし! 社員は全員口を揃えて「さすが、社長!!!」と称えてくれます。(そういうルールですからね。)
ポイントは、その問題が起こった状況を映像として目の前にありありと思い浮かべることです。イメージしてみるということです。
発想を広げて、未来の選択肢を増やす
さて、このゲームをいろんなところでみんなでやってみると、ついつい私たちが陥りがちな罠があることに気づきます。
「社長、大変です。社員が全員辞めてしまいました!」
「それはちょうどいい。リストラしようと思っていたところだったんだ。」
これは、ピンチをチャンスにしているでしょうか?
このゲームの目的は、目の前で起きている事象を「チャンス」として捉え、それを活用するトレーニングです。
「〜しようと思ってたんだ」って、すっぱいブドウっぽくないですか? 過去のことに目が向いています。
一見ピンチに見えることを「チャンス」に変えて、未来の選択肢を増やしていこうとするときに、これはもったいないです。
インプロって何でもあり、と思いがちですが、大前提として「Yes, And」があり、ゲームひとつ一つにルールがあります。このルールが、逆説的ですが、発想を広げる手助けしてくれると感じます。
「社長、大変です! この世からインプロがなくなってしまいました!」
「それはちょうどいい! これから広めていこうではないか!!!」
(文責:片岡峰子)
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