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立憲民主党は今こそ、政権担当能力を愚直に高めるべき

立憲民主党が大きく議席を伸ばしたが、このままでは政権担当することはできないだろう。長年の「反安倍」の反動から、残念ながら政権担当能力が大きく損なわれてしまった。反対することが存在意義になってしまったためだ。立憲民主党の代表選挙で争った吉田はるみが、当選確実を決めた際のインタビューで「アベノミクスに対する反対」を言っていたが、そういうポジショニングをしつづけるのでは、本当に不安だ。

これから、とにかく政権担当能力を高める必要がある。そのためには、国会における対自民党という対立軸とは別に、政府に対する接し方を変えるべきだと思う。これはなかなか難しい。自民党総裁=内閣総理大臣である現在、自民党批判はそのまま政府批判である。しかし、政府という行政組織の内実の大部分には、霞が関の巨大な官僚組織がある。自民党を否定するあまり、それまでの行政の否定まで行っては、立ち行かない。

文化庁の日本遺産というプロジェクトに、以前はかなり深く、今は軽く関わっている立場からすると、このプロジェクトが政権交代によってガラリと方針転換するのは、やめてほしい。これは既得権益というものではなく(大金はもらっていない)、何十年もかけて取り組む文化財行政について、政権交代によって方針がコロコロかわってしまっては、出せる成果も出せなくなってしまうからだ。

日本遺産は、文化財を保存から活用へと転換する象徴的なプロジェクトである。この「保存から活用」という文脈が維持されるのであれば、もちろん日本遺産プロジェクトの転換もあってもよいかもしれない。しかし今の立憲民主党のスタンスは、そういう文脈を理解しないまま、否定しかねないように思う。それは、密かに尊敬する野田さんが代表であっても、だ。

政権担当能力を高めるためには、まず霞が関との信頼関係を再構築する必要があるだろう。現状であれば、立憲民主党と情報共有をすると、それで足をすくわれかねないリスクが先立つ。彼らが探しているのは、自民党を批判するネタである。そしてそれは、行政府にとっても痛くもない腹を探られるようなものだ。

野田代表が立憲民主党の代表戦で、外交・安全保障の領域で政策の継続性を重視する姿勢を強調していたのはよいシグナルだったものの、実際に今回の選挙では、「現行の安保法制については、立憲主義および憲法の平和主義に基づき、違憲部分を廃止する」と書かれており、結局、立憲民主党内での意見調整が十分になされなかった、説得しきれなかった部分が見え隠れしている。「違憲部分を廃止」というのはすなわち、集団的自衛権の行使である。この緊迫する国際情勢の中で、廃止するという話が通用するとでも思っているのだろうか。

蓮舫の都知事選敗北から、ようやく立憲共産党の共闘体制からの方向転換が行われたばかりであり、立憲民主党内はまだまだ、空想的な議論が残っているのだろう。今回の自民党の敗北は、むしろ立憲民主党にその本気度を問うことになったように思う。

小山龍介
BMIA総合研究所 所長
名古屋商科大学ビジネススクール 教授
京都芸術大学 非常勤講師

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