サステナブル・ビジネスモデルキャンバスの活用
昨日は、サステナブルな事業に取り組むためのプログラムの中で、サステナブル・ビジネスモデルキャンバスを使ったワークショップを提供した。これは、一般的なビジネスモデルキャンバスのボトムラインが、収益の流れとコスト構造になっているのに対して、さらにその下に、社会的、環境上のベネフィットとコストを記述するものになっている。
ビジネスモデルキャンバスの使い方を理解するために、いつもコンビニエンスストアをテーマに取り組むが、今回はさらに、コンビニがどのような社会的、環境上のベネフィット、コストを出しているのかという議論を加えた。これがなかなか興味深かった。
この作業をやる前に、キリンの晴れ風アクションの事例を紹介した。ビールなどのアルコールを飲むとゴミが出たり、それを放置したりすることで、環境に負荷がかかる。環境意識の高い人たちの中には、そうしたアルコールにまつわる問題があって敬遠される。そうした中でキリンは、晴れ風を発売するにあたって、その売上の一部を日本の風物詩である花火大会などへ寄付することにした。ビールを飲むことが、日本の原風景の維持につながるというポジティブな転換である。
コスト問題であったものを、ベネフィットに転換するこの取り組みは、好意的に受け入れられ、(それだけが理由ではないものの)晴れ風は空前のヒットとなった。これからの時代においては、このような社会的な負荷、環境上の負荷を減らすようなアクションもまた、重要な価値提案になるのである。
翻って、コンビニはどうだろうか。24時間の過酷な労働環境や、夜煌々と灯される電気のエネルギー問題、食品廃棄問題などさまざまな問題を抱えている。それが大きな問題として、まだ意識はされていないように思うが、これからこうした問題への向き合い方が、コンビニ選択にも影響を与えてくるだろう。
一方、コンビニがもたらしているベネフィットもある。生活インフラとして重要な役割を果たしているし、夜の安全性を高める存在でもある。昨今、外国人労働者も多く働いているが、そうした人たちの就労機会を提供する場所でもあろう。夜の光は、エネルギー問題でもあるが、一方で治安にはプラスの効果を与えているのだ。その点を強調することは、地域がコンビニを受け入れ続けるためにも、重要なポイントになっていこう。
ワークショップにはさまざまな業種の人たちが参加しており、お互いのビジネスモデルとサステナビリティについてヒアリングを行うペアワークを行った。どの業種も社会的、環境上の課題があり、そこについて十分意識されていなかったということを自覚することになった。
今後、サステナブル・ビジネスモデルキャンバスの活用が標準となっていく時代が来ることを予感させるワークショップだった。
小山龍介
BMIA総合研究所 所長
名古屋商科大学ビジネススクール 教授
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