アイデアの良し悪しをジャッジしない_Yes,And
とかくふだん、私たちは「効率」を重視してませんか? 効率を重視するからこそ、一石二鳥的なことを探したり、二度手間にならないように工夫したりします。時間は貴重な財産ですから、当たり前のことです。いかに早く、間違いなくできるかということを最大限優先して仕事を進めています。
ところが、インプロの場面では、効率の最大の敵「問題」が重要な役割を果たします。インプロでは、「問題」が、キラキラのプレゼントなのです。喉から手が出るほど欲しいもの、という扱いをします。
どんな物語も、起承転結、山場がありますよね。少年は旅に出て、強大な敵と戦って成長して、勝利してヒーローとなり凱旋する。敵や問題がなく、これがあって、あれがあって、そのあとこうして、こうなった、というできごとが単に平坦に時系列に並んでいるだけでは、まったくおもしろくない。(そんなものを読まされた日にゃあ、それこそ時間の無駄遣いというもんです。)
しかし、悲しいかな、日々「いかに効率を上げ」「問題なくものごとを進めるか」を無意識のうちにも優先していると、インプロの場面でもこの精神が頭をもたげて来ます。
問題を回避したいし、起こってしまった問題は解決したい。
目の前で、問題が起こったら(クレーム的なご連絡をいただいたときなど)、心のなかで即座に反応しちゃいます。「もう、なんで間違えたんだろう」とか「もう、だからこうやって言ってんじゃん」とか。「そんな言い方せんでもええやん」とか(笑)。
しかし、インプロの場合は違います。
「それはちょうどいい!」
よくぞ、こんなことが起こってくれた! 待ってたよ! ありがとう! と喜ぶくらいの心持ちで「Yes」と受け止めます。何しろ「問題」はキラキラのプレゼントですから。
シーンをつくっていて、できごとの羅列になろうとしているとき、それは突然起こったりします。このままいけばハッピーエンドでいけそうだとちょっと先の展開が読めたりすると、だれかが何かを起こしてくれます。
「大変だ! 魚たちが一斉にこちらめがけて攻撃してきた!」
「ぐるぐる回っていたメリーゴーランドはどんどん勢いを増して、とうとう遠心力で地面から抜けてしまった!」
とかとか。
そんなときは、すぐにアイデアが浮かばなくても、次のセリフが用意できなくても、とにかく言っちゃう「それはちょうどいい!」
「問題」をどう活かすか?
魚たちが攻撃してきたら、もう観念してやられてしまう、とか、メリーゴーランドが抜けてできた穴で焚き火するとか(すごい適当に言ってます)、そのことを活かして何かにする、という視点で次を展開していきます。
「それはちょうどいい!」と元気よく声に出して言ってみたら、なんとなく次の言葉が口から出てくるもんです。それがいいアイデアかどうかなんて関係ない。良し悪しをジャッジせずに、それにひたすらに「Yes, And」していくだけ。
何がいいアイデアか、そうでないかなんて、判断できません。次に何が起こるかわからないのですから。
(文責:片岡峰子)
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