あれから4年これからのヘルスケア業界はどうなるか?その①
2018年のビジネスモデルオリンピアにて、『ヘルスケア業界における制度とビジネスモデルの共循環』というテーマで登壇させて頂きました。
ヘルスケア業界のビジネスモデルは医療制度など各種規制の影響を強く受けて変化してきたが、諸外国をお手本に出来なくなった超高齢化社会においては、様々な草の根活動が制度を変化させ、それによりビジネスモデルが変化する『共循環構造』になるというお話をさせて頂きました。
ご興味ありましたら、冒頭の動画をご視聴ください。
あれから4年ヘルスケア業界はどのように変わってきたかシリーズで振り返って行きたいと思います。
諸外国の前例を見事に分析し、複雑に組み上げられた医療・介護保険制度
日本の医療・介護保険制度は、もちろん賛否両論あるが『アクセス』『質』『コスト』のバランスの観点において非常に良く出来ている制度です。
これは、諸外国の膨大な前例を分析し整理する能力と国民の意志つまり空気を読む能力に日本の官僚が長けていたからではないかと考えます。
例えばアメリカは自由診療なのでコストが、非常に高い事が度々話題になります。指5本折ってしまったが、その人が入っている保険で3本までしか治せないという事が現実でおこってしまう。イギリスは、病院が国営で医療費は無料であるが、アクセスが悪く風邪の予約に2週間かかるなどといわれます(しかしながら現実は、風邪で病院にかかるイギリス人はいなくセルフメディケーションが根付いているとのこと)。
どの国の制度が良い悪いではなく、その国がどのような制度を選んでいるかに過ぎないわけですが、その中で日本の、様々な人の受益や歴史的背景を踏まえた現状制度は決して悪いものではないと考えます。
日本の保険制度は、医療保険と介護保険の2階建て構造であると言われます。医療保険制度だけでも複雑なのにそこに介護保険制度が絡んでくる常人では全体を把握できるものではないものとなっています。医療従事者も自分の領域以外の事はわからないといった事も引き起こしているほど複雑です。
また医療介護保険制度とは『アメとムチ』を使って良き方向へ医療介護システムを移行するためのものです。
なので間違えると大変な事になります。急性期病床数が多すぎる問題は、このアメとムチを出すタイミングを間違えたために起こり、医療費を無駄に上げている原因と言われていました。
しかし今のコロナ禍それが功を奏したというのは皮肉である・・・・・いや功を奏していない何故かベッドが足りない状況になっています。
高度経済成長の人口急増を支えるべく発展した医療・介護保険制度は超高齢化社会、コロナ禍による感染爆発どちらにも対応できないものとなっていました。
前例がなくなった日本で起こった変化
超高齢化社会、コロナ禍どちらにも対応できなかったのは何故でしょうか?
そう前例がなかったからです。
膨大な前例を分析・整理し複雑に微妙なバランスで組み上げるのは得意だが前例がなくなった途端思考停止に陥ってしまいます。
今回のコロナ禍でも1年半以上たった今でも対応できないでます(2021年8月現在)。
医療DXは1ミリも前に進んでいるように見えません。
これは日本の官僚だけではなく、日本そのものの特徴とも思えます。
大きな打ち手なしに、ここまで感染者や志望者を抑えてやってきたのは、国民の努力です。
すばらしい事だけれども、改革を遅らせてしまう大きな要因は、日本国民の優秀さと理性の高さかもしれない。
本当に切羽詰まらないとイノベーションは起きないという側面もあるからです。
だから超高齢化社会もコミュニティーの復活といった互助で乗り切れると信じている。
国はまたそれに甘えようとしているという構図も見えてくる。
その②へ続く
理事 國井 誠
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?