子どもの行動には意味がある。もぐし海のこども園が行う理想の保育【保育園留学@天草vol.2】
この度、2023年3月20日(月)から31日(金)まで、保育園留学の仕組みを使って、熊本県天草市の牛深地区に2週間滞在しました。
前回の記事では、天草までの道のりについてご紹介しました。
今回は、この滞在の主たる目的である、天草市牛深にある「もぐし海のこども園」についてご紹介します。
私は、天草という地名のイメージと、海が好きというのと、保育園留学の紹介ページの内容で速攻申し込んだのですが、あとになって、こちらの子ども園が教育業界で知る人ぞ知る子ども園であることをパートナーから聞きました。園長先生が教育系の媒体で執筆を依頼されるなど、業界的にも注目の子ども園とのことです。
■人懐こい子どもたちの熱烈歓迎にびっくり!
もぐし海のこども園の場合、園までマイカー等で自力通園する方法か、園バス利用か、どちらかを選択することができます。
東京で通っている保育園に園バスはないし、これまで短期でお世話になった保育園にも、園バスがあるところはありませんでした。
我が子は乗り物が大好き!ということで、園バスを選択。天草での宿泊先であるゲストハウスから徒歩3分くらいのところにバス停があります。
8時半になると、園バスが到着!大きいバスとワゴンタイプの2種類があり、その日通園する園児の数で、どちらが迎えに来るか決まるようです。初日だけは私も一緒にバスに乗り通園。パートナーはマイカーで園に向かいました。
園について真っ先に目に飛び込んできたのは、土の上で思い思いに遊ぶ元気な子どもたちの姿です。もぐし海のこども園の庭には、いわゆる「遊具」が一切ありません。どろんこの土、そこに生えている木、鳥やうさぎがいる飼育小屋、様々な木材などが主な遊び相手です。これは、畑と森が遊び相手だった私自身が育った環境と非常に似ていて、懐かしさすら感じました。
そして、その庭を自由に走り回る子どもたち!
本当に自由で楽しそう。そしてとにかく元気で人懐こい。
初対面の私たちに対して、
「ねー、僕すっごく早く走るから見て!!」
「あっちにうさぎがいるんだよ!」
「(泥を入れたバケツを持ってきて)今、ご飯作ってるの!」
という感じであっという間に子どもたちが群がり、挙句その手で私の顔や髪を触ってくる(笑)
うちの息子は比較的、我我が道を一人で行くタイプの子なんですが、この勢いに飲まれたのか、何となく園庭に向かい、すぐに木材で土遊びをはじめました。それっきり、親の方を振り返ることもなく、安心して我々は帰宅。そんな感じで、初日から園に馴染むことが出来ました。
■東京の子どもが2週間でどう変わるか
「東京の子ども」と言っても、我が子は厚沢部や西会津の保育園を経験済みですし、私の実家に連れて行けば、畑で泥まみれで遊びますし、いわゆる「東京の子ども」とは少し違うかもしれません。それでも、ベースはやっぱり、園庭もない東京の保育園で育ち、土のない公園で遊ぶ都心の子どもです。
当初は、他の子どもたちが裸足になって泥遊びしても、息子は靴を脱ぎたがらなかったり、人口のおもちゃが多い東京の園自慢をしたりしていたそうです。しかし、2週間目には裸足でぬかるみに入って泥だんごを作るようになったそうです。
また、最終日にこっそり息子の様子を見に園に見学に行ったのですが、他の子どもたちと仲良くうさぎを見たり、木で何かを組み立てたりしていました。こういう様子を見れるのは新鮮です。
■どろんこ遊びは午前中! その理由とは。
保育園は、午前中は思いっきり園庭で遊び、昼食とお昼寝のあとは室内で遊ぶ、というスタイルになっていました。
これは、午前中にどろんこになった服を、お昼寝中に先生方が洗濯して、降園の際に各家庭に戻しているからだそうです。以前は午後も自由に遊ばせていたらしいですが、親が大変ということで、基本午前中が外遊びの時間にしたとのこと。どろんこのお洋服は、先生方が洗濯板で洗った上で、園庭にある洗濯機でざっくり洗って各家庭に返却するそうです。すごい!
■自分で抜いた大根を自分で料理して食べる
お庭の他にも、近所をお散歩したり、園バスでお出かけしたり、海まで行ったり、園のそばの畑で野菜を育てて収穫したりするそうです。
私たちの滞在中も、近所にある畑に行って大根掘りをしていました。息子も自分で大根を抜いたそうです。息子は大根の煮物が大好きで、すぐに食べたいとねだるので、初めてキッチンに二人で立って、息子が抜いた大根を二人で押さえて皮をむき、包丁でカットして、お鍋に入れて、ぐつぐつ煮込みました。元々料理中に様子を見たりおままごとが大好きな息子は、とっても満足そうに自分で料理した大根を食べていました(半日で大根1/2本食べました・笑)
■もぐし海のこども園の教育方針と保育の魅力
最終日、園の先生方や園長先生とじっくりお話する時間をいただきました。園には約60年の歴史がありますが、いまの教育方針になったのはここ20年くらいだそうです。
先生が言うには、今の園長先生のお父様の代の時に、園の教育方針について考える機会があったそうです。そして、すでに先進的な教育を行っていた福井県若狭町の園を見学して、そこで感銘を受けて、園の方針を作って行ったそうです。
その根底には、「子どもの行動にはすべて意味がある」という考え方があるそうです。大人から見たらよくわからない遊びでも、子ども本人には本人のストーリーや考えがある。だからそれを、できるだけ阻害しないで子どもたちの「やりたい!」を優先するというのが、もぐし海の子ども園の方針です。
元々は園庭にあった遊具を取り除いたり、敷地内にあった小屋を壊して園庭を広げたのも、この発想から。遊び方が決まっている遊具ではなく、泥や木材などを自由に使って、子どもたちが好きなように遊ぶんだそうです。
例えばこの“おうち”。
これは、園にある木材を使って子どもたちが自由に組み立てているんだそうです。で、たまに立派な家が出来ると、「ここでお昼ごはんを食べたい!」という子どもがいるそうです。そういう時は、子どもの希望を聞いて、外でお昼ごはんを食べるんだそうです。
これは本当に素晴らしいと思いました。管理の面だけ考えたら、イレギュラーな対応は手間です。にも関わらず、子どもの「やりたい!」を優先してくれるというのは、親としてありがたいというか、尊敬の領域です。
厚沢部の子ども園「はぜる」も、園の畑で野菜を収穫した後に、突然子どもたちが「料理をしたい!」と言ったら、予定になくてもお料理会を開催していました。二つの園に共通する「子ども中心の保育」に、つくづく感動しました。
とはいえ、最初は先生たちも戸惑いの連続だったそうです。例えば、もぐしでは、雨の日でも外で遊びたい子は園庭で泥まみれになって遊びます。でも、最初の頃は、「雨に濡れていいの?」「風邪をひいちゃったらどうしよう」という葛藤があったそう。そういった「これ、どうする?」をちょっとずつ積み重ねて、今のもぐし園ができて行ったそうです。
若い頃は天草を離れて某大手CDショップチェーンで働き、保育への思いからUターンして3代目に就任した園長先生は、こうおっしゃっていました。
「音楽も当然クリエイティブですが、子どもたちは毎日新しいものを生み出すんです。それを見守っているのが本当に嬉しいし、感動の連続なんです。“子は宝”って言いますが、そんな言葉では言い表せないくらい、毎日素晴らしいことの連続です。」
こんな素晴らしい環境、子どものためにならないわけがないじゃないですか。我が家は、また必ずもぐしに行きます。
もぐし海のこども園のみなさま、本当にありがとうございます。