Pacificaの選び方(2023/11現在)

修理人として、またギター弾けるように修業中ですが、ヤマハのPacificaシリーズの選び方を、初心者の観点から、今回はお話しようかなと思います。

プロだと癖がでる

プロとか、いろんなミュージシャン、ギタリストとかが、いろいろおすすめのギターを紹介していますが、やっぱりその人の演奏スタイルに合ってるギターなんかを勧めてることが多いです。
なのでその人が勧めてて買ってみたら癖が強すぎて・・・なんてこともあるようです。(初心者だとなおさらそれってきっついですよね)
実はお店さんもそのあたりは充分承知しているようで、デジマート(リットーミュージック)なんかは、youtubeで「YAMAHA PACIFICA600 Series x 〇〇」シリーズと称して、いろんなスタジオミュージシャン、ギタリストがPacificaを試している映像がでてきています。
(色んな人がある程度忖度とはいえこうやって試して一言言うって結構参考になったりするものです)
癖ってやっぱり十人十色、百人百様なので、なかなか合うってないものです。
わたしがヤマハを気に入っているのはそれを十分見越した上で「すべての人に音楽を」を実際に体現していることなんですね。

実は0シリーズも案外勧められる

日本では島村楽器オンライン専売品になっている0シリーズ(012)ですが、使ってる木材が安い(ボディがアガチス材:壁板やフローリング、将棋盤にも使われるもので、とにかく安価に手に入ります)、コイルタップ機能がないこと以外はほぼ100シリーズと変わりません。
私も少し古い(島村が扱う以前の)タイプを持ってますが、意外に音は悪くはないです。安物によくある、指板からフレットが飛び出るなんてこともありませんし、「コイルタップなんてつかわねーよ」って人だったら、ノイズ特性も全然問題ないのでいいと思います。

Pacicficaは予算次第

基本的に、これはよくいわれることですが、Pacifica(シグネーチャーモデルである1611は別格なので除外)は上位モデルになればなるほどコスパが非常に高く、一般的なメーカーにありがちな「高級モデルほど腕を求められる」ということもほぼないと思っていいでしょう。
ちなみに、ヴィンテージでも人気のフェンダーマスタングは、本来はスチューデントモデル、つまりフェンダーでも下位モデルなので、初心者でも大丈夫な上に奥が深いのですが、どちらかというと音の軽さが身上なので、マスタングだとちょっと音が軽すぎる、と考える人や万能タイプを考えるならこっちかなーって感じですね。
上位モデルじゃなきゃステージで使えないって話でも無いですし、600シリーズならアーティストやスタジオミュージシャンもお墨付きだったりするので、長く付き合うにはいいと思います。

無論ヤマハもPacificaより腕を求められるエレキがヴィンテージを含め結構あり、たとえばSRとか、現行だとSG、REVSTARの上位モデルなど、ある意味突き詰めだすときりが無いのですが、Pacificaはそういう意味でも懐が深く、長く付き合えるギターだと思います。
※実はヤマハの現行エレキギターでストラトキャスタータイプはPacificaに統一されているので、Pacificaの上位モデルはヤマハのストラトキャスタータイプのフラッグシップと思っていただいても大丈夫だと思います。
ちなみにレスポールタイプの系統はRevstarとSGとなっていて、SGがフラッグシップモデル、その下にRevstarがありますが、Revstarも上位から下位まで幅が広く、3つのカテゴリー(プロフェッショナル、スタンダード、エレメント)に分かれています。この他にセミアコのSAがあります。

流石にステータス性ではフェンダーやギブソン、エピフォンには負けるかもしれませんが、「楽器は演奏できてナンボ」という故寺内タケシ氏の言葉もあります。名よりも実を取った感があって私は好きです。

基準は100系か600系

ヤマハのホームページを見ても、商品説明がそういう説明になってます。
200系は100系に豪華オプションをつけた感じ、300系は600系から装備を廉価版にした感じになってます。
※ちなみに0系は100系を更に廉価版にした感じです。

600系は、ヤマハの考える「本体につけられるオプション全部のせ」といったところですか。とにかく中身が豪華な割に値段が安い。
そもそもウィルキンソンブリッジ、TASQ(人工象牙)のナット、セイモア・ダンカンのピックアップ・・・(611HFMはウィルキンソンブリッジがない代わりにグラフテックのストリングセイバーがついている)。
これだけのパーツだけでも全部揃えると個人で買ったら3,4万は少なくとも飛びます。

つまり、この100系/600系を基準としてどう買うか、ということになります。
単純に数字が上なほど上位機種、というわけではなく、基本コンセプトからどうしているのか、ということになってますね。
上位のコンセプトなら600基準、コストを押さえた基準なら100、と言ったところです。

Pacifica300は600の廉価モデル

多少仕様が違ってきますが(611HFM以外の600シリーズは弦間が少し広くなる)、基本的に600の仕様を廉価版にしたものが300になります。
ナットのTUSQ、P90ピックアップは同じですが、それ以外のピックアップ、ブリッジ、塗装が廉価版になってます。
600シリーズだと高級すぎて・・・って人にはおすすめです。

Pacifica200は100の高級モデル

今の212は、112のボディのトップとヘッドの部分に高級材を合わせたもので、それ以外の仕様は同じです。
100シリーズでいいけど、なんか見栄えが安っぽすぎる・・って人には200シリーズと言う手があります。

例外が有る(Pacifica120H、Pacifica112JL)

実は、このPacificaには例外があります。
それが見出しの2機種で、2ハムのハードテイルなら120H、レフティモデルなら112JL、といった感じです。
それぞれPacificaのシリーズ内で1モデルしかない個性的モデルなので、利き腕の関係でレフティモデルを探していたり、ちょっと個性的な音を目指すならこれってのもありかもしれません。
(120Hは音的に上位機種は311や611HFMですが、611のピックアップはシングル(P90)+ハムバッカーなのでちょっと微妙に違う感じです。下位モデルに近いといえば近いのですが・・・)

※P90の特性としては、シングルとハムバッカーの中間からちょいハムバッカー寄り、といった感じです。

中古での市場価値(ネット)

意外と0/100系が高めで、0系は大体1万円弱~1万円台前半(新品の約半値)、100シリーズは、大体2万円台が多いです(新品が実売3万ちょいなので高い)。このあたりは1万切ってたら買いです(特に112V)。
200系が未使用ほぼ新品が4万円台、中古が1~3万円台ということを考えると少し高い気がします。それだけ人気かもしれません。
300系はなかなか店の通販で見かけませんが、中古市場ではそれなりにはあります。とはいえ元々「300買うなら奮発して600」という傾向なのか、どっちかというと600の方が市場に出てますし、300の中古価格が結構安いです。
600だと、私が今持ってるHFM(トレモロがないハードブリッジ、その代わりグラフテックのString Saverがついている)が最安値。4万弱~5万円台が多く、VFMだと5~7万程度(中古と新品の差があまりない状態)。
VFMのぼっちちゃんレプリカ(個人か業者改造品)だと値段がかなりつり上がってます(正直内部仕様は同じなのでそこまでする必要はぼっちちゃんマニア以外そうそうないかと)。中の人はエピフォンですしねw

で、実は中古屋でもPacificaはかなり人気で、300シリーズ以下は並べたらすぐ売れるようです。600クラスになると少し値段が上がるので、だったら新品かなぁ・・・っていう感じになるはずですが、それでもやっぱり売れてるみたいです。どこにいっても品薄ですね。現物があれば超ラッキーな方です。

まとめ

こうしてみてみると、価格から考えると、300や600シリーズのほうがある意味お得感があります(特に611HFM)。こと112あたりから612同等スペックまで(ボディを除いて)あげようとすると、手間考えたら612のほうがやっぱりお得感がありますね。
他記事でも書いていますが、611HFMとVFMの違いはトレモロがついてないハードブリッジか、トレモロブリッジ(そしてそれに伴う弦間)の違いです。トレモロの変わりは完璧にとはいいませんが、ワウとワーミーで代用はできるので、太い割にちょっと歯切れのいいHFMも、私はありだと思ってます(実際私も気に入ってます)。トレモロアームはそんなに使わないって人も結構居ますから、ハードテイルでも全然問題はないと思います。
初心者が高いモデルとかどうなのよ・・・という人もおみえになりますが、ヤマハのPacificaに限って言うなら「予算にもよるが初心者でも買えるならハイエンドのほうがおすすめ」です。

追記

あくまで私の個人的な話ですが・・・
実は海外のyoutuberがpacifica112や212と012を比較している動画があります。
実際に弾いてチェックしてますが、正直思ったよりあまり違いがでません。
微妙に112や212のほうが音が明瞭かなぁ・・・程度で、ほとんどアンプやエフェクターなどで充分カバーできるレベルです。
新品なら、私は(色にこだわらなければ)100シリーズか600シリーズに行きます。112Vや611/612VFMなどですね。
軽快な音を望むなら112/612、太めの音がいいなら611VFMと言った具合ですか。
これが中古になると微妙に話が違います。
同じ611でもHFMのほうが音がシャキっとしてますが、意外に人気がなく、中古価格も安めなので狙い目です(私もそれで買いましたが、最安値とおもいますが38000円でした。実際そこから修理をしてますが、それでみても5万は切りますから確実に安いです、実際VFMは中古でも5万は絶対に切りません)。VFMとの大きな違いは弦間とトレモロのある無しですが、アーミングはある程度ならペダル(ワウやワーミー)で代用出来るので、HFMでも全然問題はないと思います。
612も、中古価格はかなり高いので、可能であれば新品がベスト。予算がギリアウト、というギリギリの状況とかであれば中古やむなし、と考えるほうがいいでしょう。
また、コイルタップでハムバッカーをシングルコイル化出来るとは言っても、完全にストラトキャスター的なシングルコイルになるのかというとそうでもないらしいので、611/311とかでないかぎりあまりコイルタップを使わない人が多いそうです。
それを考えると、中古で1万円前後の012でも全然問題ないと思います。
また、3シリーズなどが最安1万円台なので、312を狙うというのもアリですね(程度にもよりますけど)。
リードギターならともかく、バッキングなら性能的には012で全然いけちゃう感じですし、修理屋などでも比較的良心的に対応いただけるものでは有るので、コスパや中古の程度をみて決めるのがいいでしょう。
どの価格帯でも使い倒せばかなりいい線まで行けるのが、パシフィカの利点でもあり悩ましいところだと思います。
海外でも、コスパが良すぎて、案外フェンダーやギブソンにも負けない裏人気を誇るのがパシフィカのようで、評価の動画などでもかなり高い評価がでています。

余談

あと、現行のシリーズ以前に700系、900系が存在していて、721(HSH
配列のもの)、フロイトローズっぽいブリッジ(Rockin'Magic)を採用していた912j/921j、指板がメイプルの912Mなんてのもあったようです。
※ちなみに一番最初にでたモデルが900系です
Rockin'Magic系のブリッジは補修パーツが無いに等しいので、中古で買う人はちょっと覚悟が必要ですので注意しましょう。

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