Amazonの配送トラブルに付いて考える(2)コスト・ペナルティ編
アマゾンフレックスのCMなどで、気軽に始められるイメージがあってか、「アプリで簡単登録で、だからいい加減なやつが多い」って言われることがありますが、実は世の中そんなに甘くはありません。もっと(ある意味)ヤバい話です。
今回は、それについて説明していきます。
わかりやすくするために、今回は一般的な運送会社と比較しながら解説しましょう。
運送会社の場合
運送会社のトラックは基本会社持ち
まぁ当たり前といえば当たり前ですが、運送会社のトラックは、ドライバーのものではなく、会社所有のものです。
ですから、ドライバーがトラックの代金を負担することは当然ありません。
維持、たとえば燃料費、オイル交換(及びそれに付随する交換作業や部品)料金、保険代、そして車検代などは全て当然会社持ちです。
※小さい会社や、一部の会社では、交換作業はドライバーが行うルールになってるところもありますが、基本的には整備工場を持っていたり、契約しているガソリンスタンドやタイヤ屋などで交換がほとんどでしょう。
整備や車検についても車メーカーのサービス工場だったり自社の車検センターなりでやるところが多いです。
事故の負担は会社によってまちまち
これは運送会社の正社員でも頭の悪い方は思いっきり勘違いしてるケースがおおいのですが、一般車両の任意保険の契約は1対1の個別契約になっているはずですが、運送会社の場合は会社単位になってる場合もあります。ですから(よくそのついでに)社員の自家用車も。。なんてポスターが会社に貼ってあることがあります。
団体単位での加入ですから(個別契約ではないので)任意保険証が車の中にはありません。会社に報告することで代理店に連絡が入り、代理店の方で処理するからです。(無論どのナンバーの車が入っているかは保険会社も把握してないといけないので各車両のナンバーの登録はしてあります)
また中小だと所属している配送組合で加入できるケースもあります。
大きな会社だと結構バラバラで、団体加入しているケースもあれば(免責いくら、と言われたら加入している)、“現金で払った方が安くつく”という理由で加入してない、というなかなか大胆な会社もあります。そりゃまあある意味合理的ではあるんですが。。。
※物損ならいいんですが人身になった場合どうなるんでしょうね?こと中継(運行)は重大事故が目立つので、その補償をどうするのか気になります。
これを理解してる正社員は案外少なくて、役職クラスでもわかってない人結構いたりします。無事故無違反社員は(無違反を続けることで「あの会社捕まってるよ・・」というイメージダウンをしなかったこともありますし)事故をしないことで保険料(や賠償額)の経費節約に寄与しているのもあるので、よく勤続年数と同様に表彰されることがあるのはそういう事もあってのことです。
ちなみに余談ですが、ドライバー派遣の場合は、契約上の問題で、派遣会社の乗る車の個別に(乗る車を決めて)その車にのみ保険がかけてあります。ですから車検とか故障とか事故になるとややこしい話になります。
運送会社はOLTや座学など研修もあるし試験もある
運送会社の場合、たとえ他社からの移籍組、経験者であっても、会社のやり方やコースを理解してもらうために、必ず正社員が横乗りしてOJTをやったりしますし、定期的な座学もあります。ドライバー派遣の場合は会社によりますが(基本は行います)、傭車については傭車の会社側で行うことになります。
(ですからやらないケースもありますがそれはまた別の機会に)
荷物破損によるペナルティは会社による
荷物を運送中の破損、配送時の誤配(すぐに回収できて無事に届けられた場合はセーフなことが多い)、クレーム(対応が悪い、時間指定の時間に間に合ってないなど)については、ペナルティが課されることがあります。
ケース・バイ・ケースではありますが(モンスターカスタマーもいますので)、こと運送中の破損に関しては、”破損させた場所”、”その時荷扱いしていた人間””顧客側のルール”でペナルティは変わってきます。
追加発送をお願いし返却で箱替えして済むケースもありますが、買い取り、つまり全額賠償というケースもあります。
賠償の場合、これも会社によって異なり、全額関与した人間の買い取り(何らかの形で給与天引きや、配送先と相談してその場で現金支払い)というケースもあれば、免責額を設定し免責額以上は会社で支払うケースもあれば、損害額の何割かを関与した人間で負担し、残りを会社で支払う場合もあります。
そのため、会社によっては、(特にお菓子や生活に使えるものなどは)会社側で破損買い取りした商品(の無事なもの)を社員向けに安く販売しているケースもあります。
お菓子などは箱が破損して受け取ってもらえなかった場合でも、(複数単位で箱に入っていますし製品自体に影響が出てない場合もあるので)無事なケースも結構あったりします。
Amazonの場合
そもそも運送契約が違う
Amazonフレックスは、あくまでそのシステムの名前です。
というのも、Amazon自体は「一般貨物自動車運送事業」の許可を取っていません。つまりあくまで「荷主」であって、運送会社という形式ではありません。
じゃあ配送を担当しているドライバーはどういう扱いかというと、「個人事業主」になります。荷主であるAmazonが、個人事業主ドライバーにルールをもって配送をお願いする、いわゆる業務委託契約という形です。このあたりはUberEatsもそうですね。使用する車両が違うだけで基本的なところは同じのはずです。ですからカスタマーサポートから出るのは「配送会社に」という表現になるはずです(し実際そう言われている)。
個人事業主それぞれが運送会社という考えですね。
私の個人的感想ですが、上記の「ルールを持って」って結構怪しいんですよね。ある意味グレーゾーンで、それでペナルティなども存在するので、そうなると「一般貨物自動車運送事業」に引っかからんか?とはおもってますが、その辺の定義が結構厳密ではないようなので、うまくかいくぐっているのでしょう。
車取得やその維持費、経費はすべて自分持ち
ドライバーは個人事業主ですから、当然車取得、ナンバー変更(軽自動車の場合黄色ナンバーでは営業運送は原則できないので、営業用の黒ナンバーに変更しないといけません)、保険料(黄ナンバーと黒ナンバーでは保険料率が違います)、ガソリン、オイル、オイルエレメント、タイヤなどの消耗品はもちろん、車検や修理代も全部自分持ちです。
営業報酬からそれを差し引いて初めて利益が明確になります。
事故によっては車が使えませんから当然その間場合によっては完全にお手上げ、無報酬という可能性もあります(事故でペナルティによっては出禁もあり得る)。
座学もOJTもない
当然「荷主」なので、Amazon側は「運送については一通りわかっているもの」として配送をお願いすることになります。
ですから荷主側では座学やOJTはないはずです。
※拠点によってはプロ?の方にアドバイスを頂ける所があるそうですが、当然聞かなければ(もしくは教える必要がなければ)教えてもらえませんし、最初の手順はある程度教えてもらえても、わからないところや間違っているところなんてOJTでもしない限り基本的にクレームが来ないと見つけることは困難なはずです。
逆に言うなら、ド素人がやると場合によってはクレームの嵐になることもあります。
※なので一時期流れてた?AmazonフレックスのCMはちょっとマズくね?と思ってます。
運送業を少しでも経験した人ならわかりますが、地域によって色々癖があります。また配送の仕方、礼儀の基本をわかってない人が多く、そのためにAmazonの評判を大きく落とす原因になっています。
たとえば旧番地と新番地が混在して被っていたりとか(そのために地図ソフトでも位置を正確に把握できてない)、同じ番地内に複数全く別人の家があったりとかで、配送ミスが起きる可能性があります。
これ、私はこういう地域を経験したんでわかるんですけど、地理感がないと本当に混乱します。誤配や住所がわからず未達、なんてことにもなりかねません(未達未配はペナルティ対象だそうです)。未達ともなれば予定通りに配送できてないことになりますのでクレームの原因にもなります。(クレームも状況によってはペナルティ対象と聞いてます)
ネットに書かれているトラブルを色々見ていると・・・
荷物の置き方や場所にについての問題が多く見受けられます。
たとえば、引違いではない戸(アパートやマンションなどの外側に開くドア)の真ん前にベタ付けして置き配してしまうと、内側に人がいた場合ドアが開けられなくなってしまいます。
また前述にもあった同一番地で別の家に配送していたりとか、置き配でも住人の予想外のところに置き配していたりとか、(私が実際経験したものとして)なんと廃オイルの受け皿(しかもオイル残ってた)に置き配していったり(当然油で箱はベッタベタでした)。ぶん投げる、というのはさすがにテレビでもネットでも相当拡散されたのできつく言われてるとは思いますが、とにかく配送が雑なのが目につきます。
あと、配送する人間の態度が非常に悪いのも目立ちます。
あくまで私の予想ですが、CMや報酬に目がくらんで(前述の)初期投資やランニングコストの回収まで頭が回らず、それでイライラしてるのかもしれませんが、置き配にしても(一度カメラで撮影してましたが)とにかくピンポンダッシュよろしく置き配していく人間が多いです。仮に置き配NGで配送するにしても人当たりが良くない人が本当に多いように思いますね。
Amazon フレックスの欠点はそこに有るように思います。とにかく配送する人間のセンスがないですし、人によってばらつきもひどいですね。礼儀、置き配の置き方一つとっても私に言わせればレベル低いです。
これがヤマトや日本郵便になると、たとえ地べた置き配でも気遣いが全然違います。
ビニール袋に入れて置き配したり、下に敷いて置いてあったり。Amazonはそれはまず皆無です。
ペナルティ
ペナルティについて詳しく調べることはできませんでした。
ただ、私がその立場だった場合のペナルティは容易に予想できます。
もちろん未配(未達)のペナルティは別であると思いますが、返品が発生した場合、これがどこに原因があるかでペナルティは変わってくるでしょう。
たとえば間違って発注したとか、そもそも到着したものが表示と違っていた、とかならそれは配送側の責任ではないので問題はないと思います。
が、これが商品破損、置き配トラブルとかになると、それは配送した人間の責任になりますので、ペナルティ対象になると思われます。
前述の廃オイル受けに置き配された件については、内容物の全額返金になりました。
この場合は明らかに配送員のミスですので、ペナルティとして全額買取扱いで報酬が減額された可能性があります。
過去にありましたが、ある意味配送員が「恫喝」してくるケースもあるので(本人からしたら「俺は会社のルール守ってやってるだけだ!」とは思いますが、それはあくまで「会社の」であって、お客がそれを理解してるかそうでないかは別問題、ということを理解していないといけません)、そうなると出禁ということもありえます。
まぁ言い方は悪いですが、基本「置き配」であれば”バレなきゃOK”ではありますが、バレた場合大問題になりますし、Amazonからすれば代わりはいくらでもいる、ということもあるので、残念ではありますが彼はその地域の配送ができなくなる可能性もあります。そうすれば当然報酬も減るわけです。
あと、ペナルティの可能性として、運転マナーがあります。
基本的にAmazonの配送は、運送会社の看板を出して配送はしてないので(これは佐川やヤマト、その他運送会社の軽配送も同様)、どこの配送か特定しづらいはずなのですが、リアハッチの窓がスモークではない場合などは、荷物が当然丸見えのケースが有り、(Amazonの場合はAmazon独特のガムテープが使われてるので)それで判明することがあります。
結構配送量に対して時間がギリギリ、なんてこともあるので、コンビニの駐車場をショートカットしたりとか、横着な運転も結構あります。
で、それが荷物でバレるとナンバーメモされてクレーム、なんてこともあります。それだとAmazonの信頼失墜にもなりますからね。
これだけでも、かなりAmazonの配送については、「闇」が見えている気がします。