vol.27 トラスホームと「里の豊かな暮らし」をつくる を、編む 〈後編〉
「編む、ブルースタジオ」vol.26・vol.27では、ブルースタジオと地域に根付く福島県郡山市の事業者(トラスホーム株式会社)による、地域ならではの豊かな暮らしづくりについて特集しています。
今回はその〈後編〉として、トラスホームとブルースタジオが手がけた「ロカド香久山」と「里守ひろば」を通し、人とまちの関係性を育む暮らしの「物語」をお届けします。
トラスホームの大家業としての「役割」=「里守・さともり」ならではの、暮らしの「物語」をぜひお楽しみください。
人と、まちのつながりを育む「里の暮らし」
中庭を囲む、まちかどロの字住宅「ロカド香久山」
丘の上、かつての「小原田の里」の原風景が残る香久山・香久池エリアに、「ロカド香久山」はあります。
実は、トラスホームとブルースタジオが共に「里守」の暮らしづくりをするようになったのも、この土地が始まりでした。
この土地を購入した当初、トラスホームを営む古川さんはハウスメーカーで住宅を建てることを考えていたそうですが、これからは“自分たちだからこそできる、小原田の愛着を育む賃貸住宅をつくりたい”と思うようになり、その新たな一歩となる暮らしづくりをブルースタジオと共に創っていきたいと「ロカド香久山」がうまれました。
炉を囲むように、中庭でつながり14世帯の家族が向かい合いながら暮らしている「ロカド香久山」。
緑豊かな中庭は生活者の日常動線でもあるため、入居者同士が挨拶を交わしたり、軒先のベンチでおしゃべりを楽しんだりと自然なコミュニケーションがうまれています。
また、入居者同士だけでなくまちの人々が集う賃貸共同住宅を目指し、ロの字型の配棟の“カド”には、共同住宅のメインエントランスでもあり、まちのポケットパークともなる広場がお出迎え。道ゆく人々が憩いながら関わりを持ち、暮らす人だけでなく地域との共生を育む憩いの場となっています。
気軽にまちの人々が憩い、暮らしを楽しんでもらいたいと、トラスホームではまちに開いたイベントを「ロカド香久山」で行っています。
竣工後すぐの入居希望者向けの交流会では、古川さんご自身がコーヒーを淹れて皆さまをお招き。四季折々の緑豊かな中庭で、会話を楽しみながら温かいコーヒーを嗜む時間。そんなささやかな日常を共有することこそ、まちへの愛着が育まれる暮らしなのかもしれません。
ひとつの「物件」が、暮らす人だけでなくまちの人にとっての「居場所」になる。「ロカド香久山」の由来でもある、「囲炉裏のロ、笑う門にも福来たる、角」という、人と人がつながり幸せを感じられる「小原田の里」の暮らしが、「ロカド香久山」では育まれています。
賃貸居室をまちの人々がつながる共用空間へ「里守ひろば」
築24年の賃貸共同住宅「レジデンス名倉」の賃貸居室一室をリノベージョンし、まちの人々が様々な機能を共用できる空間として生まれ変わった「里守ひろば」は、コワーキングスペースや、キッチン、座敷など、多様な使い方ができる共用空間となっています。
仕事環境、こどもたちの遊び場、おしゃべりの空間、自己表現のための場など、自分の好きなことや時間をまちの人々と共有できる「里守ひろば」では、どんな日常が広がっているのか。
古くから小原田に暮らす人も、新しく暮らす人も、顔馴染みになり好きなことを共有しあい関係性を育んでいく。そんな多世代のまちの人々の交流が、「里守ひろば」からひろがっています。
コロナ禍で中々外に出れず人とのつながりが閉ざされた時期を経験したからこそ、好きな時間をだれかと共有することの大切さに気づかされます。
人と人、人とまちのつながりを育む暮らしこそ、トラスホームが守っていくべき「小原田の里」の暮らしなのかもしれません。
「里守」の暮らしづくりで、愛着を育む「里」へと
地域に根付いたトラスホームだからこそ、まちの豊かな暮らしを届けることができ、その暮らしづくりは地域活性化につながっていく。
トラスホームの「里守」としての暮らしづくりは、第42回東北建築賞、第38回福島県建築文化賞優秀賞を受賞するなど、地域の様々な場で評価されています。
また、トラスホームでは、人と人、人とまちがつながるきっかけとして様々な取り組みを行っています。貸し店舗をリノベーションして新たにつくったトラスホーム株式会社の事務所では、1階部分を「里守カフェ」としてまちに開いたり、古川さんのお父様が集めてこられた美術品を飾る「ちっちゃな美術館 こはらだ日和」では、美術館としてだけでなく、ミニコンサートや講演会、教室などを開き交流を育んでいます。
我々ブルースタジオと共に始まった「里守」としての「小原田の里」の豊かな暮らしづくりは、まちの様々な場で今もトラスホームならではの「物語」として紡がれています。
そしていま、自然豊かな阿武隈川近くにある単身者向け賃貸住宅の改修・バリューアップ工事による、トラスホームとブルースタジオの「小原田の里」の暮らしづくりの新たな「物語」が始まろうとしています。
宅地開発によりいまは失われてしまいましたが、かつてこの辺りには水田が広がり、そのあぜ道では子どもたちや農作業をする人々がふれあい、挨拶を交わす「小原田の里」の豊かな日常がありました。
我々は、当時暮らしていた人々が体験していた日常のように、いまの子どもたちにとっての「小原田の里」の“原体験” をつくる、そんな新たな暮らしづくりを計画中です。
“ここは昔、あぜ道があってこんな暮らしをしていたんだよ”と、当時小原田に暮らしていた人々が、新しく暮らす子どもたちに伝えていく。そんな風に世代をまたぎ、人と人、人とまちがつながり、暖かさや愛着を育む「小原田の里」の豊かな暮らしを、これからもトラスホームとブルースタジオはつくり上げていきます。