vol.44 ブルースタジオの近未来、を編む <公の施設の「再生」編>
「公営住宅」「教育施設」「廃校活用」などなど。ブルースタジオでは、これまで数々の「公の施設」にまつわるプロジェクトに携わってきました。
公共空間活用のコンサルティングに特化した事業部「bpm」が連載を行っているnoteマガジン『公共事変』でも折に触れていますが、本来市民のための開かれた場であるはずの「公の施設」があらゆる環境や境遇によって“誰からも使われない場になってしまう”という状況は日本全国各地で起きています。
「公の施設」の再生は、現代日本が抱える社会課題のひとつです。
そんな中、現在ブルースタジオでは「公の施設」に新たな命を吹き込むプロジェクトが2つ進行しています。前号に引き続き、現段階でご紹介できるのはその片鱗ではありますが、完成までのプロセスをご一緒に共有できればと思います。
CASE3 旧池尻中学校跡地活用プロジェクト
IID世田谷ものづくり学校から、
働きながら暮らす“世田谷ビレッジ”へ
「IID世田谷ものづくり学校」
ご存知の方も多いことと思います。廃校となった旧池尻中学校舎を、工房やオフィス、ショップなど“ものづくり”をテーマとした複合施設として再生。2004年の開設以降、世田谷区の新たなカルチャーの拠点として、またその発信地として活動してきましたが、2022年5月31日に惜しまれつつも閉校しました。
そんな「IID世田谷ものづくり学校」の跡地をこれからの時代の「産業活性化拠点」とするべく、世田谷区が<運営事業者選定に係るプロポーザル>を実施。ついては、ブルースタジオが「設計監理」の役割でチームに参画したコンソーシアム(共同体)が事業者として選定されました。
「世田谷village」というコンセプトの通り、“産業創出”という側面だけではなく、飲食店や書店、広場など、食・住・遊がそろう、働きながら暮らす「村」のような場所を目指しています。
校舎の1F部分は、ミニ商店街のようにして平日も朝から晩までお店がやっているような「地域に開かれた場所」を計画しています。
コンソーシアムは、BONUS TRACKを運営する散歩社を中心とした計6社によって結成されています。各方面のプロフェッショナルによる多面的なコンテンツが同居する複合施設であり、「IID世田谷ものづくり学校」の意志を受け継ぐ、“新たなクラフトマンシップ”を体現する場所を目指して計画を進めてまいります。
CASE4 南の関うから館 改修プロジェクト
町民に愛された「温浴施設」から、
“あそび”を軸とした、本のある「多世代交流拠点」へ
熊本県・南関町にある「南の関うから館」は、1998年に町営の温浴施設としてオープン。長年町民に愛されてきましたが、2019年に温浴施設としての役目を終え、以降は会議室や調理実習室として活用されています。。
2022年に町が公表した「南関町地域未来構想」に基づき、「うから館」を町の多世代交流拠点とするべく、南関町は<基本計画策定のためのプロポーザル>を実施。ブルースタジオは、都市計画コンサルタントである市浦ハウジング&プランニングと協働する形でプロポーザルに参加、そして採択されました。
Newうから館のコンセプトは、
『郷ごころ』をともに育む、“あそび”を軸とした多世代交流拠点
ここでいう“あそび”とは、誰もが自由に解釈して参加できる「余白」のこと。そして「自分ごと」としてこの場所を使いこなして、楽しむことができる、そんな施設を目指したいと考えています。
また、図書館機能は“学び”の場としてのみならず、飲食もおしゃべりも可能な楽しく本と出会える場所として、計画しています。
めざせ、「好」共施設
「公の施設」の再生において大事なことは、すでにその場所にはこれまで培ってきた地域住人の愛着やストーリーがある、ということ。
その文脈を断ち切って刷新するのではなく、地域との深い関係性を受け継ぐ空間をつくりたいと考えています。
誰にも使われない「公」共施設から、誰もが居場所と思える、愛ある「好」共施設を目指して。
vol.43とvol.44を通して、ブルースタジオが現在進行形で手がけるプロジェクトをご紹介してきました。
我々が今考えていること、そして未来へ向けて歩んでいること、その一端を少しでも感じていただけたら嬉しいです。
これらのプロジェクトはまだまだ始まったばかり。続報があり次第、お届けしたいと思います。
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