明と無明の狭間に散歩す #前
花を見に行こうと夜出かけ、白昼夢のような光景に目眩を起こし、残った記録も傾いていた。
花見に向いた空ではないが、他に頃合いもないため夜出かけた。月もなく鉛白のような空模様、見知った道のはずなのに現実味がない。道順は分かる、でもここは本当にこの道だろうか。
何度も歩行者とすれ違う。私と同じ気をおこして歩いてきたのだろう。それなのに、彼らに顔はあっただろうか?
門は開いている街灯は点っている。前に進んで問題ない。
昨年とは違う機種変更したスマートフォンは夜でも輪郭が鮮明に撮れる。ワイドモードにすれば広さを捉えることもできる。それなのに撮った写真は水平が失われている。いや、私は平らな道をあるいていたのか?
何の気配も無い寺院。人の気配も死の気配も。
花の写真は撮った。しかし白けた夜空では大して見映えのするものも撮れず、胡粉を溶かした空間の印象ばかりで、何を踏んで歩いていたのか記憶に無い。
家には無事に帰れた。
今日の英語:White lead
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?