ネコーヒー:ストレート #4杯目
人気の無い工業地帯を自転車で走って気付いたのは野良猫の多さだ。いや、厳密には「野良」ではないだろう。私の視野で捉えた猫は、どれも健康的でふてぶてしい。おそらくあの地域で働く人達が世話をしている地域猫なのだろう。
日向で気だるげに丸くなっていた彼らは肉付きも毛並みも良く、「野良」という言葉が持つ悲壮感からは程遠い。直線で区切られ排ガスで煤けた植栽ぐらいしかないあそこでは、気ままな猫は愛される存在なのだろう。
もちろん、車両通行量の多い屋外が猫にとって望ましい環境ではないことは承知している。しかしここは人間が平らに均した人工の地面、猫が破壊するような自然は存在しない。それに、一切の野良猫を許さない世界というのは、それはそれで不健康なのではないか。
直線のコンクリートとアスファルト、亀裂から生えた雑草は繁るがまま。そんな立方体の隙間でも猫は満足そうに生きている。そこで猫が愛されているということは、そこになけなしの「人間らしさ」があるということなのかもしれない。
飼い慣らせない最後の獣。彼らはフェンスの向こうからいつも人間を値踏みしている。
今日の英語:Stray cat