『秋の四辺形』浜田真理子/檜山学/橋本歩/Marino 晴れたら空に豆まいて2023.10.26.
ピアノ、アコーディオン、チェロ、そしてサックス。この編成で浜田真理子を聴けると知った日から楽しみにしていた。真理子さんはそれぞれのミュージシャンとの共演経験があるにしても、檜山さんと橋本さんは初顔合わせという急増のユニット。さらにピアノ、アコーディオン、チェロ、サックスの独特な編成である。はたして…。
新曲を含むオリジナル曲をたっぷりと、しかも想像していた以上に4つの生楽器の調和が素晴らしく、彼女の曲に合っていた。よく言われがちな ”楽器が曲や歌に寄り添う” ではなく、4人それぞれ主張する音が結果的にひとつになったような印象。ライヴ後の橋本さんのポストを読むと、その理由がわかるような気がする。演奏していた本人がこうなのだから、聴くお客さんも心地よくなるのは必然。
心地よいライヴになったのは、各楽器の音が分離よくハッキリ聴こえ、演奏が始まって4つの楽器がひとつになっていくのがその場でリアルにわかる出音の素晴らしさもあったと思う。開演前にお見かけした久保田麻琴さんが音響を担当されたのかもしれない。
浜田真理子のソロ弾き語りで始まり、曲が進むにつれて一人ずつ加わって、第一部の最後の曲で全員が揃う構成も見事。音と共に、ステージ上に完成した四辺形は視覚的にもかっこよかった。かっこいい音を出し、かっこよく見せるというライヴの絶対条件を満たす4人をユニットではなくバンドと呼びたい。このメンバーでツアーをしたら…を考えると、ツアー最終日の固まった音を想像するだけで感動してしまう。
珍しくダブル・アンコールまであった中で、まず挙げたいのが檜山学のとのセッション「爪紅のワルツ」。イントロからアコーディオンをバックに歌われたレアなアレンジは、曲本来が持つ、そして浜田真理子の音楽にも欠かせない恐ろしさと美しさを余すことなく伝えていてやばかった。この二人に橋本歩が加わった「黒ネコのタンゴ」も、よく知られている皆川おさむの声やイメージがわくことなく、あくまでもひとつの曲として演奏され、聴かされる。名曲が名曲として提示されるのだから素晴らしい。
おおたか静流の作詞、梅津和時が作曲の「Awake」のカヴァーも沁みた。”おおたかさんのトリビュート・コンサート出演者でCDを交換しあい、梅津さんからのCDに収録されていた” とのMCがあったので、この場にいない人も感じながら聴くことになる。ライヴを通し、ここだけは良い意味で異質な空気が流れていた。
ライヴを締めくくったのは「胸の小箱」。今日を過去にしたくないと思わせてくれた4人との時間の余韻がいつまでも続いた。