『中島みゆき展 「時代」2024めぐるめぐるよ時代は巡る』角川武蔵野ミュージアム
中島みゆきを体験する展覧会。こう銘打たれた企画展に足を運んだ。角川武蔵野ミュージアムはいちど訪れてみたかった場所だし、コンサートツアー『歌会 VOL.1』とも平行して開催されることも加わり、楽しみにしていた展覧会だった。当日は快晴。ミュージアムがある、ところざわサクラタウンを含めて堪能できた。
事前のインフォメーションから、彼女の作品が展示され、それを鑑賞する展覧会でないことは理解できていた。7つのチャプターに分けられた展示内容からもそれは明白。" 自分の中の中島みゆきを感じる展覧会 " のスタンスで臨んだ。
CHAPTER1 今も進化を続ける中島みゆきストリート
デビューから最新作『世界が違って見える日』に至るまでの年表を見ながら自分がいつどこで中島みゆきに出会ったか…という個人的接点を知るというコンセプトのようだが、何よりも彼女の長いキャリアと発表された作品を確認できるので、その圧倒的な凄さから自分との接点などどうでもよくなる。
CHAPTER2 MY FAVORITE SONG
中島みゆきRESPECT LIVE『歌縁』出演者名のパネルを裏返すと歌った楽曲が紹介されており、どの歌手がどの曲を歌ったかをパネルクイズ形式で楽しめると言ったコンセプト。このライヴは未体験なので振り返って楽しむことはできなかったが、カヴァーした曲を知ることはもちろん、カヴァーされる曲が何なのか…の視点で見るのも興味深かった。
CHAPTER3 レコード万歳
アナログ・レコードで聴きたい曲をリクエストでき、実際にそれがかかり、かつ、会場のBGMになるというのは、思っていた以上に効いていた。アナログになっていないアルバム収録曲が聴けないので自然と80年代までの曲に限られてしまうが、それはデメリットになっていなかった。
ちなみに僕がスピーカーの前にいたときにかかったのは「HALF」「歌姫」「鳥になって」「世情」(順不同)など。他の曲もバラードが多かったのがこの日の傾向だった。それにしても、黙ったまま多くの人がスピーカーとジャケットを見つめて曲を聴いているだけの空間の心地よさは何なのだろう。互いに話をすることもないのに同じ空間を共有している感が半端ではなかった。思いや想いは目に見えなくても心で感じることができるのだ…とあらためて思った。
CHAPTER4 コラボレーション(映画・ドラマ・CM)
テレビCMの映像は懐かしく楽しめた。最近ではBOSSの宇宙大統領役が印象的。昔ではアスタリフトのCMを久しぶりに見ることができて嬉しかった。
CHAPTER5 夜会 言葉の実験劇場
展示されていた模型は、これまでも何らかの機会に公開されていたので、コアなファンには新鮮さには欠けただろう。たとえば台本、プロットのメモやノートなど、資料的な展示が可能だったのではないかと思うので、もう少し考えて欲しかった。
CHAPTER6 拝啓みゆき様 あなたからみゆきへ
訪れた人がメッセージを記入して進化樹を完成させる…というオノ・ヨーコ的なパートだった。
CHAPTER7 言葉の森
歌詞が舞っているかのように押し寄せる珠玉の言霊たち…のコンセプトはポジティヴなボルタンスキー的空間だった。何の曲のどこの歌詞を選ぶのかは人それぞれなので、こうした企画は中島みゆき本人が選んだということでもない限りファンとしては共感できないものになっていることが多いのだけれど、偶然にも僕が選ぶなら…という3曲の言葉(歌詞)が展示されていた。
中島みゆきを体験するというよりは、やはり自分の中の中島みゆきを見つめ直す展覧会だった。大阪でも開催が決定したが、可能な限り全国を巡回すればいいのになと思う。