南青山MANDALA 30thAnniversary LIVE【Duet】2024 仲井戸"CHABO"麗市×新谷祥子 2024.03.09.
2020年以降、3度の配信ライヴがあったが、生で二人の共演を観るのは2019年のMANDALA25周年以来。いやぁ長かった。
まずは新谷祥子。早朝に鳴く実際の鳥の声とマリンバ即興演奏を録音したという「小鳥ジャズ」とタイトルした曲で登場。そして太鼓だけをバックにMANDALAの30周年をお祝いする粋なオープニング。マリンバだけでなく、打楽器奏者としての魅力もある、実に新谷さんらしい幕開けだった。その後は立て続けに新曲を披露していくのも、いつものスタイルである。これまでもいい曲を作り発表してきているのに、ライヴは必ず新曲で構成する意思にあらためて感動する。
前半で披露された「はじまりの鐘」。この日と同じMANDALAでのチャボとの共演も印象的だった「鐘は鳴る」という名曲があるが、その " 鐘 " に続く曲をかきたかったと話していた。実際に新曲を聴いて感じることに加え、こうした背景が語られると、一気に曲はカラフルになる。これは文字通りの目に見える色ではなく、心で思う無限大の色だ。
共演ではお馴染みであるチャボのカヴァー。今回は麗蘭の「ミッドナイト ブギ」を取りあげていた。オリジナルはパーカッシヴ的でもあるので彼女にはハマっていた。途中で「ラッパと娘」のフレーズを盛り込むなど、チャボの曲を余裕を持ってカヴァーするようになったのが素晴らしい。終盤でリフレインされるビートルズのアルバム・タイトル部分を、彼女は " 真夜中のMANDALAで Come Together " と結んだ。久しぶりの共演ライヴでこう言われたら気分があがる。最高だった。
休憩を挟んでチャボのソロ・パート。いつも通りで特筆すべきことはなかったが、「DREAMS TO REMEMBER」のように過去の新谷祥子が取りあげたカヴァーに呼応した選曲は印象的だった。新谷さんのおかげで自分の曲を思い出すならば、あれもこれもと新谷さんにカヴァーして欲しい曲は多い。
チャボのパートでも二人のセッションがあるのだが(この日の曲は「Good Morning」「Distance」「幻想の旅人の唄」)、新谷さんが出てきただけでステージはもちろん音も華やぐ。思えば、2005年の共演はアタマから最後まで通して二人の演奏だった。もうあんなライヴは観られないのだろうか? セッションを観れば、誰もが僕と同じ思いを持つと思うのだけれど。
そんなお待ちかねのセッション・パートは、この日も期待を裏切ることのない素晴らしいものだった。お互いの曲を交互に演奏するのだが、以前なら新谷祥子ナンバーに感じた " チャボさんに参加してもらう " 的な、何となく遠慮がちな雰囲気は皆無である。" チャボさんのギターが加わってかっこよくなる " と言っていたけれど、この日の新谷祥子には、そのチャボのギターを飲み込んで曲の一部に変えるほどの堂々とした自信と吸引力があった。
各々のソロパートを前説に感じてしまうような終盤のセッションだったが、やはりこれを聴かないわけにはいかない。というか、これを聴きに来ていると言っても過言ではない「BLUE MOON」だ。チャボから間奏を引き継ぎ、飛び跳ねながらマリンバを叩く新谷祥子。しなやかさと力強さに美しさが演奏する喜びに乗って展開する様はいつ体験しても感動的である。
二人の共演は来年で20年。あっという間のような気がするし、とてつもなく長い時間でもある。個人的にも二人を見続けてきたなりの思いや想いがある。何だか二人の共演との出会い…原点を振り返りたくなったので、記念に2005年9月、ティアラこうとうで観たライヴの感想を再掲する。それにしても20年は凄い。チャボ、新谷さん、ありがとう。
仲井戸CHABO麗市[THE Duet] 2005.9.7 ティアラこうとう
まずは驚いた。つい二日前に「ストーンズのOUT OF TIMEを演ってほしい」と書いたが、本当に演ってくれたのである。しかも、チャボのあの独特な日本語の歌詞で。「ブライアン・ジョーンズが弾いた楽器、マリンバを聴いたのがこの曲、OUT OF TIME」と歌ってくれた。これだけでチケット代の価値があった。この1曲は、心の底から嬉しかった。
1回目のチェロと2回目のペダル・スティール・ギターとのライヴは事前に何となく想像できたが、今回のマリンバは、どんな感じになるのか、なかなかイメージが沸かなかった。会場に入り、まずステージを見て驚く。ほとんどステージ上をマリンバが専有している。こんなに大きいとは…。
新谷祥子さんというミュージシャン。パーカッショニストとして、主にマリンバ演奏において活動云々という方だ。よく見ると、マリンバの左右にいろいろな楽器がセッティングされている。もう、あれこれ想像してもしょうがない。これはアタマの中を真っ白にしてライヴに臨もうと思った。
オープニング。演奏ではなく、いきなりチャボがしゃべりだす。これは意外だったが、入りとしては良かったと思う。リラックスできた。簡単に新谷さんが紹介されて登場。最初から二人でライヴがスタートした。
印象に残った曲をピックアップしてみる。
1曲目は何とRCサクセション・ナンバー「うぐいす」だった。そして「ホームタウン」と続く。90年に発表されたこの冒頭の2曲の流れはとても素敵だった。「ホームタウン」は新たな解釈で演奏され、印象がかなり変っていた。
前述したロ-リング・ストーンズの「OUT OF TIME」。ブライアン・ジョーンズが叩いたあのフレーズ。チャボは高校当時、ギターで奏でていたようだが「本物のマリンバで演れた!」と嬉しそうだった。この曲のリハは本当に楽しかっただろうなぁ。目に浮かぶ。
久々に演ってくれた「L・O・V・E」と「特別な夏」。こういった曲にはマリンバの音色がとても合う。ちなみに、「L・O・V・E」は新谷さんのお子さん(ジュリアスという名前で10月9日生まれ!)に捧げていた。「特別な夏」は前回の夏をイメージしたライヴで聴きたかった曲なので、嬉しかった。
恒例のポエトリー・リーディング。今回も「だんだんわかった」からのチョイス、歌詞、新たに作ったもの、の三つのパターンだった。白眉だったのは「STONE」。これを朗読するときのチャボはいつも独特なのだが、激しいパーカッションだけでバックをつけた新谷さんが最高だった。ブライアン・ジョーンズに聴かせたい。
それにしても新谷さんは素晴らしかった。巧みにマリンバを叩き、パーカッションを操る。優しさと強さ、その表現力、数曲で披露したヴォイス…。完全に目と耳を奪われる。演奏中の彼女はワイルドであるが、美しい。視覚的にもとても素敵なミュージシャンである。カッコよかった。しかも、曲が終わるたびに見せてくれた笑顔がとてもチャーミングで、そのギャップがまた良かった。
ステージでは「静の仲井戸麗市、動の新谷祥子」であり、曲によってはチャボ、完全に食われていたよ。
僕は、今回のDuetがいちばん良かったと思う。音楽的にも楽器的にも、そしてミュージシャン同士の相性としても、おそらくベスト・マッチだったのだろう。チャボも新谷さんも、お互いが主張するところはもちろんあるのだが、それのバランスが良かった。チャボが押すと新谷さんが引き、新谷さんが走るとチャボが止まるのである。しかも、それが自然な感じであった。
これでTHE Duetは一段落だが、とても良い企画だった。是非、続けて欲しい。僕は3回とも初日に行った。今日チャボは「初日は嫌い」と言っていたが、僕は好きである。前日のやり直しと言うことが無いので、まさに一発勝負。緊張感があると思うからだ。例え出来がよくなかったとしても、それを込みで楽しんでいる。
10月には三人のミュージシャンとの共演が再び観られるぞ。楽しみだ。
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